第56話 学院ダンジョン第二階層
「『氷欠片』」
俺は氷の欠片を巨大な蜘蛛に放つ。
一つ目は避けられたが、欠片の数は5つ。
その全てをよけ切れるはずなく、
「KIIIIII!!」
いくつかはその柔らかい肉体を貫き、そのまま蜘蛛は悲鳴を上げて霧散した。
素早いモンスターだったが耐久力はあまりなかったようだ。
「次はどっちに行けばいいのかな?」
「……右、かな」
アマネは腰から地図を取り出して、
マッピングしていた道を見る。
2階層ではゴブリンやオークの他にも巨大な蜘蛛、ビックスパイダーがいた。
しかし今のところは苦戦していない。
「じゃあどんどん行こうか」
「……うん」
出来れば今日中に2階層も攻略しておきたい。
だから足早にしばらく先に進む。
その間敵に会うことは無かったが、かなり奥に進むと――
「KIIEEEEEE!!」
奥から甲高い声が響いてくる。
「うおぉっ!」
その声の大きさに俺はつい驚いてしまった。
声の主は巨大な蜘蛛。
ビックスパイダーよりも大きな身体、名づけるとすればジャイアントスパイダー。
そしてジャイアントスパイダーはこちらに走ってくる。
「アマネ来るぞ! 頼めるか!?」
俺は杖を引き抜く。
「……うん。……『生命力操作』」
アマネは腕を伸ばす。
それによってジャイアントスパイダーの後方部分が爆発する。
「KIIIII!!」
その痛みからか悲鳴をあげるが、ジャイアントスパイダーの8本足は止まらない。
「『氷柱』!」
俺は動きを止めるために氷で地面に釘付けにしようとする。
しかしジャイアントスパイダーは上に飛び、俺の攻撃を上手にかわす。
図体の大きさに比べて圧倒的に速い!
「……『生命力操作』!」
アマネは腕を向けるが、ジャイアントスパイダーはその腕の方向に重ならないように動き回る。
アマネのスキルは方向の指定があるらしく、ジャイアントスパイダーには何も起こらない。
「『石弾』!」
俺も石の弾丸を5つ同時に飛ばす。
しかしその速さに4つはよけられてしまう。
1つは当たったが致命的なものでは無く、そのままジャイアントスパイダーはこちらに走ってくる。
「アマネ、用意おいてくれ!」
俺は杖をしまい剣を引き抜く。
そして剣を両手にジャイアントスパイダーへと駆け寄る。
「KIII!」
ジャイアントスパイダーは俺に対し前足で攻撃を仕掛けてくる。
「っは! たあぁ!」
その一発目をかわし、二発目を剣で防ぐ。
ジャイアントスパイダーの動きはすごく速いが、俺はそのスピードについていけている。
しかしジャイアントスパイダーは狙ってか、剣の間合いの外から攻撃を仕掛けてきた。
だが――
「くらえ! 『神殺槍』!!」
漆黒の槍を出すことによってその間合いを超える!
そしてその槍はジャイアントスパイダーの瞳を貫く。
「KIII!」
ジャイアントスパイダーは痛みからか、身体を上にあげ前足をブンブンと振り回す。
「『闇刃』」
俺はその前足の真ん中に漆黒の刃を置く。
それによって前足のいくつかがこぼれ落ちていく。
俺は魔族とのハーフだ。
だから魔族の魔術も簡単に使えると思ってはいたが、やってみれば本当に使えた。
「KIIIIEE!!」
ジャイアントスパイダーは一度退こうとするが、目と前足が無いため、すぐ後ろでバランスを崩してしまう。
そこへ――
「……『生命力操作』」
アマネが腕を向け、ジャイアントスパイダーを爆発させた。
そして巨大な蜘蛛はその場に紫色の魔石を残し霧散した。
「これで2階層も終わりだな」
「……うん」
アマネは連続三回でスキルを使ったためか疲れ切っている。
俺達はその日はそれで帰ることにした。




