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第45話 魔王城下

「ようやくだな」


 目の前に広がるのは広大な草原と大量の建物群。

 そして、その奥には巨大な壁と城がある。

 そう、あれこそが旅の到達点――魔王城だ。


 様々なことがあり、予想よりも時間をオーバーしたが、俺達は長い長い森をようやく超えていた。

 しかし、魔石を食べていた俺はともかく、3人の表情には疲れが見えるし、全員服は傷だらけだ。


「どこかで休みたいのう」

「そうだな、一度休憩してから魔王城に向かおう」


 俺達は平原を越え、柵を越えて、その先――城下町へといとも簡単に進む。

 その間に何かイベントが起こるでもなく、城壁の手前に広がる城下町にはすんなりと入る事が出来た。


 一応、遠くに見える街道側には簡易な見張り台があるのが、森側には無く、ぶっちゃけ警備はざるだ。

 まぁあのモンスターだらけの森を通る奴なんて魔族でもいないだろうし、安心しきっているのかもな。


「にしてもここか……意外としょぼいな」


 踏み入る街は地方都市くらいだ。

 街には人がそこそこ歩いているが、アイルトンの町や俺の世界の王都に比べたらそこまで多くない。


 だが今は街の景色にうつつを抜かす暇は無い。

 重要な戦いの前に英気を養わないと。


「すいません」

「何だ?」

「近くで宿屋はどこにありますか?」


 俺達が宿の位置は知っている訳がない。

 アマネにも聞いてみたが、お嬢様だったからか、宿屋の位置は知らないようだ。

 だからこうして街行く人に聞くしかない。


「それならあの角を進んだ先にあるぞ」

「ありがとうございます」


 こんなところに人間がいるとは思わないだろうけど……にしても警戒心がないな。

 戦争中とは思えない。


「幸先がいいなアベル」

「このまま行ければいいんですけど……」


 そうこう話しつつも、俺達は言われた通りの道を曲がり、宿屋へと向かった。


 ◇◇◇


「さて、では予定を確認する」


 時刻は既に夜。

 宿屋にはすんなりと入ることが出来た。

 あの後俺達は服や生活用品を買いそろえ、明日の作戦のために一度寝た。

 そして今は全員で机の上に置かれた手書きの地図を参考に、作戦会議をしている。


「決行はこの後すぐだ」


 キザイアさんは皆の眼を見て話し始める。


「西門近くの下水道から魔王城の地下へと忍び込む」

「バレた場合はどうしますか?」

「一旦退くか、そのまま突き進むかは状況次第だ」

「わかりました」


「地下に入り込んだらそこから一気に最上階まで進む」

「もうここからは後戻りは出来ぬな」

「そういうことだ。アマネ、新魔王のスキルは分かるか?」

「……わからない」


 ふーむ。

 アマネが悪いわけじゃないけど、わからないと対策が立てにくい。

 とても厄介だ。


「なら奇襲での一発勝負が望ましいな。いいスキルはあったりするか?」


 キザイアさんは俺を含めた3人を見る。


「わしのスキルはそもそも戦闘向きではないぞ」


 グルミニアは椅子に深く腰掛けながらそう言う。

 身振りも相まって、「まさにお手上げ」という風だ。


「俺のスキルも奇襲向きじゃないですね」


『絶体真眼』――

 この力を得てから2か月といくらか。

 未だにその力は未知数だ。


 まだ全ての力を知っているとは自分でも思えない。

 現段階では物体の動きをゆっくりと見る『遅緩時間』と相手の魔術を打ち消す『崩壊』の能力だけだ。

 だが、この二つの能力はどちらも防御系の能力だ。

 奇襲には向かない。


「……多分、無理」


 アマネのスキルは生命力を操る、というものだ。

 相手の生命力を暴走させて魔族を倒していたが、流石に新魔王には効かないのだろうか。


「そうか……」

「……ごめん」

「いや、いいのだ」


 キザイアさんはしょんぼりしたアマネの肩を叩く。


「最悪、最後は私が何とかする。信じてくれ」


 キザイアさんはどこか寂し気にそう語る。

 しかし今はその言葉を信じるほかない。

 不安が実を結ばなきゃいいけど……。

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