表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

56/116

第50話 シェルブール宮殿

 俺達3人と一匹は馬から一度降り、歩きで入り口へと向かう。

 ペレッキの港から2週間ほど。

 俺達はようやくシェルブール宮殿に辿り着いたのだ。


「ようやく着いたな……」


 これでカレンやオリヴィアに会える……。

 そう考えるととても嬉しい。

 ……でもキザイアさんが無事だったら、もっと素直に喜べたんだろうな……。


 と考える暇は少なく、辿り着いた俺達を見るなり、魔術服を着た一人の宮廷魔術師が出迎えてくれた。


「よくぞ帰られました、勇者様達!」

「勇者!? 俺達が!?」

「もちろんです! 何故なら新魔王を撃破なさったんですよ!」


 うぅ……悪い気分ではない。

 でもなんだか恥ずかしいな。


「……」


 しかし恥ずかしがる俺に対し、アマネは俺の袖を掴み、後ろに隠れる。


 まぁこいつらの事は嫌いだろうな。

 俺もロッキンジーの野郎は大嫌いだ。


「おや勇者様たちではないですか!」


 そんなことを考えていたら、丁度奥から片眼鏡をかけた黒髪の男が現れた。

 ロッキンジーだ。


「久しぶりだな」

「そうですね。しかしよくやってくれました! 今日はどうぞごゆっくりしていってください」


 流石に罠ということはないだろう。


「……そうしよう」

「そこのお前、今夜の夕食は会食にしておけ」

「わかりました!」


 ロッキンジーに言われ、横にいた魔術師は奥の方へと連絡しに走っていく。


「では皆さんをお部屋の方へ案内しますね」


 俺達はロッキンジーに誘われるように、宮殿の奥へと向かった。


 そしてその道中でロッキンジーに話しかけられた。


「未だにその女を連れているのですか?」


 アマネの事だろうな。

 こいつは最初からアマネの事を目の敵にしていたな。


「……」


 アマネはその言葉に俯く。


「悪いのか?」


 俺はアマネの頭を撫で安心させる。


「いえそういう訳では無いですよ。しかしもっといい女性を紹介できますが」

「そんなものはいい」


 いちいちむかつくなこいつ。


「そうですか。こちらの部屋へどうぞ」


 ロッキンジーは部屋の前で立ち止まる。


「時間になりたらお呼びいたしますので、何かあったら突き当りの部屋にいるメイドにお声掛けください」


 そう言いロッキンジーは去って行く。

 その背中はどこか嫌らしかった。


 ◇◇◇


 ゆっくりと休憩と休息をとっていた俺達の部屋に

 コンコン、とノックが鳴る。


「勇者様たちいらっしゃいますか?」


 おそらくは夕食を呼びに来たメイドだろう。


「いる。少々待ってくれ」


 グルミニアはソファから腰を上げ扉に向かう。

 扉の向こうにいるのはやはりメイドだった。

 それを見て、俺はイスからベッドに眠るアマネに向かう。


「アマネ、起きて」


 柔らかくか細い腕をゆすり、アマネを揺り起こす。


「……ん? ……アベル、どうしたの?」

「そろそろご飯だよ」

「……わかった」


 アマネは眠たげな瞳をこすりベッドから起き上がる。


「3人共、こちらのお召し物を」


 メイドは3着の服を持っている。

 豪華なドレスに、仕立ての良い燕尾服。

 俺が一生着ることの無いような代物だ。


「扉の前にいますので、着替え終わりましたら仰ってください」


 メイドはそう言い扉を一度閉める。


「すごい不便そうな服じゃの」

「……そう? ……かわいい」


 豪華なドレスだけでも、人が違えば意見は違うもんだな。


「魔術服は正装じゃないのか? 頼めば持ってきてくれるだろ」


 今のグルミニアは魔王城で購入した質素な服だ。

 だから正装に着替えなくちゃいけないんだろうけど、神童とまで呼ばれるドルイドなら、むしろ魔術服の方が正装に近いんじゃないのか?


「面倒だし、まぁよいわ」


 そう言いグルミニアは服をするすると脱いでいく。


「ま、まて! 俺がまだいる」

「あぁすまんの」


 本当に悪いと思っていいるのか!?


 そう思いつつ俺は部屋を出て、隣の部屋で着替えることにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ