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第100話 宮殿の魔術師

「『再生リジェネート』」

「……ぐっ!」

「大丈夫だ。痛いのは、生きている証拠だ」


 回復魔術をかけた俺はその傷口に包帯を巻いていく。


 あれからすぐに大広間には衛兵たちが駆け付けた。

 あれだけ盛大に窓が割れる音と悲鳴が響いたんだ、それも当然だろう。

 死体は衛兵たちが安置所へと運び、怪我人は生き残った魔術師達が別室で回復魔術をかけていた。


「お兄様、こちらは終わりました」


 カレンは額の汗を拭いながら、こちらを振り向いた。


「俺も今終わったところだよ、カレン」

「なら、これで全員ですね。ふぅ……少し疲れました」


 カレンはそう言うと壁にもたれかかった。

 まぁこれだけの人数に回復魔術をかけたのだ。

 仕方ないだろう。


 実際、俺も結構疲れている。

 この場ですぐに横になりたいくらいだ。


「……オリヴィア先輩、大丈夫でしょうか?」

「大丈夫だとは思うけど……時間はかかるだろうね」


 オリヴィアはオーデの死体を連れ、衛兵と共に死体安置所へと向かった。


 あれだけ敵対していたとはいえ、オーデはオリヴィアにとっても大切な家族だったのだろう。

 だからこそ安置所に行ったのだろうし……涙も流したのだろう。


「……そっとしておきますか?」

「確かに、今日くらいは一人になりたいだろうし、そうしようか」

「では、今夜はここで寝泊まりしましょうか」

「うん。……あ、俺アマネに伝えてくるよ」


 探しに行くと言って、俺とカレンはアマネを宿に置いていったままだ。

 連絡くらいは入れておくべきだろう。


「それなら、私も……」


 俺について来るために立ち上がったカレンは、疲れからかふらついてしまった。


「……っと、大丈夫?」


 俺はとっさの所でカレンを受け止めた。

 まだ余力が残っていて助かった。


「やっぱり、俺一人で行くよ。それより別室のグルミニアに伝えておいて」

「……はい」


 ◇◇◇


 コンコン。

 と俺は扉をノックした。


「……どーぞ」

「入るよ」


 俺は扉を開いて部屋の中に入った。

 部屋では、アマネがまだベッドの上で本を読んでいた。

 しかし、俺を見るなり


「……アベル、血まみれ」


 眠たげな瞳を大きく見開き、驚いた表情を見せた。


「宮殿の中で魔族の襲撃にあったんだ。一応みんなは無事だよ」


 一応俺達には何事も無かった。

 俺がこけて少しあごを打ったくらいだ。


 しかし無事なのは身体だけ。

 精神的には、かなりきている。


「……なら、よかった」

「あぁ。でもオリヴィアが心を痛めてるんだ」

「……何か、あったの?」

「……オリヴィアの兄が死んだんだ」

「……そう」


 アマネはオリヴィアに同情したのか、目に見えて落ち込んでいる。


 アマネは家族を失う辛さをよく知っているはずだ。

 何があったのかは俺には分からないが、魔王城からの帰りの船の上で家族の有無を聞いた俺に、ただ一言「いない」とだけ言っていた。

 アマネの境遇も考えれば、殺されたとみてまず間違いないだろう。


「アマネ。オリヴィアが心配?」

「……うん」

「大丈夫。オリヴィアは強いよ」


 オリヴィアは少し感情的だし、年頃の女の子らしい一面もある。

 でも、馬鹿にされた俺を助けてくれたし、優しく強い心の持ち主である事には違いない。


「……私も、そう思う。……それに……」

「それに?」

「……もしもの、時は。……アベルが、助けてくれる」

「あぁ、もちろんだ」

「……オリヴィアが、困ったら。……助けて、あげて」

「必ず助けるさ。……じゃあ俺はカレンの元に戻るよ」

「……おやすみ、アベル」

「おやすみ、アマネ」


 ◇◇◇


「……ル……ベル」


 ん?

 誰かが俺を呼んでいるのか?


 声の主は俺の肩をゆらしてくる。

 俺を起こそうとしてるんだな。


「……アベル、起きて」

「……ん? だれ?」


 俺はまぶたを開き、声の主の方を見た。

 そして、俺の紅い瞳に映るのは、端正な顔をした赤い髪の女性――オリヴィアだ。


「オリヴィアか……おはよう」

「おはよう。朝ご飯が出来たから呼びに来たのよ」

「あ、わかったよ。すぐ行くね」

「早めにね」


 オリヴィアはそう言うと俺が寝ていた部屋から出て行った。

 俺はそれを確認し、洗面所へと向かった。


 何だか昨夜に比べて元気だったな。

 オリヴィアなりに立ち直ったのか……それとも、そう見せているのか。

 どちらにせよ、塞ぎこむよりはいい事だ。


 俺はそんな事を考えながら、朝ご飯を食べに宮殿の一部屋へと向かった。


「おはよう」

「おはようございますお兄様」

「……もぐ、もぐ。おはよう、アベル」


 その部屋の机には既に朝食が並び、オリヴィアの他にもカレンとグルミニアが席についている。


「皆、今日はどうするんだ?」


 俺は席につきながらも今日の予定を皆に聞く。


 本来なら今日の夕方ごろに帰る予定だった。

 でも、昨夜色々とあったし、皆の疲れもたまっているだろう。


「……ハルデンベルクさんを呼んで、もう帰りましょ」


 オリヴィアは朝食を口に運びながらそう言った。


「……いいのか?」

「えぇもちろん」


 オリヴィアは落ち着いた様子だ。

 オーデや魔術師達について色々と忙しいとは思うが、オリヴィアがそう判断したのなら、部外者の俺達はそれに従うほかあるまい。


 そして俺達はその後。

 一度宿屋に向かいアマネと合流し、魔石車で王都へと帰り始めた。


 帰りの魔石車の中、俺は自分なりに今回の事件の事を思い返してみた。

 そうするといつくか気付いたことが俺にはある。


 一つはオリヴィアの事だ。

 カインからの果たし状にかけられた魔族の魔術を、何でオリヴィアが知っていたのか。

 そして何故オリヴィアが宮殿への誘いに驚いたのか。

 それは彼女が魔族狩りの機関となった宮廷魔術師の家系だったからだ。

 ……それを知る代償は血と死体だったけど。


 さらにもう一つは魔族の数。

 シモンはイスカリオーテの他に二人の魔族を見たと言っていた。

 しかしそれは人工魔族を作っていた純粋な魔族だけの話で、人工魔族たちはカインやシモンの様に野に放たれている。


 だから人工魔族も含めた、魔族の正確な数は分からない。

 しかし大広間に放ってきた大量の漆黒の槍は、一人二人で放てるような量じゃない。

 少なくとも五人はいたと見て間違いないだろう。


 そんな事を考えるうちに時は一日経ち、各々が胸中に様々な事を秘めながらも、俺達はようやく王都に帰って来た。



 ――――――――――



 ◆アベル・マミヤ、第287位


 ◇スキル『絶対真眼』

 ・『崩壊』

 ・『遅緩時間』


 ◇真祖の力

 ・『神殺槍』

 ・『魔剣』


 ◇加護

 ・『縁の加護』

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