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第54話 ダンジョン攻略

「やっぱりそうだったんだな」


 俺は今、地図で指し示された王都のダンジョンがある建物の前。

 そこそこ新しい建物は豪華で巨大。

 何となく予想は出来ていたが、そこは――バルザール魔術学院だった。


「……どうやって、入るの?」


 アマネは小首を傾げる。

 アマネの問いは当然だ。

 俺達はここの生徒でも教員でもないし、普通なら入るのを断られるだろう。


「グルミニアの弟子のふりをする」


 神童と呼ばれるグルミニア・ハイトウッドなら顔が利くだろう。

 そしてその弟子がダンジョン攻略をすると言えば、もしかしたら入れてもらえるかもしれない。


「……上手く、いくの?」

「……やってみないと分からないかな」


 上手くいくかは分からない。

 もし失敗したらいつものように忍び込むことになるな。


「すいません」


 俺は学院正面門の前にある受付に話しかける。


「何でしょうか?」

「実は俺達グルミニア・ハイトウッド先生の弟子で……」

「はい。それがどうかなさいましたか?」

「それが……ダンジョンに入れてもらえないかなって」

「はい。構いませんよ」


 ……え!?

 こんなすんなり入れてもらえるの?


「自分が言うのもなんですけど……いいんですか?」

「いいですよ、魔族との戦争中にダンジョンに行く人なんかほとんどいませんし」

「そうですか」


 ……いいのかそんな理由で。

 グルミニアの名を語ってまで入れようとしてもらったのに、なんだか恥ずかしいな。


「ではこちらを持ってください」

「あ、はい」


 受付の人からカードを渡される。


「ではダンジョンまで案内しますので」

「どこにあるかならわかりますよ」


 そこで地下に落とされたんだしな。


「一応の監督ですので」

「そういうことですね。わかりました」


 俺達は受付の人についていく。

 校舎を突っ切り、森の手前にある地下への扉を開き、階段を降りる。

 そうすれば目的地への入り口はすぐだ。


 沢山の紋様の描かれた巨大な門。

 俺が始めて見た時と何も変わらない、学院ダンジョンへの入り口だ。


「ここになります。お時間はどれ程でしょうか?」

「今日は様子見なのですぐに戻ります」

「わかりました。では気を付けて」


 受付の人が頭を下げるのを背後に、俺は巨大なダンジョンへの扉を開いた。

 今度は俺一人の力で。


「……しょっと。じゃあ進もうかアマネ」


 入り進むダンジョンの中は、前に俺が来た時とは明らかに違っていた。

 道や何となくの通りは同じだが、壁に紋様は無く、そしてトラップも無い。


「トラップがないのはありがたいな」

「……うん」


 トラップが無いだけで、ダンジョンの攻略速度は目に見えて変わる。

 だが念の為、用心も必要だ。

 だから気を張りながらしばらく歩いてくると、そのおかげもあってか奥の暗闇から足音が聞こえてきた。


 その足音は複数。

 おそらくは――ダンジョンに巣くうモンスターだろう。


「先手を打つ。近づかれたら頼むよ」

「……わかった」


 俺は杖を引き抜き、通路の奥へと構える。


「『氷欠片アイスフラグメント』」


 そして氷の欠片を複数出現させ、前方に飛ばす。

 それと同時に奥から悲鳴が聞こえてくる。


「当たったな! 『氷欠片(アイスフラグメント)』」


 俺は再び氷の欠片を飛ばす。

 次は悲鳴と共に足音が近づいてきた。


「UGAAA!!」


 暗闇から姿を見せるのは10匹程度のゴブリン。

 俺はそれに対し、何度も『氷欠片(アイスフラグメント)』放つ――


「UWAAAA!!」


 それはゴブリン達の身体に次々と突き刺さっていく。

 しかし、2匹がその弾幕から抜け出してきた。

 ……避けれなくも無いが、


「アマネ頼む!」


 俺は連携の確認の為にもアマネに頼る。


「……『生命力操作ライフコントロール』!」


 アマネが一匹のゴブリンの方へと腕を向ける。


「UWA! UWAAA!!」


 するとゴブリンは爆発四散――せずにもう一匹の仲間を殴る!


「『石弾(ストーンバレット)』!!」


 その間に俺は石の弾丸を弾き飛ばし、ゴブリンを仕留めた。


 そしてその場に残ったのは、俺のおやつでもある魔石だけ。

 最初の戦闘は何ら苦戦することなく終わった。


「ありがとうアマネ。……でもどうしたんださっきのは」

「……生命力、操作。……その、延長」


 一緒にあれだけの修羅場をくぐり抜けてきたんだ。

 アマネのスキルはそれによって、一つ上の強さを手に入れたのだろう。


「そうか。これからも頼りにしてるよ」

「……うんっ!」


 それから少しだけ奥に進み、その日の探索は辞めておくことにした。

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