表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

41/116

第35話 衝撃

「ふむふむ、なるほどなるほど。この先で検問か、面倒じゃのー」

「中々に厄介であるな」


 俺達は魔族の男から、大事な情報を得た。

 どうやらこの先で大規模な検問を行っているそうだ。

 この情報を聞き出せたのは大きいだろう。


「……ゥ、うゥ……」


 ……しかしその情報源はげんなりしていた。

 彼の服は無く、顔はアザでパンパンにふくれ上がっている。

 更に体中を植物の縄で縛られ、巨大な植物の上から蔦で吊るされている。


 ……正直かわいそうだ。

 何があったかは、思い出したくない……。


 グルミニアとキザイアさんは検問について話し合っているが、その場で立ちすくんでいた俺と、後から来たアマネはその光景にただただ恐怖するしかなかった。

 ……あの二人は敵に回しちゃいけない。

 俺とアマネ、そしてアニもそれをひしひしと感じただろう。


「しかしどうする? 港まではまだかなりあるぞ」

「無理には行くべきではないじゃろう」


 俺達は少数だから出来るだけ戦闘は避けたい。

 そのためにはどうするべきか。


 考え話し込む俺達に、


「……ドラゴン」


 アマネが一つの案を出した。


「どうかしたのか?」

「……もしかしたら。……近くに始祖龍の洞窟」

「えぇ!? 本当!?」


 始祖龍!?

 まさか、この近くにいるのか?


 始祖龍――

 それは神々がこの世界に現れた際に、人界の管理者として神々に作り出された存在だ。

 その存在は強力で一匹で国を一つ落とせる程と言われている。

 しかしその数は6匹しかいないし、なにより始祖龍自体どこにいるかなんて誰もわからない。


「確かにこの近辺に洞窟があるはずじゃ。しかし……いや、あの洞窟はここ数百年立ち入った者はいないはずじゃ。それならいる可能性もある」


 数百年誰も立ち入っていない洞窟なんて、まるでおとぎ話の舞台みたいだな。

 確かにドラゴンが潜んでいそうではある。


「もしグルミニアの言う通りいたとして、始祖龍に会ってどうするのだアマネ」

「……がんばって、連れていってもらう」


 始祖龍と交渉するのか!?

 国と同等の存在と対等に渡り合えるのか?


「難しそうじゃが……ははは、面白い! わしは賛成じゃ!」

「確かに始祖龍にお目にかかれるなんてそうそうないからな。交渉が失敗したとして無価値では無かろう」

「まぁ俺も始祖龍見てみたいな、普通に気になるし」

「……わかった」


 俺達の次の目的地は決まった。

 それは始祖龍が潜んでいる可能性の高い洞窟。


 果たして上手くいくかは分からないが、善は急げだ。

 俺達はすぐさま馬車に乗り込んだ。


 そしてその馬車の中、


「そういえば、なんでグルミニアは俺に魔石をくれたんだ?」


 俺はグルミニアに一つの質問をした。


 これは疑問だ。

 それこそ魔石を食べる人間なんかいないし、食べて強くなることを何故知っているんだ?


「……そうじゃな。何といえばよいのか……」


 グルミニアは言いにくそうだ。


「構わないよ。気にしないでくれ」

「驚かないでほしいが――」


「お主は魔族なんじゃ」


 ……え?

 何を言っているんだグルミニアは。


「正確に言うと魔族と人間のハーフなんじゃ」

「いや! 俺は人間ですよ!」

「お主の片方の翼、もしかしたら思ったが間違いない」


 確かに翼が生えるのはどう考えてもおかしい。

 ……それも片方なんて。


「……それにな、魔石を食べて効果があるのはハーフだけなんじゃよ」

「なっ!?」


「魔石とはモンスターの生命力が結晶化したもの……じゃから必然的に魔力の塊なのじゃ。それを杖無しでは魔力を扱えん人間が食べたところで意味は無く、逆に魔力を容易に扱えすぎる魔族が食べれば、拒絶反応を起こし身体の中で暴走してしまうのじゃ」

「お、俺はそのどちらでもない……。とういう事は……」


「そうじゃ。お主はその中間で、魔石の魔力を絶妙に取り込めておる。間違いなく――ハーフじゃ」

「そ……そんな!? じゃあカレンは!?」

「カレン? そやつの事は知らん」


 俺は衝撃にあぜんとしてしまう。

 そして同時に今までの色んな記憶がフラッシュバックしてくる。


 カインとの戦い。

 アマネと俺を襲った魔族との戦い。

 そして……カインとの戦いの後、病院から帰る俺に謎の少女が言った言葉――『お主、魔族であろう?』


 はは、そうだ。

 ……始めから。

 始めから俺は半分人間じゃ無かったんだ。


 絵本では必ず悪役として描かれる魔族。

 ずっと悪い存在だと教えられてきた魔族。

 そして今まで何度か戦ってきた魔族。

 俺にはその血が半分流れているんだ……。


「……ダメ」


 現実にうちのめされ馬車にへたりこむ俺。

 そんな俺を守ろうと、アマネは俺とグルミニアの間に割り込む。


「大丈夫じゃアマネ。どうこうするつもりはない」

「私も先程の戦いで信用したぞ」

「……本当?」


 グルミニアとキザイアさんは信用していると口にし、アマネは二人に真意を問う。


 たとえハーフであったとしても、皆は俺の味方でいてくれる。

 ……ありがとう。


「あぁ本当じゃ。それに、そんな事を言い始めたらアマネの出自も人間かどうか分からぬであろう」

「……っ!!」

「じゃがそんな事今さらじゃ。だってわしらは"仲間"じゃろ」


 同時に襲い掛かる感謝と衝撃――

 クッションの事などとうに忘れていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ