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灯るは蒼

 俺の眼前に佇む、ドラゴン・ゾンビの動きは重い。

 まるで体が軋んでいるような……身体を動かさなくなって久しいのか?

 ゾンビともなれば、数年間動かなくても構わないのだろう。


「のろまだな。今のうちに仕留めといたほうがいいか?」


 そう提案するガナイア。

 確かに今なら動きが遅いし、一撃が決まるだろう。

 未知の相手を刺激しない方がいい気もするが……そこはガナイアの判断に任せるべきだろう。

 彼がこのパーティの中で最強のレベルを持つからだ。

 人類の最前線を行くこのパーティで最強ということは、人類で最強と言っても過言ではない。


「任せる。ガナイアなら、巨大なドラゴンもトカゲみたいなものだ。だろう?」


 ガナイアの声に答えたのは、パトルだった。

 ガナイアはその言葉に「言ってくれるねぇ」と笑う。


 そして彼は、手に持った剣を高く掲げた。

 あの構えは……最終魔法を使う気か。


 ガナイアの剣は次第に輝き始め、最終的にはこの部屋を照らしつくすほどの炎を纏う。

 太陽とも見紛うほどの巨大な炎剣は、その余波だけでも火傷しそうなほどに熱かった。


「燃え尽きろ! ファイナブレイザー!!」

 

 そして、その炎剣を、ドラゴン・ゾンビ相手に、一気に振り切る。

 膨大な量の炎がまるで弾丸のように、ドラゴン・ゾンビを貫いた。

 刹那、ドォンとドラゴンの体が大爆発を起こす。

 煙が薄暗い部屋を一瞬にして包み込み、俺達の視界を奪った。


「やったか!?」

 

 人類最強のガナイアの一撃、致命傷とはいかなくとも、有効打は与えられているはずだ。


 だが――。

 晴れた煙の奥にいたのは、先程と変わらないドラゴンの巨体。

 ガナイアの一撃がどれほどのダメージを与えたのか、見た目から推察することはできなかった。

 最初からボロボロのゾンビだからだ。


 そのドラゴン・ゾンビは焦点のあっていなかった目を、ぎょろりと俺達に向けた。

 瞳孔の開ききったその目を――。

 そして、吠える。

 生きているとは思えないほどの擦れた、それでいて内臓を揺さぶるような声で。


 俺はその姿に、思わず呟いた。


「効いてない、のか……?」


 そんなはずはない。

 どんな魔物だって、レベル差でねじ伏せる人類最強のパーティ。

 その中のさらに最強が放った、最強の必殺技だ。

 効かないはずがないんだ。

 きっとこの咆哮も、断末魔に過ぎない。


 そう思いたい俺を嗤うかのように、ドラゴン・ゾンビの体がぼうっと炎を灯す。

 今にも消えてしまいそうな蒼い炎を。

 頭に、腕に、穴だらけの翼に、ありとあらゆる箇所が、蒼色に染まる。

 ガナイアの一撃が燃え移ったのか?

 いや――。


 ドラゴンは吠える、この部屋が大きく軋むほどに。


 ――この炎は、奴の能力!?


「なんだ、こいつは!?」


「普通じゃない……」


 パトルとガナイアが、順々に声を上げる。

 クリナは、俺の腕をぎゅっと握りしめた。


 ドラゴンの声に呼応するように、今まで倒れたアンデットで散らかっていた部屋の隅が、蒼い炎を灯した。

 燃えているのは、アンデットの体。

 ぼう、ぼう、ぼうと部屋中のアンデットが炎を灯していく。


「囲まれたか……」


 俺達は背を合わせ、円陣の形をとる。

 気が付けば、無数のアンデットが俺達を取り囲んでいた。

 右腕のない、人型のアンデットが。

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