第44話 世界の成り立ち?
「たああぁぁ!!」
俺は木を蹴り、飛んで――剣を振る。
それによって、
「グオォオオン!!」
舞い上がる血飛沫と共に狼の高い悲鳴が上がった。
――しかし、まだ終わりではない。
「おらあぁ!」
俺はそのまま、矢継ぎ早に剣を他の狼へと振り回す。
確かに狼は早いが、今は俺の方が速いっ!!
――ザシュッ!!
俺の剣撃によって狼の首が飛び、霧散する。
そしてもう一撃を加えようとした所で、
「アベル、少し退け」
グルミニアの声が飛んでくる。
「あぁ!」
その声に従い、一度後方に下がる。
すると、それに合わせて狼達が追いかけてきた。
だが、これこそ俺達の狙いだ!
それに合わせるように、
「『草刃』」
グルミニアは手の平に乗せた葉っぱを、刃へと変え吹き飛ばす――
「ウオオォォン!!」
無数ともいえる葉の手裏剣。
それによって狼達はどんどんと切り裂かれていく。
近づこうにも身体を失い、攻撃しようともその隙すら無い。
狼達にとって地獄の環境――
当然、狼達は、
それを受け、
「引いてくな」
撤退していった。
これで戦いはようやく終わりだ。
しかし……果たしてこれで何度目だ?
1週間ほど森を突き進んでいるが、もう何度もモンスター達の襲撃を受けている。
「ふぅ……大変だな」
俺は倒したフォレストウルフの魔石を食べる。
この森に入ってから、節約のために俺の主食は魔石だ。
そのおかげか気付けば身体能力は跳ねあがっていた。
こうして剣だけで狼を倒せるくらいには。
とは言っても。
もぐもぐ……うぐっ!
くそ……やっぱり何度食べてもおいしく無い……。
どうにかおいしく食べれないだろうか。
鞄の中を見ても、あるのは保存食と魔石だけ。
調理のしようがない。
そして動物を捕まえる、という考えに至るが……
「そういえば、この森に普通の動物はいないのかな?」
不思議と、この森に入ってから出会ったのはモンスターだけだ。
普通兎とか猪とかいてもいいんじゃないか?
「モンスターに駆逐されたのだろうな」
キザイアさんはそう言う。
うん、まぁそんなところだろうとは思っていた。
でも、
「それだと、モンスターって何食べてるんですかね?」
「それはよくわからん」
キザイアさんは肩をすくめる。
この事については俺も分からないし、アマネもアニも分からない。
だが、グルミニアは違った。
「わしはこの世界のエネルギーを貰っていると師匠から聞いておる」
「どういうことだ?」
「モンスターは遥か昔からこの世界にいたらしい。言ってしまえば先住民みたいなものじゃ」
グルミニアは頭から記憶を漁り、話し始める。
「そこに神々が現れ、始祖龍にこの世界を奪わせ、人間を支配階級にさせたらしい」
「じゃあ人間よりモンスターの方が先にいたのか?」
「そういうことになるの」
「それならモンスターを作ったのは誰なんだ?」
「それは……わからん。だからこの世界なんじゃよ」
神では無く、世界がモンスターを作った……か。
俺にはあまり分からない話だな。
「始祖龍に聞けばよかったんじゃないのか?」
「モンスターからこの世界を奪いましたか?なんて聞けぬわ」
それもそうだな。
これから新魔王を討伐しようって時に、命を無駄には出来ないからな。
「しかしこの旅が終われば再度聞きに行くさ」
グルミニアはどこか楽しそうだ。
「死ぬなよグルミニア」
「もちろんじゃ」
おもしろい伝説も聞けたし、この話はここらで終わりだな。
「キザイアさん後どれ程ですか?」
俺は地図を広げるキザイアさんに話しかける。
「そろそろ半分だ」
おぉ。
この森を超えれば魔王城のすぐふもとだから、そうすれば新魔王まではすぐだ。
……よくやく旅の終わりが見えてきたな。
「しかしどうやって魔王城に忍び込むかだな……」
「強行突破は無理でしょうし……」
う~ん、悩むな。
「……下水道」
アマネは悩む俺とキザイアさんを見てくる。
「下水道?」
「……魔王城。……地下にある」
アマネは元々住んでいたからな。
今まで聞かなかったこと自体がおかしい事かも知れない。
「それは本当か!?」
「……うん」
俺はアマネの頭を撫でた。




