002.温水洗浄便座付きトイレ
気楽な気持ちでお読みください。
一転生者につき、転生前と転生後の二話完結の短編集です。
「トイレが欲しい。日本の暖かくて、お尻シャワーで洗ってくれるやつ」
《はっ??あのもう一回、言ってもらっても宜しいですか?》
「だ、か、ら、トイレって言ってんでしょ、温水洗浄便座のトイレ。ついでに急速脱臭機能もつけといてよ。」
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私は、地球の異世界転生担当職員、一応、神だ。
人材をチープ転生特典で、転生させることが私の仕事だ。
今回の人材は37歳女性、職業はSE、○○連勤のデスマーチの後、横断歩道で歩きながら寝ていたところを暴走トラックに轢かれたらしい。
漂う社畜臭に共感を覚えつつも、これは仕事と割り切ってチープ転生特典を押し付ける。
チープパッケージ(記憶保持、異世界言語)を最初に案内しつつ、今回限りで鑑定と成長補正までつけますよと、いつもの基本パッケージ(記憶保持、異世界言語、鑑定《小》、成長補正《小》)をゴリ押そうとしてたところで、この会話に辿り着いた。
《んん、これから向かっていただく異世界にも公衆衛生の概念はございますし、勿論トイレもございます。下水道はまだ発展しておりませんが、スライムを活用することで・・・》
「はあ!?それってぼっとんのこと言ってるの!?ないわー。ぼっとんないわー。しかもスライムとか。え?スライムが排泄物食ってんの?スライム出てきたりしないの?」
《まあ、定期的にスライムをある程度焼却する必要がありますが、焼却作業には生活魔法の燃焼がお役立て・・・》
「いや、待って。それって焼却忘れたらスライム出てくるってこと!?排泄物まみれのネバネバがトイレから出てくるとか、余裕で死ねるわ!!」
《そうは言われましても異世界の皆さん日常的に対応されてますし、問題なく用は足していただけるかと思いますが?》
「イヤイヤイヤイヤ、わかってないわー神さん、ホントわかってないわー。トイレはね、ただ用を足す場所じゃないの。このプライバシーのない、社畜社会の中で、唯一残されたパーソナルスペース。仮眠を取るもよし、スマホいじるもよし、全ての人に与えられた最後の楽園なのよ。
それに、日本のトイレはすごいの。デリケートな私の為に音洩れ防止の音楽、暖かい便座、適温のシャワー。あの小さな個室の中に愛が溢れてるの。」
《(ちょっと圧が怖いんだが・・・)日本のトイレの素晴らしさは理解しました。でも物質は異世界に持っていけないんですよ。最近はウィルス感染リスク低減の為に、異世界転移だって禁止されてるんですから》
「じゃ、理想のトイレ作るスキルは?スキルならいんでしょ?」
《いや、そういうのはカスタマイズになりまして・・・(ラチがあかない。リスクは残るがそろそろ時間制限ブラフを使うか・・・)》
「トイレスキルないなら転生しない。無理矢理転生させたら、どんな手段使っても異世界滅ぼしてやる・・・」
《(顔が怖い・・・・・・あれは本気の表情だ。このまま行かせるとクライアントに迷惑がかかってしまう・・・だがこの人材で決めないともう納期に余裕はないし・・・)》
「何黙ってるの!くれるの?くれないの?どっち!!!!!」
《わ、わかりました。わかりました。特殊なご要望ですので、カスタマイズで用意します。少々お待ち下さい。》
「ここで試し打ちさせてもらうからね・・・」
《(完全に逃げ道を封じられたか・・・・・・もうやるしかない。)》
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恐いし、でも余計なスキル渡したくないし、整理しよう。
今回、トイレスキルに求められている要件は、
・快適な空間を提供できること
・消臭あるいは良い香りを提供できること
・排泄物を流して処理できること
・温水による洗浄が可能なこと
・快適な温度を提供できること
・内部の音の遮断あるいは打ち消しできること
・プライバシーを守ることができるきこと
・使用者が愛を感じられること
こんなところか。
割と魔法スキルの難易度高いな・・・・・・コントロールも魔力量も必要だ。まずはベースとして、
・魔法適正《特大》
・魔力量《大》
・魔力自動回復《大》
かな。
トイレは陶器だったな、
・土魔法《大》
土壁で四面囲っちゃうと快適とは程遠いな、、、消臭や香りも加味すると、
・樹魔法《大》
・風魔法《大》
排泄物流すのと、温度管理は、水と火だな。夏場は暑いし、氷魔法もか、
・水魔法《大》
・火魔法《大》
・氷魔法《大》
音の遮断とプライバシーは似てるな、、用を足すだけじゃないって言ってたし、トイレで時間忘れて過ごすこともあるよな。空間遮断と時間遅延か、
・時空間魔法《大》
愛、愛か、、、、、確か転移先には慈母神いたな、
・慈母神の加護
まとめると、
基本パッケージ
L 記憶保持、異世界言語、鑑定《小》、成長補正《小》
トイレ生成パッケージ(カスタマイズ機能)
L 魔法適正《特大》、魔力量《大》、魔力自動回復《大》
L 土魔法《大》、樹魔法《大》、風魔法《大》、水魔法《大》
L 火魔法《大》、氷魔法《大》、時空間魔法《大》
L 慈母神の加護
《(うわ、ひどいな・・・・・・転生者何人分だよこれ・・・ちらっ)》
(ギロリ)
《(駄目だ。今更無理って言えない。)お待たせしてすみません。準備できましたので、どうぞ、お試しください》
「私はトイレでできている・・・・・・トイレースオン!!!!!!!!」
《(うわあ、馬鹿やろ!!!!!!地雷詠唱すな!!!!!)》
「できた・・・・・・(パタン)」
トイレ入ってったな。このまま転生させよう―――
―――次話《異世界編》に続く。
次話で転生後の話を書きます。