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第85話 二人の違い

「……ん」


 俺は目が覚めた。

 というか、寝てしまったのか。


 昨日はあの後、リビングのテーブルで少し休んでいたはずだ。

 疲れもあったし、多分寝ちゃったんだろうな。

 だからなのか……首が痛いな。


「うぅ……」

「おはようございますお兄様、ちょうど起こそうと思ってたんですよ」


 リビングの奥、キッチンの方からカレンから声が届く。

 俺はその声を耳に、口を開いた。


「おはようカレン、ところで今何時くらい?」

「そろそろお昼ですね」

「もう、そんな時間か」

「そろそろお昼ご飯が出来るので、少し待ってくださいね」

「じゃあ、顔洗ってくるよ」


 俺は席を立ちあがって、顔を洗いに行った。


 そして、鏡に映る俺の顔は結構変わっていた。

 髪も伸びて結んでいるし、何より眼が紅くなった。

 それは顔を何度洗っても変わることは無い。


「……なんか俺も変わったな」


 そんな事を呟きながらリビングに戻ると、すでに食卓には料理が並べられていた。


「あっお兄様、どうぞおかけ下さい」

「うん」


 俺はイスを引き、いつもの席に腰かけた。

 カレンもすぐにイスに座り、俺達は昼食に手をつけ始めた。


「もぐもぐ……カレン、そう言えば話をするって事だったよね」

「はい、お兄様から言い出してもらえるのを待っていました」

「そう……。昨日のはどこまで聞いてたの?」


 シモンとの会話を初めから聞いていたって話だったけど、どれ程知っているのかは俺もわからない。

 だがきっぱりと、


「全てですね」


 そう言われた。


「じゃあ、何から話すべきか……」


 何を言えばいいのかとても悩むな。

 そもそもカレンに隠していたのだって、カレンを巻き込みたくなかったからだ。

 だから教えていい事と教えちゃいけない事を考えないといけない。


 それを考えていたら、カレンの方から先に話しかけてきた。


「お兄様、魔族はまだ生きていたのですね」


 魔族が生き残っているのを知っているのは、俺とグルミニアとオリヴィア、あとはベルナール先生と学院長くらいだ。

 アマネですら知らないはずだ。


 ここは当たり障りない反応をしておこう。


「どうやら、そのようだな」

「お兄様は魔族と戦っていらっしゃるのですか?」

「……魔族とでは無いな。俺が戦っているのがたまたま魔族だっただけだ」


 魔族にも良い奴もいれば悪い奴もいる。

 せめてカレンにはそれを分かって欲しかった。


「ふふ、お兄様らしいですね」


 カレンが微笑んだ。

 分かってくれたようで嬉しいな。


 しかし、少しの間があった後、カレンの顔は真剣なものになる。

 ここからが本題だろう。


「……私達は魔族なのでしょうか?」

「……少なくとも俺はハーフだ」


 一枚だけの羽、魔族の魔術が使えるとは言え、杖が必要。

 これらの事からもわかるように、ハーフである事は間違いないだろう。


 しかし、カレンはどうなのだろうか?


「カレンは自分がハーフだと思う?」

「……いえ、そうは思いませんね」

「俺とカレン……何が違うのだろうか?」


 ……とは言っているが、俺には分かっている。

 俺とカレンの違いは"魔族の返り血を浴びた"か否かだ。


 俺は確実に血を浴びて覚醒しているし、おそらくこれからもしていくだろう。

 そして、それが新魔王の言っていた『血を求めよ』の意味するところなのだろう。


 ……でもカレンに同じ道を進ませる気は毛頭ない。


「何が違うか……わからないな!」

「確かにわかりませんね」

「ならいいんじゃない。その内分かるようになるさ」


 結局何も言えずじまい。

 でも、これはカレンのためなんだ。

 俺は必死に自分へと言い聞かせて、下手くそな笑みで笑いかけた。

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