表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
誰にも言えない二つの秘密  作者: 海橋小楢
誰にもいえない二つの秘密:高校編
8/43

ホラー映画はお好きですか(3)--優斗の場合

 俺には二つ、誰にも言ったことがない秘密がある。一つ目は、幼稚園来の幼馴染にもう十年以上恋心を抱き続けていること。もう一つは、俺には人間のステータスが見えるということだ。まてよ、「もらったと嘘をつき、自費で買った映画チケットやギフトカードなどをダシに好きな子を毎週のようにデートに誘っている」というのも合わせると三つだ。それをデートと呼んでいいのか疑問に思う人もいるだろうが、大辞林先生いわく、男女が前もって時間や場所を打ち合わせて会うことはデートである。よって、俺のアレもまごうことなきデートだ。異論は認めない。

 というわけで、俺はデート慣れしている。ドラマなんかで見るような、「めったに見ない私服が眩しくて直視できない」なんていう問題は発生しない。私服なんて、義務教育開始以前から腐るほど見ているからな。それを踏まえたうえで聞いてほしいんだが、麻のズボンにポリエステルのシャツを合わせ、綿製の上着を羽織った凛子は非常に輝いて見える。麻と綿でできたつばの広い帽子が風に飛ばされそうになったのを慌てて抑え、はにかむ笑顔のなんと素晴らしいことか。表示されるステータスが俺の視界を妨げていなければ、間違いなく直視できないまぶしさだ。ありがとうステータス表示。

 さて、さっきの描写から察してもらえるかもしれないが、本日のステータス表示は原材料メインである。日によって、体力ゲージと悪性ステータスが見える日もあれば、親密度と機嫌が表示される日や、相手の装備リストが表示される日もある。ある程度の連続した睡眠でリセットされ、どれが出るかは完全ランダム。当たりはずれが大きいことこの上なく、たいていの場合役に立たない。デートの日なら、「そのトレンチコート似合ってるな」だの、「そのズボンはルイヴィトンの春モデルか。」だのといった洒落た発言をしたかったものだが、まさか「その靴はポリエステル80%なんだね」なんて話をするわけにもいかないだろ? まあ今日なんかマシなほうだから、文句は言うまい。視線の先に十字マークが追尾して離れない日なんて、見ようとするほど見えなくなるという苦行を強いられるんだからな。リセットには平均2~3時間の睡眠が必要なため、学校に行く前にリセットするのはまず不可能だ。視力検査の日にコレが当たった時なんか、病院で精密検査をする羽目になった。


 そんなことを思い出しているうちに、もう映画館についてしまった。幸いなことに今日は視界がありとあらゆる原材料表示でうるさい。映画のスクリーンがろくに見えそうにないので、ホラー映画上映中もそんなに無様をさらさなくて済みそうだ。よかった。

「じゃ、チケット交換しといて! なるべく中央付近で、左右に人のいなそうなとこ。」

凛子がさっそうと購買に駆け出していく。OK、分業ってわけだな。一緒に並びながらこれから見る映画について語ってほしかったが、ホラーに関してはまともな応対ができそうにないし、結果オーライだろう。何か忘れている気もするが、なんだったっけな……?


 自分の失態に気付いたのは、映画館の座席についたあとだった。「はい、これ優斗の分ね」とポップコーンとドリンクを渡されて、手紙にあった驕らせてほしい云々の記述をようやく思い出したのだ。昨晩は悶々とホラー映画への不安と戦っていたせいで手紙を見過ごし、今朝は今朝で原材料表示に気を取られて内容が頭に入っていなかった。再生紙30%の紙だったのは印象に残っていたんだが……まったく、これだから原材料表示モードの日は。そういえば、映画の上映時間は二時間半だったな。やけに長いと思ったから覚えている。予告含めてフルに寝ておけばリセット可能じゃないか。映画におびえずに済んで一石二鳥、よし、これで行こう。


前回あたりから、二人のパートが必ずしも同一時刻じゃなくなり始めています。

一応イントロ終了くらいの気持ちなんですが、今後のサブタイトルのつけ方はどうしましょうね……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ