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第15話 放課後

 俺が再びグラウンドの地面に倒れてから、しばらく経った。

 既に6限目も終わり、ブレイヴ先生は帰った。

 多分ホームルームも終わってるだろうな。


「足も腕も……上がらない」


 腰を落としたまま剣を振り続けるのは存外につらい。

 途中から足はプルプルしてくるし、腕なんて鉄の塊のように重くなってしまう。

 しかし、よくもこんな厳しい授業を乗り切った。

 自分を褒めてあげたい。


「アベル、こんな所にいたのね」


 寝転がる俺にかけられた声は女性のもの。

 顔を向けてみれば、すらっとした生足が目に入る。

 手触りのよさそうな滑らかな肌をしていて、健康的な肉はよく引き締まっている。

 これは……


「オリヴィア?」

「そうよ。ちゃんと顔を見なさい」

「うん」


 俺は視線を上にあげていく。

 白いソックスから脛、膝そして太ももへ。

 更にその上へと視線を上げた時、俺の思考は固まってしまった――


「どうしたの?」

「……ごめん」


 俺はそっと目を閉じた。

 腕は上がらないし、元気も残ってないからこうするしかない。


「何なの? どうしたのよアベル」


 オリヴィアの声のする位置が低くなった。

 なので再度、眼を開いてみた。


 するとオリヴィアは俺の目の前でしゃがみ込んでいた。

 オリヴィアは足を閉じてるとはいえ、今の俺は寝転んでいるのだ、見えない訳が無い。


「オリヴィア……見えてるよ」

「ん……? ダメ、見ないで!!」


 オリヴィアはとっさに立ち上がって、スカートの前を抑える。

 そして恥ずかしそうに顔を伏せて赤らめた。


「そ、その……見ちゃった?」

「うん。オリヴィアって結構不用心だよね」

「い、いや……アベルだからよ」


 もじもじと恥ずかしがるオリヴィアの姿は――可愛い。

 気の利いた台詞の一つでも返してあげたいけど、今の俺の体力では無理そうだ。


「……ありがとうオリヴィア。それとごめんだけど、起こしてもらっていいかな?」

「あっ、ごめんねっ!」


 オリヴィアは俺の手を一生懸命引っ張って、身体を起こしてくれた。

 それによって、足はまだ震えるがなんとか立ち上がれた。


「それにしてもオリヴィアは、何でわざわざ来てくれたの?」

「カレンちゃんが帰り遅くなるらしくて、その伝言を頼まれたのよ」


 先に帰ってて欲しいって事か。


「そうなんだ……じゃあ図書館行こうかな」

「図書館?」

「うん。学院ダンジョンの情報とか何かあればなーって思って」


 どうせダンジョンにもぐる前に行こうとは思ってたし、ならこの時間の間に行っておこうか。


「それ、私も行っていい?」

「もちろん」


 俺とオリヴィアはそうして図書館へと向かい始めた。


 ◇◇◇


 図書館があるのは中央本館の一階。

 職員室を奥に進んだ先にある。

 グラウンドからそれ程遠くはないが、俺の疲れもあってか、予想よりも時間がかかってしまった。


「おおっ、結構すごいな」


 扉を開いて入った図書館はとても広かった。

 流石バルザール魔術学院だな。


「すいません。学院ダンジョンについての本ってどこにありますか」


 俺は入り口近くにある受付の少女に話しかけた。


 受付の子は茶髪の髪を三つ編みのお下げにした子で、大人しそうな雰囲気や眼鏡の存在がとても図書館に似合っている。


「それなら、あちらになります。あのっ案内しますよ」


 受付の少女はそう笑って先導してくれる。

 俺達は素直についていった。


「ここ、ですね……多分あれかな」


 少女は近くの踏み台を持ってきて本棚の側に置いた。

 そしてその上に乗り、本に手を伸ばした。

 すると俺の眼前に映るのは少女の白い足。


 ……彼女の足も綺麗だな。

 図書館の受付らしい白い肌は、図書館の薄暗さも相まってどこか艶めかしく思える。

 その肉質はとても柔らかそうで、先程のオリヴィアの引き締まった足とはまた違った趣がある。


「……アベル、何考えてるの?」


 少女の足に見惚れていた俺に、オリヴィアがジト目でそう言って来た。


「え!? い、いや、綺麗な足をしてるなって!」


 そう俺が返してしまったのがいけなかった――


「わ、私ですかっ!?」


 少女はとっさに俺達の方に振り返る。

 そして完全に踏み台の上でバランスを崩してしまった。


「きゃああ!!」


 少女は悲鳴を上げながら踏み台から落ちてくる。


 突然の事だ。

 通常の人なら驚いているうちに彼女は顔から地面に落ちてしまうだろう。

 ……だが、俺には見える!


 腕は上がらないし、足に力も入らない。

 でも俺にはこの身体がある。

 なら、せめてクッションになる――


「うおおぉぉ!!」


 そして俺は彼女の下敷きとなるために無理矢理ダイブした。


 ――ドサッッ!!


 彼女の全体重が俺の腹にのしかかり、強烈な痛みを伝える。

 そしてすぐに背中が床にうちつけられた強力な痛みが襲い掛かり……死にそうな程痛い。

 俺の腹部は痛みのサンドイッチ状態だ。

 だが痛みを感じる事からも分かるように……どうやら俺は彼女の救出に成功したようだ。


「うぅ……大丈夫?」


 そう俺が発して身体を少し動かそうとした瞬間、俺は痛み以外の感触を手に感じた。

 その感触は柔らかくも弾力があり、手が溶け込んでしまいになる。

 一言でいうなら、つい揉んでしまいたくなるような感触だ。


 ……これはもしかして?

 この感触は"アレ"ではないのか?

 俺は確認の為に眼を開こうとするが――


 ――ガンッ!


 と本棚から落ちてきた本が頭にぶつかった。

 更にその勢いで後頭部を床にぶつけ、俺の意識は途絶えってしまった――

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