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望むこと

その後、旦那様は口を開くことなく、また、私も特に話すこともなく。無言で朝食をとった。


 朝食をとったあとは、いつものように庭に出てバメオロスのためにイーディナ花を咲かせた。


 イーディナ花を食べ終わったバメオロスは、また、少し大きくなった。そのことを指摘すると、バメオロスは考え込んだ。

『これほど力を取り戻せば……』

「バメオロス? どうしたの?」


 バメオロスが黒い瞳で私を見つめる。私も首をかしげつつ、バメオロスを見つめ返した。


『……いや、なんでもない』

「そう?」

その間は明らかに何でもあったのだと思う。でも、バメオロスは、言葉にせず、私に、尋ねた。


『もし、私がこの姿以外の姿をとれるとしたら、どうする?』

「今の獣以外の姿ということ?」


 バメオロスは頷いた。

「そうね──、姿形がかわっても、あなたはバメオロスで、私のぐうたら生活仲間だから。どんな姿でも構わないわ。でも、遠くにはいってしまわないでね」


 ただ、バメオロスの姿がかわるってことは、神に近くなるってことなのじゃないのかな。神の一部が神獣として形をもったバメオロス。バメオロスが、破壊神に吸収されるようなことは、嫌だ。


『約束する。遠くにはいかない』


 良かった。その言葉にほっとする。



『ただ、もしかしたら……、いや、きっと今のままでは、いられない。私は、多くを望んでしまう』

 そういってバメオロスは困ったような顔をした。


「多くを望むことは悪いことなの? 私は、そうは思わないわ」

 私は、望むまえに諦めてしまったけれど。望むことは悪いことだとは思わない。

『……ありがとう、アデライン』

 バメオロスはようやく、安堵したような顔をした。だから、私も微笑み返して、バメオロスの頭を撫でた。






 そして、夜。旦那様が、いつものように寝室にやって来た。


 けれど、いつもとどこか様子が違う。服も式典のときにきるような正装だった。

「陛下、どうされました……え?」

 旦那様が私の前に跪く。そして、紫の薔薇21本で作られた花束を差し出した。

「……初夜の言葉は、本当にすまなかった。撤回させてくれ。君を尊重し、守ることを約束する。だから、私と家族になってほしい」


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