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第51話 会食

 会食の会場は宮殿の中でも一際広い場所だった。

 並べられたたくさんの食事、それを取り囲む人々は皆色鮮やかな服を着ている。


「……すごいな」

「パーティーとはすごいもんじゃの」

「……きれい」


 入ったのはいいけど何をすればいいのかわからないな。

 まずはお腹もすいたし食事でもしようかな?


「おやおや、よくぞいらっしゃいました」


 何をしようか悩み、手持無沙汰となっていた俺達にロッキンジーが話しかけてくる。


「かなりすごいな」

「でしょう。腕によりを掛けていますから」

「いいのか? 魔族との戦争中じゃないのか?」


 別に戦争の時に、派手なパーティーをしちゃいけないってことは無いんだけど。

 でももっとやるべきことがあるんじゃないのか、と思ってしまうな。


「それならご心配なく。もう既に終わりかけております」

「本当か!?」

「真実でございます」


 早いな。

 これは想像以上だ。

 新魔王を倒せば戦争は早期に終わると考えていたが、こうも早いとはな。

 しかし――


「そういえば俺はいつ元の世界帰れるんだ?」


 俺はロッキンジーにそのことを聞く。

 きちんと聞いておかないとな。


「そのことは明日にでもお話します。それより今日はこの会食を楽しみましょう」

「それもそうだな」


 俺はすぐに引き下がった。

 もしここで強く問い詰めて、会食の空気を悪くしたらダメだろうしな。


「ではどうぞ今夜をお楽しみください」

「あぁ」


 ロッキンジーはこうした挨拶を交わし、他の魔術師達の元へと向かう。


「わしも色々話を聞いてくる、アマネを頼むぞアベル」

「っちょ……!」


 グルミニアはそう言い残し、別の魔術師達のグループに話しかけに向かった。


「……行ってしまった」

「そうだな。俺達はご飯でも食べようか」

「……うん」


 俺達はご飯を取りに行く。

 すると会食はバイキング形式のようだ。

 種々様々な食べ物が並び、見たこと無い食べ物もたくさんある。


「これと、これと……」


 俺は皿の上に食べ物を乗せていく。

 すると――


「すいません。もしかして……」

「あの、勇者様達ですか?」


 二人の女性に話しかけられた。

 どちらも煌びやかなドレスに大きく胸元が開いている。

 優美さを感じさせる化粧に、髪は高く盛られ、どちらも顔立ちはとても整っている。


「そうですよ」

「……」


 アマネは人見知りか、俺の後ろに隠れる。

 でも……達、ってことはアマネも含んでくれているのだろう。


「えぇ~本当ですか~」

「私達、勇者様たちと仲良くしたいと思って~」


 女性二人は胸を寄せて近寄ってくる。

 俺はそれに合わせて目を逸らす。


 まぁ確かに気持ちはありがたい。

 でもこれは多分すり寄ってきてるんだろうな……。


「気持ちはありがたいけど、ちょっと二人で話したいことがあるんだ」


 俺はやんわりと断ることにした。


「少しくらい、お話ししましょうよ~」


 茶髪の女性が俺の肩を優しく触ってくる。

 でも俺は足を一歩下げ少し離れる。


 昔サラさんに言われたことがある。

 ボディタッチの激しい人には気を付けた方がいい、らしい。


 そう言えば、元の世界に帰ったらサラさんにも謝っておかないとな。

 何か月バイトさぼってるんだよ、って自分でも思うからな。


「暇があればあとでお声掛けしますよ」

「えぇ~」

「ごめんね。行こう、アマネ」

「……うん」


 丁寧に断り、俺はアマネを連れてその場から離れた。

 そのまま2人掛けの机の方へとアマネと共に向かう。


 結局、途中で去ったせいで好きな料理を全部は取れなかった。

 それにだんだんと、俺がこの空間に浮いている感覚がしてくる。


「俺ちょっとこういう所苦手だな」


 二人で席に着き、料理を口に運びながら、俺はアマネに話しかけた。


「……私も」

「ご飯食べて、少ししたら散歩でも行こうか」

「……うん」


 こんな豪華なパーティーの中、そこだけ時間が切り取られたかのように雑談しながら二人きりで静かに食事をする。


 俺は元の世界に戻る。

 これからアマネやグルミニアはどうするかを聞かなくちゃいけない。

 でもそれは後でもいいかな、と俺は思った。

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