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誰にも言えない二つの秘密  作者: 海橋小楢
二つの秘密は昔の話:大学編
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今日の天気はノー天気 ーー優斗の場合ーー

 俺には二つ、誰にも言ったことのない秘密があった。一つはもう秘密でもなんでもなくなったが、もう一つは幸か不幸かまだ健在だ。凛子とジョナサンに知られることになったとはいえ、特殊能力についてはまだ他の人に伝えていない。怒ると地震が起こるとかなら伝えたほうがいいだろうが、俺の場合は俺の視界が騒がしくなるだけだ。知られたくないことがバレるケースはあるにせよ、その他で外部に実害を与えることもないだろう。第一、モードのコントロールが効かない以上、信じてもらえるに足る証明ができる日にネタバラシしたい人間に会えることがそうそうないしな。

 ランダム性というのは厄介なもので、いかに便利な能力でも欲しい時に使えないのでは宝の持ち腐れでしかない。というか、基本的に使いたい時に使いたいモードが発動していることがほとんどない。旅館で昆虫の所在地マップがでたり、映画鑑賞時に視界がカラーコードで埋め尽くされたりなんていう迷惑なケースはザラだ。いつも身支度に必要な時間より2時間早く起きているとはいえ、残念ながら一度のリセットで問題が解消するとは限らない。緊張や環境が原因で寝れない時なんかは打つ手なしだ。

 発現を制御できないどころか法則性も見つけられていない以上、ハズレの出る率を下げるためにできるのはモードの全体数の底上げくらいだろう。毒にも薬にもならないモードを増やすことで、相対的にハズレ率を下げようという作戦だ。視界を過度に遮らず、効果範囲が限定的で、かつ心理的にダメージを与えないゲーム画面表示であれば、日常を心安らかに送れるはずだ。おかげで俺は、別に好きでもないスローライフ系ゲームにすっかり詳しくなった。


 その甲斐あってか、最近は自分の持ち物が一覧できるとか、タスク一覧が視界の左端にちらつく程度の日が増えてきた。今日の俺は、ミニマップと天気予報を備えただけのほぼ普通の人間だ。情報処理量が少ないからか、思考も心なしかクリアな気がする。

「おはよう優斗、今日ってそっちも一限あったよね?」

四択事故で一年後輩になってしまった凛子が、窓越しに声をかけてきた。学年が違うとはいえ、同じ学校の同じ校舎にまた通えるのは何とも嬉しい。履修登録期間にリセットを繰り返し、密かに埋めるコマを凛子の時間割に揃えたことはまだ誰にも言っていない新たな秘密だ。

「今日は16時から雨が降るから、傘を持って行った方がいいぞ。」

テレビでは雨の予報なんて出ていなかったが、なんといっても今日の俺は百発百中の気象予報士だ。この情報を有効活用しない手はない。

「ふーん、そっかそっか。いいこと聞いちゃったな。」

凛子は俺のカバンに刺さった折り畳み傘を見ると、ニマニマ笑って家に引っ込んだ。出てきた時に持っていたのは、地味な晴雨兼用の長傘。

「ジョナサンには雨のこと言っちゃダメだからね?」

上目遣いで目配せしてくる凛子は、誰の目にも明らかな企み顔だ。だが、それ以上のことは可愛いということしか俺にはわからなかった。思考がいくらクリアになっても、どうやらない思考回路は働かないらしい。


 結局全てを理解したのは、雨が降り出した後だった。「濡れるはアルバイトに困ります」と情けない顔で現れたジョナサンに当然のように俺の折り畳み傘を貸し出し、流れるように「じゃ、帰ろっか。」と傘を開く幼なじみ。彼女が俺の顔を見ておかしそうに笑うから、俺の鈍感もきっとそう悪いものではないのだろう。

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