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#03

2話最後に投稿したのいつだか忘れたんですけど、昨日だったかな? 一昨日? 

まぁとにかくノストラダムスすら予言できなかった超がつく高速更新です、光にも勝る更新スピードです。(※当社比)

といってもまぁたまたま筆が乗ったってだけでして、はい。

だから4話はないです。これ最終回です、たぶん。

 どういう経緯で、自分がこうして自宅の部屋まで戻ってきたのか覚えていない。

 でも常に悪いのは誰だったのだろうかという問いが、重りのついた枷のように付き纏っていた。

 運転手。

 彼のハンドル捌きで、状況は変わったかもしれない。

 あいつ。

 もっとよく周りを見ていれば、今頃軽口の一つでも叩いていたかもしれない。

 交差点。

 こんな場所に交差点などなければ、そもそも事故など起こりえなかった。

 見ていた人々。

 危ないと一つ声を出してくれていたならば、彼女の歩みは止まっていたかも知れない。

 僕。

 先を行ってしまうあの時、彼女の手を引いていれば……。

 そもそも提案などしなければ……。

 あの道を通らなければ……。

 ――――。

 どれだけ言った所で、こんなものはどうしようもない言いがかりだ。

 結局、一番悪い奴なんてのは何処にもいないのだった。

 どうしようもなかったことなのだ。

 誰かが事故を予期できたわけでもない。

 誰かが事故を未然に防げたわけでもない。

 不可能という文字で、その全てに説明がつく。

 実際、僕は何も出来なかったではないか。

 赤く染まっていく雪の轍と動かなくなった彼女を見つめる以外に、なにか選択肢が存在したのか。

 泣いていた、叫んでいた、憤っていた。

 それ以外に、なにか選択肢があったか?

 仮にその正しい選択肢があったとして、正解を選べなかったことが僕の罪なのか?

 分からない。

 事故の起こったあの瞬間から、記憶全てが灰色の靄に侵されている。

 あれからどのくらい経ったのか、それすら分からない。

 ……でも、唯一つわかっていること。

 それはあの瞬間、彼女が命を散らしてしまったということだ。

 止められないことだった。

 運命だった。

 そう。

 僕は、理解している……。

 カーテンを締め切った部屋に、光はない。

 闇の中で布団に包まっている、だってそうでもしていなければあまりに外は寒い。

 彼女の居ない現実。

 自分を責めるものがいるのではないか、という恐怖。

 そして何よりも明るい未来を歩むはずだった彼女を奪った、世界への憎悪。

 身が凍えてしまいそうだった。

 運が悪かった、避けられないことだった。

 分かっている、そんなことは理解っている。

「――それがなんだってんだよ」

 何を意識したわけでもなく、口が動いた。

 くぐもって引っかかって、とても自分のものとは思えない。

 でもそれは、確かに自分の内側からでてきた言葉だった。

「嘘をつくなよ……。

 僕――お前は、何も分かってないだろ。

 くっ……そ!

 ふざけるなよ!

 一体、何をわかったつもりでいるんだよお前っ!」

 …………ダメだ。

 己さえ殺してしまいそうになるこの煮えたぎった感情(じぶん)は、どうしても隠しきれない。

 現状を理解した所で、感情まで理解することは無い。


 ――誰かのせいにしたい。


 この憤りや悲しみを誰かのせいにして、貶して罵倒して。

 お前のせいだぞって指を指して。

 そしてそいつを――無惨に無様に、バラバラに殺してやりたい。

 生きていた痕跡すらなくなってしまうほどに……。

 でも、そんな誰かは何処にもいない。

 たとえそんな誰かに八つ当たりしたとして、彼女が還ってくるわけでもない。

 どんな形でもいいから、生きて欲しかった。

 腕が無くなったのなら僕が腕になった、足が無くなってしまったのなら僕が何処へでも運んでやった。

「……でも命だけは! 

 命だけはどうやっても、どうしたって…………」


 ――代わってやれないんだよ、柚葉。


 …………。

 握りしめて皺の寄ったシーツから、顔を上げた。

 最悪な気分だ、吐き気すらある。

 よろよろと立ち上がって、散乱した本やひっくり返したテーブルに躓きそうになりながらも窓のカーテンを開く。

 既に街は夜闇が包み込んでいる。

 もはや誰も帰ってくることの無い、あいつの部屋に視線を投げる。

 この時間は彼女が勉強していた時間だった。

 カーテンを閉めようとした時、いつも勉強机の照明が光っていたから。

 たまに目が合うと、いたづらっぽい笑みを浮かべて手を振っていたのを覚えている。

 それがどうも照れくさくて、僕はいつもすぐに部屋の奥に引っ込んでいた。

 でも、今は――。

「……。」

 唇を噛んだ。

 混じり合った鉄の味が、口の中に広がる。

 こんな想いは、もう二度と御免だ。

 人を失う、それは生きていれば一度は経験することだろう。

 覚悟してなかったわけじゃない。

 誰だっていつか経験して、そして大人になっていく。

 でも。

 それが現実になった――なってしまった今、僕はどうしてもこの結末が仕方ない事だったとは割り切れない。

 何を思っても、やっぱり僕には受け入れることが出来ない。

『死』という概念、そのものが許せない。


 ――だから。


「未来を――柚葉を奪った『死神』

 お前を、僕は絶対に許さない。

 僕の残された一生をもって、最期の時までお前に抗い続けてやる……!」


 伝う涙を噛み締めて、二度と同じことは繰り返さない。

 何も出来なかったなんて言わないと、己に誓った。


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