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第64話 オリヴィア宅

「ふぁ……よく寝た」


 窓から明かりが射し込んでくる。

 正直まだ眠いし、明かりが眩しい。

 それにダンジョンにいた俺にとって、日光は厳しい……。


「とりあえずリビングに行こ」


 俺はベッドから起きてリビングに向かう。

 既にベッドにカレンはいなかったが、鼻に届く良い匂いが、カレンが何をしているか教えてくれている。


「おはようございますお兄様」


 リビングにはやはりカレンがいた。

 そして料理の乗ったお皿を机の上においていっている。

 俺はそれを見ながらイスに座る。


「おはよう。こうしてカレンの手料理を食べるのも久し振りだね」

「ふふ、今日は腕にふるいをかけましたよ。それに今日はお兄様の好きなピラフです」


 そう言ってカレンもテーブルに着く。


「おぉ! 楽しみだな」

「では、食べましょうか」

「「いただきます」」


 俺達はそうして朝食を食べ始める。


「もぐもぐ……おいしいね」

「そう言って頂けると作った甲斐がありますね」


 カレンは微笑みながら上品に食べている。


「そういえばお兄様」

「ん? 何?」

「今日はこれからどうなさるんですか?」

「まずは、オリヴィアに会いに行こうかな、って」


 昨日の夜、決めたことだ。


「でしたら住所を教えておきますね」


 カレンは箸をいったん止め、紙とペンを持ってきて、その上にさらさらと住所を書いていく。


「ありがとう……ん? 知ってるのか!?」


 他の人ならともかく、オリヴィアに関しては完全に歩き回る予定でいた。


「はい。仲良くして頂いたので」

「そうなんだ。じゃあカレンも一緒に来る?」

「いえ、遠慮しておきます。その……二人きりで積もる話もあるでしょうし」

「分かったよ。……じゃあ、行ってくるね」

「はい。……あまり遅くならないでくださいね」

「うん」


 俺は朝食を堪能し、紙を片手に指定された住所へと向かった。


 ◇◇◇


「ここか」


 辿り着いた家はとても豪華だった。

 まず大きさが尋常では無くデカい。

 そしてその白い壁にはきらびやかな装飾が施されている。

 更によく整えられた庭には美しい植物が育っていて……とても王都であるとは思えない。


「お金持ちなのかな?」


 俺はそんな事を考えながら庭に進み、玄関に付けられているドアノッカーを叩く。

 そしてしばらく待つと、


「どちら様でしょうか?」


 玄関が開かれ、一人の老人が顔を出す。


 老人は髭が生えていて、メガネをかけている。

 そして黒いバトラースーツを着ていて、彼が執事である事は一目見ただけで分かる。


「アベル・マミヤという者です。オリヴィアさんに会いに来ました」

「申し訳ありません。お嬢様なら現在、本家の方でお務めを果たされており、この家にはいらっしゃらないのです」


 お嬢様?

 本家?

 お務め?

 平民の俺には聞き馴染みのない言葉が聞こえてくる。


「あ、そうだったんですか。それはいつ頃帰ってくるんですか?」

「4月11日の朝、ですね」


 入学式の翌日か。

 それまでは会えない、という事か。


「……そうですか」


 オリヴィアには学院で会うしかないな。

 今日はもう帰ろう。


「突然すいませんでした。失礼します」

「アベルさん。これからもお嬢様と仲良くしてくださいね」


 執事のおじいさんは頭を下げる。


「もちろんですよ」


 俺は笑顔で返して、オリヴィアの家を後にした。


 そして帰るなり、「早すぎませんかお兄様!? ま、まさかオリヴィア先輩と喧嘩でもなさったのですか!?」と驚くカレンに理由を説明するのだった。

ぶ、ブックマーク200人……だ……と。

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