表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/10

#02

奇跡的にやる気があったのと、読んでくれているという人がいたので本人すら驚くまさかの更新です。

これには全米がマカロンを手にお祭り騒ぎですね。

とりあえず3話はないんじゃないですかねたぶん。

んー……。

僕がこのあとがんばれば、宝くじが当たるくらいの確率で書くかもしれないですね。

 ――コンビニでアイスを買わされるのは良い。

 買ってやると提案したのは僕だ。

 すくなくとも高いアイスを買わされる分には構わない。

 それもこれも彼女に対して少なからず好意を抱いていたからだと思うし、多分彼女が何かを幸せそうに食べるその姿が僕は見たかったのかもしれない。

 輪郭がはっきりとしない、淡い感情であることは確かだった。

 ……うん。

 とはいえ――そうはいってもだよ?

「だからって、ジュースまで買ってやるなんていった覚えはないぞ僕」

 がさがさと風に音を立てるビニール袋と、ほくほく顔の彼女。

 袋の中にはいわゆる高級アイスと冷えたジュースが入っていた。

「しかたあるまいて樹殿。

 アイスを取っていざレジ!と並ぼうとした時。

 拙者、凄まじい気迫と存在感を感じたでござるよ。

 そう、いかにもこのサイダーが待ち構えていたのでござる。

 ……はっ! 

 もしやこれが噂に聞く、不可抗力という奴でござるか!

 くそう、なんと憎い罠でござろう。

 憎い……憎いぞこのサイダーめ!」

「柚葉殿。

 それは不可抗力じゃないでござる、貴女が誘惑に負けただけでござる」

 口調はさておき。

 おそらくレジに行くまで、僕に見えないようにしていたんだろう。

 レジで財布を出して

「あれ? 妙に値段が高いな?」

 って思ったらレジにはアイスと、まるで最初からアイスと一緒にいましたよとばかりに炭酸飲料が置かれていた。

 さらにこの状況に拍車をかけたのは店員である。

 柄の悪い店員……ならよかった。

 それはもうニコニコしていた。

 もうその笑顔を見ただけで、この人天使なんじゃないかってって思うくらいニッコニコしていた。

 空っぽの傀儡人形が作る「社会」に差し込んだ一筋の希望光といわんばかりに、まぶしい笑顔だった。

 断れない……あんな善良の二文字を具現化したような人間を前にして、「これ、いらないのでしまっておいてください」なんて言えない……。

 なくなく財布から550円を支払った。

「550円……されど550円。

 味わって食べろよ、この外道め」

「外道とは心外だなぁ。

 私ほど慈愛に満ちた人間なんてそうはいないと思うよ?」

「慈愛に満ちてるなら僕に肉まんの一つでもおごってみせろよ」

「いいよ? 肉まん買ったげる」

「まった。

 そのうちの3分の1だけあげる、とかいうんだろ?」

「残念10分の1だ」

「残骸じゃねぇか」

 柚葉はそこはかとなく……いやかなりケチだった。

「肉まんは買ったげるけど、それを樹にあげるかというとまた別問題。

 とっても難しい問題なわけ、おーけー?」

「全然おーけーじゃないな、特にお前の頭の方が」

 すると柚葉は少しだけ、むっとしたように頬を膨らませた。

「あーあーそーいうこという?

 もーわかったよおこったよ!

 あとでちゃーんとおごって、その減らない口を封じてやる」

「いったな? 僕はこういう約束はずっと覚えてるタイプだからな、あとでしらを切るなよ?」

「わかってるし。

 私だってした約束はずっーーーと覚えてるし」

「おぉ……、そうかよ」

 妙に食いついてくる様に少し気圧された。

 同時に気づく。

 少し彼女の頬が紅潮していた気がした。

 そして、背を向けて少し先を行ったところだ。

 僕は瞳を瞬いた。


 ――跳ねとばされていった。


 あまりに唐突な出来事。

 それはすぐ目の前でおこったことに違いない。

 けれど遠い、地平の果てで起こったことのようにも思えた。

 あれは青に変わった横断歩道で……。

 あれは交差点を曲がってきた車で……。

 気づいた時にはもう遅くて……。

 …………。

 錯乱した意識、混濁した視界の中で僕が得られた記憶の欠片は、たったこれっぽっちだった。

 ガラガラと音がする。

 幼少時代の、積み上げた積み木を崩すあの瞬間によく似ていると思った。

 少し……ほんの少しだけ力を加えると崩れ去ってしまう日常。

 予期しないそのタイミング……そして。

 ……おかしい。

 僕が買ってやったのはチョコ味のアイスと無色透明なサイダー。

 そんなのたとえ容器が壊れたとしてもチョコの溶けた透明な液体が出来上がるはずだろう。

 それなのに、一体どうして目の前は赤く染まっているんだ?

 お前……どうしてそんなところで倒れているんだ?

 理解出来ない……日常というレールの上を歩いてきた。

 ただそれだけなのになぜ?

 誰か教えてくれ。

 こんな情景は誰も望んでいない。

 誰も欲していない。

 悪趣味だ。

 嫌だ。

 あまりにも不快だ。

 虫唾が走る。

 置いていくなよ。

 僕が。

 あいつが。

 何かしたか。

 何か欲したか。

 欲したとすれば、それはあまりにも身近にあるはずの平穏と安寧そのはず。

 権利は持っていたはずだ。

 それなのに。

 待ってくれ。

 いかないで。

 なぜ。

 頼むよ。

 どうして。

 なんで!

 …………。

 もう、誰でもいい。

 誰でも良いから頼むよ。


 正しい答えを……教えてくれ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ