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朝食

ぺろり、とバメオロスに頬をなめられ、目を覚ます。

「ん、んん……、ふわぁあ」

 おはよう、という代わりに目を閉じたまま、バメオロスを探して、その体を撫でる。


「ん!?」


 思ったよりもバメオロスの体が高い位置にあり、思わずがばりと飛び起きる。

『どうした?』

「バメオロス……、大きくなってない?」


 そう、バメオロスが成長しているのだ。子犬のような姿から、若干大きく。

『あなたのイーディナ花を昨日食べただろう? あれから、調子がいいんだ』

「そっか」


 調子がいいと大きくなるのか。神獣は不思議なことばかりだ。

『もしかしたら、……の……女神……力が……』

「バメオロス、どうしたの?」


 考え込んだバメオロスに首をかしげると、バメオロスは首をふった。

『いや、何でもない。それより、もうすぐ支度の時間だろう』


 そういって、バメオロスは、衝立の向こうに隠れる。バメオロスの性は男性に近いらしく、着替えるときはこうして、律儀に、見えないように配慮してくれるのだ。


 いや、別に神獣だし。私は全く気にしてないんだけど。


 まぁ、でも、見せつけられるほど、ナイスバディをしているわけではないので──ルナと顔は似ているけれど体つきは似なかった──有り難く侍女を呼んで着替えを手伝ってもらう。


 着替えて、軽く化粧を整えたら、準備ばっちりだ。


 王と王妃用の食事の間にバメオロスと向かう。といっても、旦那様をこの食事の間でみたことはないのだけれど。私の顔なんてみたくないぜ! ということだろう。……なんて、思っていたら。


「……陛下?」

 今日は旦那様がいらっしゃった。

「おはよう」

「おはよう、ございます」


 相変わらず、アイスブルーの瞳からは感情が読み取れない。でも、そうか。私に用はなくても、バメオロスには用がある。


「今日から私も君たちと食事をとることにした。私は君の夫だからな」

 別に反対するつもりはないのだけれど。旦那様はどこか言い訳するようにそういった。


「そうなのですね」

 と、私が頷くと、旦那様は苦虫を噛み潰したような顔をした。え? なんで。


「君は……、アデラインは、本当に私に興味がないんだな」

 ひゅー! なんだ、旦那様ってば名前知ってたのね。結婚式で署名したから、当たり前か。……じゃなくて。


 やっべー!!!


 興味がないことが、ばれちゃったよ。

 旦那様は一応、私たちのニート生活のスポンサー的存在。私とバメオロスを養ってもらわなければ困るのだ。食事は癒しの力でその辺の植物を成長させたらなんとかなるとはいえ、雨風は、癒しの力では防げない。


 なにより、私は特になにもしなくても決まった時間に人が作ったご飯が食べたい!


「……興味は、あります」


 旦那様にはないけれど。懐には興味がある。

 主に敗戦の賠償金があといくら残っていて、この生活水準をどのくらい維持させてもらえるのかについて。


「いや、無理をしなくていい。……私の態度が原因だからな。これから、興味をもってもらえるよう、努力する」


 そういって、黙々と旦那様は朝食をとり始めた。


 なんか、一人で朝食をとるより、気まずいわ。

 ちらり、とバメオロスのほうをみると、農薬を使ったイーディナ花は食べたくないのか、物欲しそうな瞳で私を見ている。


 うんうん、あとで、無農薬のやつを用意するからね。


 バメオロスの頭を撫でて、私も質素だけれど、美味しい食事に集中することにした。

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