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第55話 学院ダンジョン第一階層

「さぁ、今日からは本格的に進むか」

「……うん」


 今日はダンジョンの探索2日目。

 昨日はただの様子見だ。

 だが今の俺達で簡単に進めることがわかった。

 だから今日の間で行けるところまで行ってみようと思う。


「今日の晩ご飯何にする?」

「……お肉」

「確かに今日はなんだかがっつりしたもの食べたいな」


 長い長い道を俺達は雑談しながら歩く。

 モンスターが出るとはいえ、

 この辺りのゴブリンは昨日俺達が倒した。

 だから新しい場所までの通路はすごく暇だな。

 だからこそ一人じゃなくて良かったと感じる。


「……敵っ」


 アマネが身構える。

 よく見れば前方には巨体の化け物がいる。

 オークだ。


「アマネ、動きを止めてくれ」


 俺はそう言いつつ杖を引き抜く。


「……『氷柱(アイスピラー)』」


 アマネは腕を前に突き出し、オークの足元を氷の柱で固定する。

 これで動けまい!


「『火球(ファイアーボール)』!」


 そして俺は動けなくなったオークに火の玉を高速で放つ。


「UGAAA!!」


 当然その火の玉はオークに命中し、オークの巨体を赤く燃え上げる。

 しかしそこで油断はせずに、


「『岩砲ロックキャノン』!」


 巨大な岩を弾き飛ばす。


岩砲(ロックキャノン)』は土系の中でも威力の格段に高い上位魔術だ。

 そう、俺の魔術はついに上位魔術の域にまでたどり着いていた。


「UWAA!!」


 岩をぶつけられたオークの身体は中央に大きな穴が開き、時間を置かずにその巨体はすぐに霧散する。

 そして最後には、その場に大きめの魔石を一つ残して消えた。


「ふぅ……意外と簡単だったな」

「……簡単」


 スキルも使わず魔術だけで圧倒出来たのだ。

 この調子ならさくさくいけそうだな。


「よし、じゃあもっと進もうか」

「……了解」


 オークを倒した後、様々な分かれ道を確かめながら俺達は進んだ。

 このダンジョンに関しての地図は無く、手書きで道を紙に書いていくしかない。


 しかしゼロからのスタートは簡単では無く、道中にゴブリンやオークに襲われたりもした。

 しかし俺達の相手にはならず、俺に関しては剣技のみでも余裕で勝てた。


「これなら2階層も問題なさそうだな」

「……余裕。……でも時間」

「ん? 確かにそろそろかな」


 俺は街で買っておいた懐中時計を見る。

 朝からこのダンジョンに入ったというのに、既に時刻は夕方だ。


「あと、残りはどこかな」

「……おそらく、ここだけ」


 アマネが俺達が書いたこのダンジョンの地図に指を指す。

 そこは未だに行っておらず、当然マッピングもまだしていない通路。

 しかし今まで行った道は全て行き止まりで、2階層に行く階段があるとすればこの先だ。


「残りは明日行こうか」

「……うん」


 時間も時間だし無理は良くない。

 念の為に食料はたくさん持ってきているが、俺にはダンジョンの地下に落とされたつらい過去がある。

 だから慎重だ。


「たくさん魔石も拾えたし、帰ったら美味しいもの食べようね」

「……うんっ」


 魔石の価値は元の世界程高くない。

 しかしこの世界でも高い事に変わりない。

 だからこのダンジョンのみで生きていくことは、それほど難しい事ではない。


「お肉がいいって言ってたし、詰所の近くのお店行こうか」

「……楽しみ」


 俺達は今日の晩御飯の話をしながら帰宅した。


 ◇◇◇


「さ、この先を進むか」

「……うん」


 この一階層、おそらくその最後の通路。

 俺達は2階層に降りるためにその通路を進む。


「何も無いといいけどな」


 しかしその考えに反して、通路の奥からは嫌な雰囲気がする。

 そしてそれは雰囲気だけではなく――


「UGAAAAAAAA!!!」


 大きな咆哮で存在を示してきた。


「くそ! 最悪だな」


 奥に立つのは通常のより巨大なオーク。

 そしてその周りにいる3匹の普通のオーク。

 通常のオークでさえ2mを超えるが、このオークの身長は3mを超えている。

 名前は良く分からないが、グレイトオークと名付けておこう。


「2階層への門番みたいなものか。アマネ、スキル行けるか?」


 俺は杖を抜きながらも一度アマネの方を見る。

 その間にもグレイトオークと3匹のオークはこちらに走ってくる。


「……『生命力操作(ライフコントロール)』」


 アマネはグレイトオークに腕を向ける。

 それによってグレイトオークの右腕は膨れ上がり――そのまま爆発した。


 アマネの圧倒的威力による先手。

 普通なら動けなくなりそうなものだが、手下のオークたちは止まらない。


「『氷柱(アイスピラー)』!」


 俺はオークたちの足を凍らせる。


「……『生命力操作(ライフコントロール)』」


 アマネは先頭にいたオークを爆発させる。


「『岩砲(ロックキャノン)』!」


 俺は巨大岩を弾き飛ばし一匹のオークの身体に大穴を開ける。


「……ふぅ」


 スキルを2回連続で使ったせいか、アマネは息を切らしている。

 もう一度出来ない訳では無いだろうが無理をするのはよくない。


「アマネ、スキルはもう大丈夫だ。『石弾(ストーンバレット)』!」


 『石砲』は負担が強い。

 だから節約を込めて俺は石の弾丸を放つ。

 しかし石ごときの大きさではオークを倒せない。


「……わかった。……『油雨(オイルレイン)』」


 アマネはオークの身体に油を振りかける。

 あまりにも特殊な魔術だったから一瞬俺は戸惑う、

 しかしその意図を理解した俺は――


「『火球(ファイアーボール)』!」


 火の玉をオークに飛ばす。

 油をかけられたおかげもあり、オークの身体はすさまじい勢いで燃える。

 その火のすごさは、奥のグレイトオークを見えなくする程のものだ。


「……火が止まったら向かう」


 俺は剣を引き抜いた。


「……大丈夫?」

「念のためにスキルの用意をしてくれ」

「……わかった」


 俺は火の勢いが止まるのを待つ。

 しばらくすれば火の勢いは止まり、奥のグレイトオークの姿が俺にも見えるようになる。


「うおおお!!」


 俺は剣を両手で持ちグレイトオークへと駆ける。


「UGAAA!!」


 そんな俺にグレイトオークは左手で殴ろうとしてくる。


「っと!」


 しかしそれを俺はしゃがむことによって華麗にかわし、そのまま身体を斬りつける。


「たああぁぁ!!」


 更に振った勢いを活かして一回転。

 その回転力を活かし再度斬りつけることによって、グレイトオークの傷を更に大きくする。


 通常ならここで右手を振って来ていたかもしれない。

 しかしアマネのスキルによって有るはずの右手は無い。

 だから隙が出来るのだ……!


「……やったか?」


 フラグ通りには行かず、グレイトオークは霧散し大きな魔石を残す。


「……やった」

「そうだな。このまま2階層も少し見ていこうか」

「……怪我、無い?」

「大丈夫だよ」


 心配させないためにもアマネに笑いかける。

 実際に怪我自体は無い。

 だから俺はすぐにグレイトオークの魔石を拾い、いつもとは違う他の袋に魔石を入れる。

 これは俺が食べようかと思う。


 その後進んだ2階層はあまり1階層とは変わらず、一回ゴブリン達と遭遇しただけで問題は無かった。

 明日からは2階層を本格的に攻略だな。

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