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誰にも言えない二つの秘密  作者: 海橋小楢
誰にもいえない二つの秘密:高校編
30/43

口にしないと進まない ――優斗の場合

 あれから2日、未だに凛子は声を発さないままだ。設備があってもどうにもならないこと、謎の症状はあるものの容態は安定していることの二点から、今は病院から近くの療養施設に移っている。どうも学校の運営元のグループが所有する施設だとかで、研究用にデータを集めさせることを条件に入所させてもらったんだそうだ。なるべくいろんなデータを取れるようにという趣旨らしいが、この施設では面会や持ち込み物、音出しといったありとあらゆる制限が破格に少ない。おかげで宿題や娯楽書はもちろんのこと、大量の菓子類やゲームの持ち込みまで許可されている。流石にお菓子を初っ端から持ち込む勇気は俺にはなかったが、ジョナサンは持ってきた揚げ煎餅を凛子とシェアして貪り食っていた。開封状態で差し出しさえすれば、今の凛子でも菓子はつまめるらしい。ただ食べるのをやめる決定はできないのか、だんだん苦しそうになってきたのでジョナサンと菓子をまとめて回収したところだ。

「まだまだあるでしたのに」

紙袋いっぱいの菓子を抱えて、まだ食い足らない様子のジョナサンを作戦会議をすると称して、俺の家までつれていく。今日のステータス表示は、物の重さがわかるというもの。超能力的アピールにしてはいささか弱いが、検証のしやすさを思えば当たりの部類かもしれない。家に着くなり体重計とキッチン秤を回収する俺を、ジョナサンは訝しげに眺めていた。


 俺には二つ、誰にも言ったことのなかったことがある。言わなかったのは、嫌われるかもしれない、今の関係が壊れてしまうかもしれない、そんな些末な理由からだ。その他のどうでもいい秘密も重なって、気づけば何もかもがメチャクチャになってしまった。俺は何もわかっていなかった。相手が元気でいてくれれば何だって良かったんだ。

いくらステータスが見えようが、理解できなければ意味がない。俺にはステータスを解読できるスキルがあまりない。頭上に浮かぶ三点リーダーも、視界の右下に時折映る鉛筆マークも、意味がわかれば重要な手掛かりになるのかもしれない。知恵を借りられる相手が必要だ。人から何を思われようが知ったことか。気味悪がられる? そんなのどうだっていい。少しでも可能性があるなら、俺はなんだってやってやる。


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