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誰にも言えない二つの秘密  作者: 海橋小楢
誰にもいえない二つの秘密:高校編
37/43

歯車は回り出す  ――凛子の場合

私の伝えた情報のおかげで、捜査は突如として大きく前進した。

「しかし、手紙なんて証拠品にあったか?」

「犯人が持ち去った可能性がありますね。容疑者の家を捜索しましょう。」

「あっ…その手紙、俺が持ってます。」

まあ、その原因の一つは、今まで提供されていた情報がポンコツ過ぎたせいっぽいんだけど…。

「なぜそんな重要な証拠品を今まで出さなかったんだね!?」

「完全に忘れてました。」

「君はその手紙のことを知っていたのかい?」

「手紙…はい、そういえばあったですね。」

「なぜ現場検証や事情聴取のときに話してくれなかったんだ?」

「大変で考えるできなくて、言葉がわかりませんでしたから? ゲンバケンショー?」

聞いていくと、私が家を出た時間と、刺された私の怪我の具合と、犯人がバイクに乗って逃げたって情報と、119番に通報が入った時間しかわかってなかったみたい。うん、そりゃ捜査進まないわな。とりあえず、優斗は大急ぎで証拠品である手紙を取りに行かされた。


「容疑者として上がっている男が、20時半ごろに公園近くのコンビニの監視カメラに写っているんですが、確かサングラスかけてましたよね。」

「ああ、だがバイクの色が証言と違うんだ。」

あまり役に立たない証言者Yが帰ってくるまでの間、警察の人たちは情報を共有することにしたようだ。ちらちら私の方を見てくるのは、多分情報に期待しているんだろう。そして、どうも今回その期待に沿えそうな気がする。

「もしかして、監視カメラに写ってたバイクの色、白か銀じゃないですか?」

どんな見間違いだよ、と思うかもしれない。でも私は知っている、優斗のいう「黄色かった」は信用しちゃいけないってことを。いつもってわけじゃないけど、時々あいつは白とか銀色とかの薄い色のことを黄色だと言い張る。眼科でいくら調べても問題は見つからないんだけど、見間違いにしては頻度が高いから、目になにか問題があるんじゃないかと心配している。

「…どういうことだね?」


赤:あっ、すみません。なんでもないです。

青:ライトの色とかで見間違えたんじゃないかと思うんです。

黄:今手紙を取りに行っている幼馴染、昔から時々白とか銀色のことが別の色に見えることがあるっぽくて。

緑:優斗、昔から色の薄いものを黄色だって言い張ることがあったんです。


「今手紙を取りに行っている幼馴染、昔から時々白とか銀色のことが別の色に見えることがあるっぽくて。

…」

警察の人達が互いに目配せしあったのが見えた。


結論は10分後に出た。私の予測は大体あっていた。

「手紙は持ってきたんですが、当日見た時はもっと赤かった気がするんです…」

わかった理由は、病室に戻ってきた優斗が開口一番にそう言ったからだ。考え方は合ってたから結果オーライだけど、赤は初めてだ。さっきの選択肢で緑を選んでたら信憑性落ちてたな、危ないところだった。

「血液は酸化すると茶色くなるからな。便箋が今より赤く見えたのはそのせいじゃないか?」

「いえ、中の便箋です。こんなクリーム色じゃなくて、原色に近い赤に見えたんです、けど…」

そこまで聞いて警察の人達はガッツポーズ。後で聞いた話だと、バイクの色が原因で捜査の線から外していた容疑者を、これで第一容疑者にできたんだとか。

「とはいえ、当日は物が赤く見えていたなんて話をそのまま持っていくのは難しいから、証拠固めは必要だがね。」

そう言って手紙を慎重に袋に入れた警察のおじさんは、とても頼もしかった。


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