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那朗高校特殊放送部!

那朗高校特殊放送部~部室大掃除編~

作者: 那朗高校特殊放送部

今回の登場人物:城嶋蓮、倉井雪絵、夏輝海、与那嶺瀬奈、三条翡翠、霜月詩酉、白金春人、紅葉黑音

筆者:城嶋蓮


「これ誰の!?」

「あ、これここにあったんだ…」

「これは…服…なのか…?」


そこかしこで色んな声が響き渡る。


今日は部室の大掃除の日。

去年はこんなことしてなかった気がするけど、今年は特別だった。



------------------------------


数日前



「大掃除をするわよ!」


皆の前で倉井先輩が腕を組ながら高々と言い放つ。

それはまるで…


まるで…


とにかく、有無を言わせぬ迫力があった。


「別に良いですけど、何でいきなり?」


それに対して無謀にも質問を投げ掛ける白金に、

先輩は表情を崩さず答えた。


「私達3年は来年で卒業するでしょう?」

「確かに」

「基本紅葉で成り立ってるここが、紅葉が居なくなったら多分上手く動かないと思うのよ」

「……」


実際管理運営、ほぼすべて紅葉部長がやって来た特殊放送部なので、部長が卒業するダメージは大きい。

副部長も倉井先輩だから一緒に卒業するし。


「だから、拠点を移すことにしたわ!校外にね」

「「「え、ええええ!?」」」


部室に驚きが響き渡る。


「卒業したとしても、活動は止めたくありませんからね」

「そういうことよ」


どうやらこの大掃除は倉井先輩と紅葉先輩の二人で画策されたもののようだ。

大掃除自体は割とありがちだと思っていたけど、どうやらそれ以上に大きいイベントなんだな。コレ。


「あたしはいいけどさ、その校外の拠点って何処なんだ?」


そんなイベントに、霜月先輩が疑問を投げ掛ける。

確かに校外の拠点って何処だ?

誰かの家に集まるなんてのも8人でやったら迷惑だし。


もしや、部員の誰かがそういうことを出来る位大金持ちなのか?

その疑問に、倉井先輩はというと、


「学校近くのアパートを借りたわ」



「だ、誰が?」

「私よ」


どうやらそういうことを出来る大金持ちは倉井先輩だったようだ。

「高校生でも借りれるんですね」

「コレばっかりは親に工面して貰ったわよ」

「流石にそうですよね」


それにしても、アパートを貸してくれるなんて、倉井先輩の家ってどんな家庭なんだ…


「だから、この部室も今年度いっぱい。持ち込む荷物の選定も含めて大掃除するのよ」



------------------------------


そんな感じで大掃除が始まった訳だが…


メインの部室にはさほど物は溢れていなくて、

精々パソコンやホワイトボード、後は夏輝先輩の私物のマネキン位なので、やることは自体は普通の清掃で事足りる。


問題は、倉庫兼更衣室になっている準備室の方だった。


「その、セーラー服が出てきましたけど…」

「どうせ夏輝のコスプレでしょ?っていうかそれ私とか紅葉の中学の奴じゃない…」

「あっ、それ私のです。中学の時の…」

「なんで紅葉のがここに?」

「前に撮影したんですよね。多分一年以上前に」

「そんなの早めに持ち帰りなさいよ…」


「あ、これこんな所にあったんだ!」

「うん?」

「マンガですよ、"魔女狩りの森"の1巻から7巻」

「それお前のだったのか。あたしもたまに読んでたな」

「お前ら部室に漫画持ち込んでたのかよ」

「あたしはただ読んでただけだからな!?」


「やっぱお掃除と言えばメイド服だと思うんだよねー。どれが良い?」

「どれとは…?」

「いやさ、メイド服4着あるからね」

「何故そんなに…っていうか普通の大掃除なのでコスプレは後にしてもらえます?」


とまぁ…こちらは物が多い。

しかも何か見つかる度に何かイベントが起こるので作業が進まない。

俗にいう、掃除中に漫画を読み始めてしまう現象というやつ。


現に今も俺も、少し前のゲーム機を見つけて、試しに電源を入れてみた所だ。


そんな時、

「あーっ!」


と大きな声が響き渡る。

振り向くまでもない。そんな大声の主は一人しか居ない。

正確にはこんな状況で叫ぶ人は一人しか知らない。


「みてよこれ、懐かしー!!」


何かを段ボールから引っ張り出しながら声をあげたのは、やっぱり夏輝先輩。

その手には、何かピンク赤の布と毛の塊のようなものが見える。


「ほら!サンタ衣装!」


先輩がバン!と見せつけるように出して来た衣装は、ワンピースのような形をした、赤と白の衣装だった。

絶対誰でも一度は見たことがあるような、誰が見てもクリスマス用の衣装。

去年のクリスマスの頃にはもう俺もこの部に在籍していたから、紅葉部長がこの衣装でクリスマスに動画を撮っていたのは知ってる。


「あっ、それは…」


部長も気が付いたのか、片付けの手を止めてこちらに向かってくる。

こうして大掃除のテンポが着実に落ちていくのだ。


夏輝先輩はそれを見ながら段ボールからさらなる品を取り出してくる。


「で、あとはこれは私のだね!」


取り出して来たのはもう一着のサンタ衣装。

色合い頃赤白なものの、布面積は水着よりちょっとまし程度な代物で、

所謂セクシーサンタ服と呼ばれるものだ。こっちは夏輝先輩自身が着てた。


似合うのは良いんだけど、やっぱり目のやり場に困るんだよなぁ…アレ。


その衣装でダンボールが空になったらしく、夏輝先輩はそのままそれを床に置いて、紅葉先輩の方へと向き直る。


「どうする?今年は交換して着てみる?」

「やっ、やめときます…」

「えー?せっかくだし、ね?」

「だってその衣装…!」


先輩2人がサンタ衣装を持って盛り上がってる。

でも、個人的には気になることがもう一つ。


せっかくなので先輩に聞いてみる事にした。


「ところで先輩」

「ん?何?」

「クリスマスの衣装ってもう一着ありましたよね」

「あー、あったね」


去年の事だしまだ覚えてるし、動画に残ってる。

あの時には与那嶺さんにも衣装があったハズ。

サンタじゃなくてトナカイだったけど。


「あれどこ行ったんです?」


さっきまでサンタ衣装が入ってたダンボールはもう空だ。

という事はその衣装は何処へ?


「あれ?セナちゃんにあげたよ?」

「え?そうだったんですか…」


反射的に与那嶺さんの方を見ると、与那嶺さんは真面目に段ボールの中身の仕分けをしていたが、

名前を呼ばれてこっちに気が付いたのか、元から話しだけは聞こえていたのか、顔だけをこちらに向けてきた。


「そ、そうですね…トナカイの衣装は貰いました…」

「なんで貰ったの?」


せっかくだから記念に貰ったとか…?

でも与那嶺さんの初コスプレはクリスマスじゃなくてハロウィンだしな…

ハロウィンの時は俺も仮装させられていたので鮮明に記憶が残っている。


なんて予想をしてたら、予想外の答えが返って来た。


「え、えっとですね、着心地が良かったので、パジャマに使ってます…」

「パジャマ!?」

「は、はい…」


若干伏し目がちの与那嶺さんが答えてる。

まぁ、他人に自分のパジャマなんて普通教えないしなぁ。

が、


「そうだったの?見てみたいなー!」

「あれ結構可愛い衣装でしたしね」

「え、えっと…あの…」

「あとで写真送ってもらうだけでいいからさ!」


等と先輩女子達の話に花が咲く。

なんとなく与那嶺さんには悪いことしたかな、なんて思いつつ、もうこの場に俺の介入する余地は無いので、普通の大掃除に戻ろうか…



------------------------------


一通り、清掃を終え、要るのかいらないのかよくわからない物品の数々が部室の机に並んでいる。

よく見ると変な物品がいっぱいだな。


「これ紅葉が生徒会から貰ってきた廃棄予定品ばっかりね」

「いくつかは使いましたけど、使わない物ばっかでしたね」


前に霜月先輩と一緒に、廃棄予定の物を貰って来た物品を準備室にしまった記憶が蘇る。

あれ結局使わなかったのか。

確かにガスコンロとか犬の首輪とか、使いどころ無いもんな。


「じゃあこれからこいつらを取っとくか捨てるか議論するわけだな?」

「そう言う事になるね」

「じゃあそっちの端の奴から見ていくか」


三条先輩が音頭を取りながら、仕分け作業が始まっていく。

最初に手に取ったのは、机の端っこに置いてあった、黒いベルトのようなもの。


「えーっと…なんだコレ」


それは、黒いベルトが金属のリングで縦横斜めに張り巡らされた、ベストのようなものだった。

どっかで見たことあるような気がするんだけど、どこだったか思い出せない。


と、思っていたら、夏輝先輩が知ってたようで、テーブルに乗り出してきた。


「それはハーネスだね!」

「ハーネス?」

「そう、工事現場とかスカイダイビングとかで使う奴」


あーなるほど、テレビのバラエティの飛び降りたりする企画で見る奴だ。


「なるほど、で、なんでそんなのがここに…?」

「さぁ…だれかスカイダイビングの企画でも立ててたのかな…?」


そんな事を先輩が言うので、辺りを見渡してみるが、名乗り出る人は居ない。

白金や、他の先輩達もキョロキョロしている。


なんなら夏輝先輩が一番そう言う企画を立てそうなものだけど…


「スカイダイビング企画する?」

「「「「…………」」」」


広がる沈黙。


「…使い道無さそうだし、これは処分でいいか…部長、どうする?」

「そ、そうですね、これは私が後で捨てておきます」


紅葉部長がハーネスを自分の鞄に押し込んでいく。

別に今ここで捨てれば良いのに、とも思ったけど、金属とか革を一緒に捨てたら怒られるかもしれないと思うと、仕方ないのかもとも思う。


というかスカイダイビング企画って、やりたくても無理でしょうに。


「じゃあ次に向かうか。…っと、これだな」


三条先輩が次に手に取ったのは、透明な水晶玉。


「…だれか占いでもするのか…?」

「う、占い同好会の人から譲り受けてきました」

「占い同好会なんてあるんだ」

「はい。あと、これと、これも占い同好会の物ですね」


なんて言いながら、紅葉部長がテーブルから色々な物をピックアップしてくる。

タロットカードや、何かよくわからない割り箸の束みたいなもの。

これも占いに使うんだろうか?


「もしかしてこいつらも…」

「はい…占い企画とか出来ないかなぁ…って」

「本当に色々やろうとしてたんだな」


表に見える活動はあまり多くないけれど、裏では以外と色々とやろうとは考えてるのだ。

考えてるだけで、実行まで至らないことが多いけど。


「で、でも、占いは面白そうですね…」


与那嶺さんが呟く。


「そうか?じゃあ、一応これは持って行くことにするか?」

「まぁ、占いは動画にしても悪いテーマじゃなさそうですしね」


どうやら占いグッズは持って行く流れになりそうだ。

紅葉部長が割らないよう慎重に水晶玉を抱えて、新聞紙やタオルにくるもうとしている。

そんな部長を見ながら、倉井先輩が一言、


「でも水晶占いとか、随分と洒落たことが出来るのね」

「え?」

「個人的にはあれ、どういう理屈なのか全然分からないのよね」

「あ、いや、水晶玉での占いは私も出来ませんよ?」

「え、そうなの?じゃあその水晶玉は?」

「飾りです。なんだか雰囲気が出そうなので…」

「それだけの為に占い同好会から貰って来たの…?」



そんなこんなで、捨てるもの、残すものを判別していく特殊放送部一行。


けれど、準備室にあった物資は膨大かつバリエーション豊かで、中々作業は終わらない。

今までやって無かったのはわかる。使えそうな使えなさそうな微妙なラインの物が多すぎる。


そんな中、友達の白金が一つ提案をしてきた。


「もう、物品みんな公開して、残すか残さないか他の人に判断してもらうってのはどうですか?」

「…と、いうのは…?」


突飛な提案に部長も首をかしげています。


「つまり、ここにあるハリセンとかビーチボールとかを、残すか残さないかアンケートを取るんです!」

「な、なるほど…」


そんな提案に、霜月先輩が意見を申し出てきた。


「それはいいけど、アンケートしてどうするんだ?残すってなった物はどう扱う事にする?」

「それはまぁ……残す以上何かに使う事になるとは思いますけど…」

「それ、変なグッズを残すことになっても企画を立てなきゃいけなくなるんじゃねぇかな。例えば…」


そう言いながら霜月先輩はテーブルから何かを持ち上げた。

それは、中華料理用、激辛粉末。


「これが残る事になった場合、間違いなく激辛企画になるだろうな」

「そ、それは…」

「私は大丈夫だよ!」

「辛党の夏輝(あんた)は黙ってなさい」


乗り出す夏輝先輩を倉井先輩片手で軽くあしらうのを横目で見ながらながら、霜月先輩は咳払いして話を続ける。


「とにかく、みょうちきりんなものが多いこのテーブルのグッズを他人に委ねるのは止めておいた方が良いと思うんだよなぁ」

「で、ですね…」


白金の提案はあえなくボツとなった。

俺もイイアイデアじゃないかなぁ、とは思ったけど、確かに先輩の指摘を聞くと、無理があるような気もしてくる。


「他の人に任せておいて、思わせぶりで終わる訳にも行きませんからね」


部長が激辛粉末を霜月先輩から受け取って、それを眺めながら話し出す。


「ここの大掃除は今回限りですから、今回は皆で頑張りましょう!」

「また同じようにアレコレため込んでたらまた新居で大掃除する事になるわよ」

「そ、それはおいおい対策を考えるとして…」


結局一つずつ皆で吟味していくことにしましたとさ。







------------------------------


大掃除後、



「倉井先輩」

「何?」


そう言えば、この大掃除に関して一つ聞いてない事があった。

それは、移る拠点の大きさ。

そこが狭かったら、持っていける物も少ないだろう。


「転移先のアパートって、どんな広さなんですか?」


なので聞いてみたら、


「確か3LDKだったかしら。暮らそうと思えば部員全員は無理だけど、2、3人位は行けるわよ」

「そんな広いんですか?」

「えぇ、安かったから」

「だったら整理なんてしなくても全部入ったんじゃ…?」


そんな指摘をしたら、倉井先輩は固まってしまった。


そして数秒後、ぎこちない感じで喋り出す。


「だ…断捨離は大事よ」


そしてその直後、何かハッと気が付いたような表情を一瞬見せてから、冷静に話し出す。


「それに、この量の物品、運ぶのも大変でしょう?引っ越し業者を校内に呼ぶのは無理だからなんとか私たちだけで運べる量にするのよ」

「なるほど…」

「そう。そう言う事だから」


という感じでその場は終わったが、

倉井先輩の普段見ない感じの顔を見れたのは、ある意味良かったのかもしれない。


…あれ?これ小説に残してよかったのかな?

城嶋「ところで、なんで安かったんですか?」

倉井「事故物件だったからよ」

城嶋「!?そ、そこ大丈夫なんですか?」

倉井「霊感ある私が何にもないって判断したんだから大丈夫よ。少なくとも霊感の無いあなた達には何も無いわ」

城嶋「な、なら良いですけど…」

倉井「でもまぁ、無駄にビビるから与那嶺には伝えない方が良いかもね」

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