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誰にも言えない二つの秘密  作者: 海橋小楢
二つの秘密は昔の話:大学編
42/43

【番外編】言うべきか言わざるべきか、それが問題だ ーー2人の場合

読む前の注意事項:日本家屋にすむ茶色いアイツが出てきます。

 誰にも言ったことのなかった秘密があったのは、今となっては昔の話。入試の真っ只中で選択肢が出て一浪したりもしたものの、最近は四択のキャンセル法を発見したから人生の自由度が上がっている。まあ、タイミングよく目を閉じて5秒待つと選択肢が半透明になってそのまま動けるっていうバグみたいな技だし、ストックできないから次の選択肢が出た瞬間にランダム選択で口が動くっていう不便はあるんだけどね。この仕様は優斗とジョナサンも知っているから、困った時は選択の消化に協力してくれている。選択肢の頭文字を言うと選択されちゃうから、使えない文字がある中で選択の内容を伝えるのはちょっとした言葉遊びみたいだ。

 で、今。明日のスケジュールを組もうと集合した旅館の一室で、私は固まっていた。原因はこれ、今咄嗟にキャンセルした四択の内容。


赤:ねぇ、今何か黒いものが通らなかった?

青:優斗、ゴキブリって英語でなんていうんだっけ。

黄:この部屋って殺虫剤とかあるかな。

緑:画面見てて疲れたから、ちょっと外で運動しない?


私は何も見ていない、見ていないんだけどこの選択肢の出方は確実に奴がこの部屋のどこかにいる。四択の消化はこの際どうでも良いんだけど、姿の見えないGの存在を知ってしまった場合の対処法って何が正解? 解答を探して視線を彷徨わせると、引き攣った表情の優斗が目に入った。



 俺は戦慄していた。今日のモードは、特定のものの上部にカーソルが表示されるというよくあるやつだ。その日何が表示対象なのかは日によってまちまちだが、今日は道すがらずっと蝶やら蟻やらにカーソルが出ていたから、今日はどうやら昆虫である。それも、模様やサイズ感もカーソルの色や大きさでわかるという、利用シーンの分からない補助機能付きだ。

 そして今。壁越しに見えるカーソルは、焦げ茶単色。サイズはおそらく体調4cmくらい、とても嫌な感じだ。

 凛子はと言うと、さっきまでは楽しそうに旅館の装飾を眺めていた。今は強張った表情でキョロキョロしている。さては何か見たな?

「4択か?」

聞くとこくりと頷く。

「『この部屋って殺虫剤とかあるかな。』、というわけで、なんか見えてたりしない?」

「殺虫剤があるかはわからないな。奴らの所在はばっちりわかるぞ。」

「わー複数いるんだ…」

さらに表情をげっそりさせる凛子を、ひとまずやつから遠いところにあるソファに誘導する。特殊能力の所有者同士、阿吽の呼吸で情報を交換できることがあるのは俺だけの特権だ。とはいえ、こういうシーンで発揮できてもあまりうれしくはない。俺は虫が得意ではないから、今回は尚更だ。

「何かあったですか?」

サイズの合う浴衣がないかフロントに聞きに行っていたジョナサンは、帰ってくるなり何かを察したようだ。

「あー、うん、そうだな。お前虫は得意か?」

「Beeなら大丈夫ですが、セミは怖いですよ。」

「その…アレって英語でなんていうんだっけ?」

ソファの上でソワソワしながら凛子が俺に問いかける。

「cockroach…だったか?発音は自信がないが…」

だが、どうやら通じたようだ。ジョナサンの顔色が変わる。

「本物は見たことがないですが、comicではよく出てくるですね! slipper…は旅館のものですから…newspaperが良いですかね? サッチューザイはあまりらしくないですから。」

ジョナサンによるしばしの葛藤。その内容は、どうやらいかに漫画的にやつと戦うかのようだ。そういうのはいいから早く何とかしてくれ。

「…わざと外したりしたら当面口を聞かないからね。」

凛子が釘を刺すと、ジョナサンは神妙に頷いた。


ジョナサンが持ち前の運動能力で大活躍したことにより、二人はその夜安眠できたらしい。騒音に駆けつけた女将に事情を話したことで、罠の増量や薬品の使用を依頼したからだ。その間は、俺が安全を保証した土産物屋や温泉でゆっくり時間を過ごしたから、それなりにリフレッシュもできたというから何よりだ。

 だが、俺は眠れなかった。罠にかかっていようがいなかろうが、なんなら死んだあとですら、カーソルが目にうつり続けたからだ。寝ていない以上、このモードが継続するのは当然の摂理だ。翌日の観光に身に入らなかったことは言うまでもない。

これを最後に長期放置するのことを考えると気が引けて投稿するか悩みましたが、続きを挙げると言った手前上げました。クレームはお手数ですが心の内にそっと留めておいてください。

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