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誰にも言えない二つの秘密  作者: 海橋小楢
誰にもいえない二つの秘密:高校編
24/43

いつもどおりの朝のこと ーー凛子の場合

私は反省していた。優斗を追っ払って「いつもどおりにしろ」なんて無茶を言ってしまったことに。委員会とかの用事がない限り、今まで学校ではずっと優斗と私は一緒だった。ジョナサンが来て以来ちょっと不規則ではあるけど、基本一緒にいるって点じゃそう変わらない。それを、一人除け者にするとどうなるか。

「いつもどおり……いつもどおり……? いつもどおりってなんだ……? 俺は普段何をしていた…?」

これが朝一で発見した優斗の様子。一人で空を見つめてブツブツ言っている優斗は、この上ない不審者だ。周囲の反応が「かわいそうに、妙な言いがかりをつけられて思考がショートしたんだな」って感じで全く怪しまれていないのが救いというかなんというか。

「おはよう優斗。」

ボーッとしたままこちらを向いた優斗。目の前でひらひらと手を振っているうちに、段々と目の焦点があってきた。よかった、今日一日このままだったらどうしようかと思った。

「あ……凛子?」

「ユート! 寂しくしてかたじけないだったですよ!」

このタイミングで優斗に飛びついて来たのはもちろんジョナサンだ。自分より図体の大きい人間に背後から飛びかかられ、優斗はぐえっと声を上げる。そんなことは意に介さず、ジョナサンは恨みがましげに続けた。

「しかし、一人で帰るは良くないです。リンコと昨日は探したですのに。メール送るは必要ですよ!」

「そうは言われても、携帯持ってないからなぁ。」

さっきの衝撃で机に打ち付けたお腹を擦りながら、優斗は苦笑。とりあえず抜けていた魂は完全に帰ってきたみたい。

「連絡はどうやって取るですか? 」

不思議そうなジョナサンに、

「固定電話を使うこともあるけど、基本手紙だな。メールより分かる情報が多いだろ? 字の勢いとか便箋の種類とか、あと」

メールより口頭のほうが感情が伝わるって話は聞くけど、まさかその理論を手紙に使われるとは思わなかった。その理屈だと、もしやパソコンで打ったのを印刷するんじゃ嫌なんだろうか。私が機械音痴で良かった、いや、良くない。

「待って、そんなマジマジと見られてるわけ? 年賀状とか以外ほぼなぐり書きなんだけど!?」

「業務連絡じみた手紙に字の丁寧さとか求めてないから安心しろ。見てるったって、筆圧がすごいから怒ってるな、とかその程度だぞ。」

「うわぁ聞きたくなかったそれ……! 」

「手紙の交換してるですか!? ワタシに見せるお願いします!!」

「絶対嫌! 第一、ほんとにメール代わりのどうでもいいやつだから残ってないでしょうよ!」

「いや探したら多分だいたい出てくるぞ。」

「よしわかった、全部渡せ! 燃やしてやる!」

そりゃ、私ももらった手紙はとってあるけどさ! ジョナサンがものすごくニヤニヤしながら見てくるのがまた腹立たしい。ひとしきり騒ぐ私を軽くあしらってから、優斗はジョナサンに声をかけた。

「で、昨日の作戦はどうなった?」

「作戦はキマルしました。ミッション名・イツモドーリ! 今の感じでperfect! 」

結局のところ、一緒にいるのが一番良かろうということになったんだよね。ずっと見張ってるのに発生したなら第三者の仕業で確定。発生しないなら……まあ、問題が発生してないんだからそれはそれでよしってなわけ。作戦と呼べるほどの作戦じゃないんだけど、事なかれ主義者としてはこの辺が落としどころでしょう。

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