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第95話 既に三日目

「ほう、魔力増幅器か。意味あるのか?」

「使ってみますか?」

「もちろんじゃ」


 グルミニアは店員から謎の水晶玉を受け取る。

 そしてそれに魔力をこめ始めた。


 俺達は昼飯を食べた後。

 好奇心もあって、近くにあった魔道具店へと足を運んだ。


 魔導具というのは、魔力や魔石を用いた道具の事で、生活を豊かにしてくれる道具だ。

 自宅の明かりでもある魔石灯や、この街の街頭なんかも魔導具の一種だ。

 そしてそんな魔道具を目にして、魔術師としての血が騒ぐのか、皆は店に入るなり色々と物色し始めた。


 そんな中、俺はオリヴィアに少し聞きたい事があった。

 昨日、宮廷魔術師達が話していた事についてだ。

 次期宮廷長がどうだの、オーデがどうだの……結局その事を考えていたせいで、俺は寝るのが一時間ほど遅くなった。

 そして、その一時間で考えた質問をオリヴィアにぶつける。


「ねぇオリヴィア」

「……ん? どうしたのアベル」

「オリヴィアってすごい身分だったりする?」


 確信は突かない質問。

 もし聞いてはいけない質問だった場合、問題になる事を避けるためだ。


「そそそ、そんな事ないわよ!?」


 オリヴィアは手をぶんぶん振り、必死に否定する。

 これは……当たってるな。

 俺もそうだけど、こういう時分かり易い反応をしてくれると、助かる。


 だけど、これだけでは決め手に欠ける。

 ただオリヴィアがすごい身分って事が分かっただけだ。


「て、てゆうか、急になんなのよ」

「……前に家に行ったことがあって、その時思ったんだ」

「あぁ、そういう事!」


 オリヴィアは何故か安心したような表情を受かべる。

 まるで"王都にある"家で良かった、という風に。


 ……おそらく、当たりだ。

 オリヴィアはこの街と何らかの関係がある。

 そして、宮廷魔術師達とも関わりがあるのだろう。


「ごめんね。急に変なこと聞いて」

「ホント、急すぎるわよ」


 オリヴィアは可愛く頬を膨らませている。


 ……どうしようか。

 あの魔術師達が言っていた事を追いかけてみるか。

 それとも無視してこの旅行を楽しむか。

 なやま……


「全然増幅されないではないか!」


 グルミニアの怒声が耳に響く。


「そ、そうですか?」

「そうじゃ! これ、ただの水晶じゃろ」

「……っ! そ、そんなことは……っ!」

「わしはこれでもバルザール魔術学院の教員じゃぞ。それくらいは分かるのじゃ」

「えっ!? きょ、教員!? てっきり子供かと……」

「違う! 大人じゃ! 人を見た目で判断しおって……ええい、酒じゃ! 酒を飲みに行くぞ!」


 グルミニアは店から勝手に出ていく。

 俺達も仕方なくその後を追って出ていった。


 ◇◇◇



「ふぅ……今日も楽しかったけど、疲れたな……」

 俺は"レモン水"の入ったコップを机に置く。

 窓の外を見て見ると、綺麗な満月が夜空に浮かんでいる。


 あの後。

 グルミニアに引っ張られる様にして様々な店を回り、なんだかんだありつつも、時刻は夜になった。

 既に俺達は部屋に帰って来ている。


「そろそろ皆、寝たかな……」


 自室に帰って来てから、かなりの時間が経った。

 もう、夜も深い。

 俺も段々と眠くなってきた。

 しかし、腰を上げて立ち上がった。

 そして杖を手に取り、


「『闇形成ダークシェイプ』」


 魔族の魔術によって、俺は漆黒のローブを作る。


「……よし、行くか」


 俺はそれを着て、部屋の扉を開いた。


「……よし、誰もいないな」


 廊下には誰もいない。

 だから廊下を抜け、階段を降り、宿から外へと出た。


 そして目的の場所へと向かい……たかったのだが、俺の足は宿のすぐ外で止まってしまった。

 何故なら宿のすぐ側には、俺の良く見慣れた少女が一人、立っていたからだ。


 この暗い月夜の下、闇を切り裂くような美しさを放つ少女。

 彼女は夜風になびく透き通る金の髪に、引き込まれるような澄んだ蒼い瞳をしている。

 それに寸分の狂いも無く整った顔付きは、この暗闇にどこか調和がとれている。


「……っ」


 一瞬、彼女の美しさに引き込まれてしまった。

 ……だが俺にも用事がある。

 適当な会話でも交わして、宿に戻って貰わなければならない。


「……アマネ、どうしてここに」

「……昼間。……オリヴィアに、話してた」

「そうか……。見てたのか」

「……うん」


 アマネは首を縦に振る。

 その際にツインテールが揺れ、満月の光を受け、綺麗に輝く。


「でも、何で外に出るってわかったんだ?」

「……勘。……すぐ、顔突っ込む」

「はは……」


 お見通し、って訳か……。


「じゃあ、俺が今からどこに行くかはわかる?」

「……ううん」


 アマネは首を横に振る。

 否定だ。


「なら……」

「行く」


 アマネはすぐに答えた。

 その美しい瞳は真っ直ぐと俺を見つめている。


 これ以上、何かを語るのは無意味だろうな。


「……ついて来てくれ」


 最後にそれだけを伝え、俺は宮殿へと歩き始めた。

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