第92話 魔石車
「よーし、なら出発進行じゃー!」
グルミニアは魔石車のエンジンをかけ、車を王都から出発させた。
「にしても、この魔石車はすごいな」
魔石エンジン自体は結構昔からある技術だ。
でも、こうして陸の上を走る物は今までなかった。
魔石エンジン自体が大きいし、めちゃくちゃ重い。
だから陸の上では使いにくかったのだろう。
しかし、こうしてミスリルやその他高純度の金属を使う事によって、従来の木製馬車よりも頑丈になり、魔石エンジンを問題なく使えるようになったのだろう。
「そうじゃろ、そうじゃろ」
運転席のグルミニアは嬉しそうに頷いている。
「……手伝った」
アマネはグルミニアに抗議した。
当然だろうな。
この魔石車は運転席にも貨物車にも、ランクの高い金属が使われている。
よく見れば中にはミスリルとの合金もあったりするし、こんなの余程手練れの錬金術師でなければ不可能だろう。
そしてグルミニアの知り合いの錬金術師といえば……アマネしか思いつかない。
「これ作るの、二人でどれくらいかかったの」
俺は貨物車の方から運転席のグルミニアへと、聞いてみた。
「数か月ってとこかの」
「結構かかってるんだな」
「そうじゃぞ。でもこうして使う機会が出来て良かったのじゃ」
「使ったこと無かったの?」
「少し試運転したっきりじゃ」
そうなのか。
何かに使う目的で作ったのか思ったけど、どうやら違うようだ。
「何で使わないのに、魔石車なんて作ったの?」
「これで一儲けしようとしようとしたんじゃよ……」
「え!?」
確かにこの魔石車ならすぐにでも、馬車に取って代わるかもしれない。
「でも、どうしてしなかったんですか?」
カレンがグルミニアに質問した。
「作るのに錬金術に精通した者がいるんじゃよ」
「……そう」
「ミスリルなんて作れるのはアマネくらいじゃしな」
「……残念」
あーそういう事だったのか。
まぁそれならしょうがないかもな。
「はは、まぁこうして役に立ってくれたし無駄じゃなかったと思うよ」
一応俺は二人をフォローしておいた。
役に立っているのは事実だし、頑張って意味がなかったなんて、なんだか可哀そうだ。
「……確かに」
アマネは俺の言葉に賛同してくれた。
「……金、あっても、グルミニア。……酒しか、買わない」
「別にいいじゃろ! わしは最高級品のワインが飲みたいんじゃ!」
「……酒臭い、やだ」
なんだか……懐かしいなこのやり取りも。
昔、賭場でこんなやり取りを見た覚えがある。
誰一人、200年前と何も変わっていない。
……ただ一つ。
一つだけ違うのは、ここにキザイアさんがいない事だ。
かわりにカレンとオリヴィアはいるけど、彼女達は彼女達。
大切だけど、キザイアさんという空いた隙間を埋めることは出来ない。
でもせっかくの旅だ。
あまり悲しい事は考えないようにしよう。
「そういえば、宮殿にはいつ頃着くの?」
「そうじゃな……」
「明日の夕方くらいになりますね」
悩むグルミニアを助けるように、カレンが教えてくれた。
「結構長いし、きちんと休んでおかないとな」
俺は少し横になることにした。
別に眠るという訳では無いが、目を瞑るだけでも休憩にはなる。
俺は横長のソファに横たわり、身体を休める。
そしてオリヴィアが全然話してない事を思い出して、そちらを見てみると、
「……すぅ……すぅ……」
オリヴィアは既に眠っていた。
「やっぱり楽しみにしてたんだろうな……」
本当は前話に入れようと思っていたのを忘れてました……。
なのでこの話で一話にしておきます。しゅいましぇん(精一杯の媚び声)




