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誰にも言えない二つの秘密  作者: 海橋小楢
誰にもいえない二つの秘密:高校編
19/43

落とし物にはなんとやら ーー凛子の場合

最近思ってることがある。ジョナサンは物を失くしすぎだって。そう、あまりにも……不自然なくらいに。

「うーん、伝わるのかあんま自信ないんだけど……」

なぜか掃除用具箱の網棚から出てきた筆箱を渡しながら、おそるおそるジョナサンに尋ねる。「もしかしていじめられてない?」と。英語でなんていうのか分からないし、そもそもそういう概念があるのかもよく……いやあるな、イギリス人作家の作品に思いっきりあったわ。

当のジョナサンはというと、私の方を目を丸くして見つめたあと、意外そうな顔で言った。

「よくわかったですね。」

そりゃ、3限終了後に音楽室を出たときはジョナサンが筆箱を持ってたのは知ってるし(だって四択に筆箱についたキーホルダーの話が出たから)。そのあと優斗と一緒に昼食を食べて図書室に直行したわけで、その経路上に音楽室の掃除用具箱はない。というか仮にあったとしても、掃除用具箱に隠れて人を脅かすタイプのアホでもなければ、掃除時間以外に用具箱に触ることなんてないし、掃除時間は6限後だ。4限開始前の今の段階ですでに入ってるってのは、誰かが故意にやった以外あり得ない、というわけだ。

「リンコは名探偵ですね。」

楽しそうに笑うジョナサン。その表情に、いじめに関する負の感情は微塵も見えない。なぜだ、私はこんなに心配してるのに。

「いじめっ子と対決、日本でやりたいことにあったですので、ちょっとワクワクしてるです。」

フィクションと現実を一緒にしないで欲しい。そりゃまあ確かに運動能力的にも体格的にも、そうそうやられないだろうけどさ。私の表情が渋くなったのを見て思うところがあったのか、ジョナサンは少し悩まし気な顔つきになる。

「……ユートも知ってるですか?」

「あいつは……気づかんだろうなぁ……。」

なんていうんだろ、優斗は純粋培養の「清く正しい良い子」なんだよね。人を疑うことを知らないというか、人の悪意を感知できない。あと、気が利く割に周りのことに興味を持たないから、悪口とかも全く気付かない。それはもう、惚れた弱みで下駄を履かせてもなおフォローできない鈍さ。いや、その、ぶっちゃけると優斗は一時期その融通の利かない真面目っぷりが原因でいじめられてたんだけど、先生と私をやきもきさせながらも一切気づくことなく日常生活を送り続け、あまりの手ごたえのなさに自然消滅させたというレベルなんだよね。その鈍さが好意に対してだけマシになるなんてことはもちろんないので、奴は私の好意にも微塵も気づかないわけだ。くそぅ、知ってた。誰か何とかしてくれないかな。


 優斗にはバレていないと聞いたジョナサンは、くれぐれも優斗には内密に(ホントに内密って言った、どこで覚えたんだそんな言葉)と釘を刺してきた。

「地力で犯人を見つけて成敗するですから、リンコも手出し無用です! ワタシの忍法が火を吹くぜ、ですね!」

「うん…楽しそうで何よりだよ…?」


赤:うん…楽しそうで何よりだよ…?

青:頼むから問題起こさないでよね。

黄:何かあったら相談のるからね。

緑:先生に連絡とかしなくて本当にいいの?


発言してから四択があったのに気がついた。ううむ、完全に素で選択肢と一字一句違わないセリフが出るとは……。この特殊能力、私の意識とある程度リンクしてるのかもしれないな。

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