挑戦
「んー、うぅ」
大きく伸びをする。よく寝た。今日は、私の方が起きるのが早かったらしく、私の隣でバメオロスがもぞもぞと動いている。
「バメオロス、もう、朝よ」
頭を撫でると、小さな声でミャアと鳴いて瞳をぱちぱちとさせた。
「あら、バメオロス、また大きくなったのね」
昨日、イーディナ花を食べたときも大きくなったと思ったけれど。今朝は、小さめの成獣といってもいいくらいの大きさだ。
『ああ。大きくなった。だが、まだ、成長途中だ』
「そうなのね」
このままバメオロスがどんどん大きくなって、最終的にライオンみたいな大きさになったらどうしよう。流石にライオンと一緒に眠るには、このベッドは小さい。
そんなことを考えていると、今日もバメオロスは衝立の向こうに隠れた。
その律儀さに微笑んで、侍女を呼び、支度を整える。
今日も1日、頑張ろう。
愛が見たい。
──私には、与えられなかったものだから。
恋が見たい。
──私には、無縁のものだから。
けれど、それらを間近で見ることができるチャンスがきた。
朝食の席で、旦那様を観察する。そのアイスブルーの瞳を熱に浮かせて、形のいい唇で、旦那様は恋しい相手にどんな言葉を囁くのだろう。
やっぱり、愛してる、かしら?
それとも──。
「私の顔に何かついているだろうか?」
旦那様が首をかしげる。
「いえ。少々考え事をしておりました」
「考え事?」
旦那様が興味深そうに瞳を瞬かせる。
「はい」
「どんなことを、考えていたんだ?」
「恋しい相手に、むける言葉を」
「!? き、君は、恋をしているのか!? 私は、浮気は許さないぞ」
ひゅー。旦那様ってば、近くにいい感じの相手(?)がいらっしゃるようなのに。そんな純情ぶらなくても。
それに、貴族の恋愛は、結婚してからが本番だ。それを知らない旦那様ではないと思うけれど。
「いえ、私ではなく。陛下が、どんなお言葉をむけるのかと、考えていました」
「……それは私に対する、挑戦か?」
「?」
挑戦? なんのことだろう。
首をかしげる私の疑問に答えることなく、旦那様は宣言した。
「いいだろう。今夜を楽しみにしているといい」




