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第30話 グリーンフォレストへの旅路

「それにしてもすごい剣技でした」


 間違いなくこの人は剣士の中では最強クラスだろう。

 剣技なら俺の『絶体真眼』も効かないし、この眼や魔石を食べた影響があるとはいえ……体術では勝てない。

 おそらく一番俺にとっては相性が悪い相手――

 それがこれから味方になるなんて、なんて心強いんだ!


「褒めても何も出ないぞ」


 キザイアさんはすごくうれしそうだ。


「それにしてもアベル君のスキルについては概ねわかったが、アマネ君のスキルはどういったものなのだ?」


 確かにこれについては俺も気にはなる。

 アマネが敵を爆発させるところは2回見た。

 確実にそれに関したものだろう。


「……生命力」

「生命力? どういうことだ?」

「……生命力を、操れる。……それも自由に」


 ……ッ!!

 なんだって!?

 それって最強じゃないか。


「……でも、私、未熟。……だから、あれくらいしか……できない」


 そうなのか。

 でもあれだけで充分強すぎる様な気が……。


「ほほう。仲間としては最高だな!」

「やっぱりアマネはすごいね!」


 と、俺達が話し合っている所へ、


「剣士長ー!」


 兵士の一人が馬車に乗ってやって来た。


「おぉ来たか」

「はい。こちらが頼まれていた馬車です、剣士長」


 兵士は馬車から降りて敬礼する。


 俺達はこれから馬車で移動する。

 旅路は長い。

 徒歩で行くのは不可能だろうからな。


「よし、では向かうとするか」

「はい」「……ん」


 俺達は馬車へと乗り込んだ。

 手綱を握るのはキザイアさん。

 俺とカレンは貨物車だ。


 次に向かうはグリーンフォレスト――

 遥か太古からドルイド達が魔術を高め合ってきた場所……らしい。

 そしてそんな場所に俺達が向かう目的は唯一つ。

 神童と呼ばれるドルイドを仲間に引き入れる為だ。


 しかし、元いた世界でも似たような地名を聞いたことがあるが……何て名前だったっけ。

 何とかリバー……いや、何とかフォレスト……何だっけ。


「……っつぅ」


 思い出そうと顎に手を当てようとした瞬間、腕の筋肉に痛みが走る。

 

 俺はあの後、一本の剣を貰い、少しの剣術も教えてもらった。

 これはその時の筋肉痛だ。


「……大丈夫?」

「うん、大丈夫だよ……って、心配してくれた!?」

「……うん」


 こ、これは、俺に心を開いてきてるって事でいいんだよな!?

 もしそうなら……ものすごく嬉しいな。    


 ◇◇◇


 アイルトンを出た俺達はいくつか村を経由し、グリーンフォレストへと向かった。


 その道中。

 俺は様々のものを見た。

 紫色をした謎の鉱石の巨岩や、旅をするスモールワイバーンの群れ。

 王都で生まれ育った俺には、そのどれも刺激的で心が踊る。


 でも今はグリーンフォレストに向かっている途中だ。

 いちいち寄り道をしてる暇は無い。

 しかし……


「……かわいい」


 アマネは道中で出会ったモンスターを抱きしめていた――青いスライムを。


「はぁ……」


 スライム自体はかわいい。

 実際ペットにする人もいない訳じゃない。


 でもいつもの俺なら、

 面倒見れるの? 返してきなさい!

 ……とか言うかも知れない。


 しかし俺はアマネを許すことにした。

 一つに、スライムを抱くアマネはひいき目に見ても可愛いからだ。

 透き通るような金の髪と蒼い瞳をした、人形のような少女がスライムを抱きしめているのだ。

 もはやスライムより、アマネの方が可愛い。


 そしてもう一つは……アマネが嬉しそうだからだ。

 アマネという少女の、今までの境遇や感情の乏しさを考えるだけで、涙が出てくる。

 そんなアマネが嬉しそうにしているのは、俺にとっても並々ならぬ感動があった。


「名前は何にするんだ?」

「……うーん」


 アマネは悩み始めた。

 こうして下を向いてる姿を見ると、改めてこの子がまだまだ子供であることが見て取れる。


「ふっと浮かんだ名前でもいいんじゃない?」


 馬を操っていたキザイアさんが提案した。


「……じゃあ。……アベル2号」


 ……アベル2号?

 な、なんだと!?

 俺の2号機だったのか、このスライムは!?


「まぁ名前はいいとして……少し長くない?」


 ペットの名前って、こう……ニャンニャンとかわんちゅうとか、短くて呼びやすい名前じゃないか?


「……」


 おおっと。

 アマネは黙ってしまった。

 ……アベル2号って名前、気に入ってたのか?


「じゃあ、略してアニ、とかでどうだ?」


 俺は提案をしてみる。


「……うん」


 よかった。

 アマネは首を縦に振ってくれた。

 それにキザイアさんは、そもそもどうでもよさそうだ。 


「……よろしくね。アニ」


 どうやら予期せぬ仲間が一人……いや一匹か?

 まぁいいや。

 取り合えず増えたようだ。

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