第93話 到着
「んー疲れたなー」
俺は貨物車から降りて、一度身体を伸ばす。
「ようやく着いたわね」
オリヴィアも俺の横で背伸びしている。
オリヴィアの言う通り、ようやく俺達は宮殿のある町――魔術都市シェルブールに辿り着いたのだ。
今は魔石車を止めた倉庫に俺達はいる。
既に時刻は夕方。
昨日の夜は道中にあった町で休憩したが、今日はここまで一直線だった。
だからものすごく疲れている。
「よし、じゃあ宿屋に行くかの」
「あぁ」
俺達は宿屋を探しに町を歩き始めた。
宮殿のある町並みはとても綺麗だった。
古い石造りの建物が沢山並んでいて、その間にちらほらと煌びやかで豪華な建物がある。
街路には白い光を仄かに放つ街頭があって、街を照らしている。
でもこの街並みにも、俺には見覚えがある。
200年前に来ていたからな。
でも、当時よりも今の方が、味があって俺は好きだな。
「ここでよいか?」
そんな建物の一つ。
宿屋の看板がかけられた建物に俺達は止まった。
ここなら倉庫もそれほど遠くないし、観光だけなら問題ないだろう。
「いいんじゃないか」
皆もこここで賛成のようで、俺達はその宿屋へと入った。
「いらっしゃいませ。何名様でしょうか?」
「5人じゃ」
「はい、少々お待ちください」
受付の人は、おそらく客の情報を書いているであろう紙を確認する。
「3部屋なら開いておりますね」
「なら、3部屋ともお願いするのじゃ」
「わかりました、ではこちらの鍵になりますね」
そういうと受付の人は、鍵を3つ取り出し、机の上に置いた。
「全て3階になりますので、そちらの階段をお使いください」
「わかったのじゃ」
俺達は鍵を3つとも受け取り、階段を登って行った。
その後俺達は、3つとも部屋を確認した。
中には心地よさそうなベッドに、高価そうな机にイスがあるだけで、家具自体や部屋にこれといった違いがある訳では無かった。
「2、2、1でわかれようか」
だから俺のこの提案は正しいものだと思う。
部屋が広かったりすれば人数を増やすべきだろうし、狭ければ減らすべきだ。
だが今回はみんな同じ部屋だから、これは正しいはずだ。
しかし──
「なら私はお兄様と、ですね」
カレンにとっては正しくなかったようだ。
「え!? 俺が一人じゃないの!?」
「兄妹ですからっ!」
カレンは俺の右腕に抱き着いてきた。
そんな俺達を見て、
「……立候補」
アマネが左腕に抱き着いてきた。
「ちょっと、二人共!?」
「何してるのよアベル!?」
オリヴィアがその様子に驚いている。
「いや、悪いのは俺じゃ無くない!?」
「まぁまぁ落ち着くのじゃアベル」
「これ、俺のせいなの!?」
グルミニアは完全に俺をいじりにきたな。
「ならわしが一人、残り4人でどうじゃ?」
「……いや、何の解決にもなってないからな」
「なら私とお兄様で二人、残り三人で完璧ではないでしょうか?」
「……カレンと、私。……入れ替えれば、完璧」
カレンもアマネも、完璧なのは魔術だけのようだな……はは。
「うぅ……カレンちゃんもハルデンベルクさんも……」
「オリヴィアも交ざりたいなら交ざればどうじゃ? よいのか、とられるぞ?」
「うぐっ! わ、私だって……私だって!」
「待って!! それは抱き着くんじゃなくて──」
──タックルだっ!
「ごふっ!!」
「ご、ごめんアベルっ!」
俺達の議論はその後も続いた。
それは下らない冗談をおり交ぜつつも、かなり長い話し合いになった。
そして結局。
話し合いの結果として、カレンとオリヴィアで一部屋、アマネとグルミニアで一部屋、そして俺一人で一部屋となった。
……最初からこれで良かったのでは?
話し合いの意味とは?
そんな事を考えつつも、俺は眠りについた。




