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誰にも言えない二つの秘密  作者: 海橋小楢
誰にもいえない二つの秘密:高校編
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青信号、全速前進 ーー凛子の場合

 流れるように手渡されるノート(ついにマルカン2つで束ねる形式になったから、私でも無限ループで最初から見直せる) と伝えられる今日の授業内容。もうすっかり慣れてしまったこのルーチンは、いったいいつまで続くんだろう。情報伝達が済んだ優斗が眠りにつくのも変わらない。ただ、ジョナサンがプレイしているゲームの種類だけが目まぐるしく変わっていく。初期は医療系とか推理ものだったのが、RPGになり、育成ゲームになり。今日はついに恋愛シミュレーションに突入したらしい。なんでギャルゲーでなく乙女ゲーなのかは突っ込むまい。授業ノートに目を通す私よりも真剣かつ楽しくなさそうな顔で画面と向き合うジョナサンを前に、そんな些細なことはどうでもいいよね。


 ノートを見続けること2時間。突然鳴ったインターホンに、一同全員跳び上がった。寝起きの優斗と動けない私をチラリと見たジョナサンは、コントローラーを置いて応対にあたる。予備入れられたのは警察の人、また事情聴取できないか聞きにきたんだろう。どうせ答えられないし、また帰ってもらうことになるだけなのにな。そう思って視線をノートに戻そうとした時に、私の目に飛び込んできたものがあった。


ジョナサンが移動したことで見えるようになったゲーム画面。


ちょうど選択画面が表示された乙女ゲームの画面に、攻略対象と思われるいけ好かないイケメンと……


赤:電車が遅れちゃって…

青:ごめん、待った?

黄:なんでもういるの、早くない?

緑:お待たせっ!


待ち合わせに遅刻したヒロインの台詞が選択肢として並んでいた。そう、私が選べずに不便を強いられたあの四択と一言一句違わない文言が。あろうことか、選択ボタンの色まで同じという奇跡具合で。こんなことってある? 直感で、現状を打破する方法はこれに答えることしかないと思った。ただ、コントローラーは遠くて手が届かないし、取ってくれるよう頼むすべが私にはない。ジョナサンがプレイに戻った瞬間、このチャンスは失われてしまう。無理は百も承知の上で、私にできることはただ念じることだけ。頼む、伝われ…!


私から少しずれた虚空を睨んでいた優斗の目が、その時たしかにこっちを向いた。


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