外れスキル・不死
「不死」それは誰もが憧れる、人の到達点。
死の克服とは即ち、終わりの克服を意味する。
故に誰もが不死に憧れた。
いや、死を恐れ、死から逃れようとした。
その不死は、魔王討伐を目指す最前線の冒険者たちにとって――外れスキルだった。
この世界の人間は、一人一つずつ、スキルを持って生まれてくる。
俺・ナズもそのうちの一人だった。
俺のスキルは「不死」。
その効果は、肉体さえ残っていれば、死んだ瞬間に蘇生するというもの。
死という最悪の結果を回避できるこのスキルは、一見強力なものだった。
死んでもいいということは、回復の必要もないということ。
死なないのをいいことに、相手が力尽きるまで根性で押し切るもよし、味方の盾になるのもよし。
まさに万能のスキルであった。
実際、俺はこのスキルを使い、パーティを魔王討伐の最前線まで引っ張ってきた。
俺の力がなければ、このパーティはここまでたどり着かなかっただろう。
だが――。
「ナズ、危ない!」
不意に、パーティーメンバーのクリナが、俺を両手で突き飛ばす。
そして、俺に背を向けて、手に持っていた巨大な盾を構えた。
直後、その盾が赤く輝く光線を受け止めた。
「クリナ!?」
戦闘中だったメンバーの意識が、一瞬こちらを向く。
尻餅をついた俺は、何もできず、その場で眺めているだけだった。
ジリジリと盾を焼く光線。
必死に力を込めたクリナの両足が、光線に押されて徐々に後退していく。
苦悶の息を漏らすクリナ。
「はああぁぁぁぁぁ……」
そして、敵の光線の出力が弱った瞬間――。
「たあああああああああ!!」
光線を、弾き返した。
先程の光線を撃ったのは、人の形をしたアンデット。
両目が淡く光っていることから、目が光線の発射口になっていたことが伺える。
「あいつか!」
光線が途切れた瞬間、4人のパーティメンバーの内一人が、すぐさま動き出した。
戦士のパトルだ。
彼は光線を撃ったアンデットに一瞬にして近寄ると、右手に持った剣で、奴を頭から真っ二つにした。
反撃をも許さない一撃の前に、アンデットは消滅した。
本来ならば、不死のスキルを持つ俺を、ここまでして守る必要はない。
だが、死体が残らないとなると話は別だ。
死体すら残さない上級魔物達の攻撃に晒されれば、俺のスキルなどないも同然。
故に、不死は「外れスキル」なのだ。