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誰にも言えない二つの秘密  作者: 海橋小楢
誰にもいえない二つの秘密:高校編
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変わるもの、変わらないもの ーー凛子の場合

 暇に過ごすこと早半月。話せないから何もできないという現状には変化なし。あえて言えば、一定速度で意思に拘らずページがめくられる本やノートから必要な情報を覚えるスキルはちょっと上がったかな? まあ、私に起こった変化なんてその程度だ。


もちろん、何もしてこなかったわけじゃない。小学校の道徳でかじった程度の手話とか筆談とかで、会話の代わりにならないかってチャレンジしたり、食事や着替えみたいな「自力でできること」の中で意思表示できないか試行錯誤したり。色々試してわかったのが、自由になるのは表情だけっていうがっかり仕様。あとはもう、どういう行動ができるのか自分で整理するくらいしかできることがない。「リモコンを渡されたら電源をつけられる」「チャンネルを回すのも可能」「ただし見たい番組で止められないので無限にチャンネルは切り替わり続ける」とかね。リモコンには四色のボタンがあるから、あれを押せれば解決するかもしれないと思ったんだけど、残念なことにボタンを押すことすらできなかった。家のリモコンでも押したことのないボタンだし、通常めったに使わないから今の行動制限状態では触れないとかなのかも。


こんなだから、私が刺された件について私の知っていることは、まだほとんど警察に伝えられていない。事情聴取をしたい警察の人とは何回かあっているけど、うなずくか否定するかしかできないから、刺されたことと時間帯の確認くらいしかできていないんだよね。犯人がどう動いたかとか、立ったときの身長がどのくらいとか、私に切りかかったときに声を聞いたとか。メモもできないから、忘れる前にどうにか話しておきたいんだけど…。どうしたものかな。テレパシーでも使えたらいいんだけど、まあそう都合良くはいかないよね。


私はあんまり変わってないけど、優斗とジョナサンはこの状況にメキメキ適応している。小皿に出すお菓子の量は一人分ずつ分けられるようになったから、ストップできずに苦しくなることはない。放課後に持ってくるのも教科ごとのノートからバインダーに入れたルーズリーフになったから、今日の分の内容をまとめて見られるようになった。あと、自己選択できないだけで気持ちは表情に出るから、複数の候補から選ばせたいときには一個ずつ見せて表情を見て意思を確認してくれる。驚いたのは、「喋れない」って部分に特にフォーカスを当てて対策を考えているっぽいってところ。のど飴を差し入れたり加湿器を持ってきたりっていう喉へのサポート系、携帯やパソコンみたいなテキスト入力系、50音表…っていうよりはこっくりさんのあれ…やモールス信号みたいな変わったアプローチまで、ありとあらゆる「言葉以外で意思を表示する方法」を試そうとしてるぽいんだよね。まさかとは思うけど、私の現状が喋れさえすれば解決するって気づいてる? 実際にはありえないことだけど、このまま優斗とジョナサンが私の症状を打開してくれる気がして、ちょっと期待してしまっている自分がいる。


そうなったらいいな、話したいことが山程あるんだ。私のためにたくさん時間を割いてくれたこと、いっぱい考えてくれたこと、何より刺されたときに助けてくれたこと。あと…優斗とジョナサンがあまりにもずっと一緒にいるから、ちょっと嫉妬していることとか、ね。振ったみたいになっちゃっている件について、一刻も早くフォローしたいんだけどなぁ。


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