落とし物にはなんとやら ーー優斗の場合
ここから最終話までは矛盾がないように全部書いてからアップしようと思っていたのですが、更新しないまま半年が経過しようとしているので断念しました。
今ある分を予約投稿するので、半端なところで更新が止まったり、しれっとあとから修正したりすると思います、すみません。
俺には二つ、誰にも言ったことがない秘密があった。一つ目は、幼稚園来の幼馴染にもう十年以上恋心を抱き続けていること。もう一つは、俺にはいろんなステータスが見えるということだ。前者は先日ジョナサンという英国からの転校生にバレた。そのことが小っ恥ずかしくて、あまりジョナサンのことをまともに見られないし、ふと気がつくとあいつのことを考えている自分がいる。おかしい、俺の想い人はジョナサンじゃなくて凜子のはずなのに。
さて、現在ジョナサンは凜子と二人図書室の蔵書を悦に浸りつつ眺めているはずだ。なんでも、俺に勧める本を選ぶのだそうで。俺は美化委員会の仕事があって同伴できなかった。あんまり仲良くしないで欲しいって言ったのが伝わっていないのではないかと不安になるが、俺と凛子をくっつけたいのは本心らしいのでしばらくそっとしておくことにした。
とはいえ、何が他のことをしていないとそちらに思考が行ってしまうのは人の性。気を揉まないためにも美化委員の仕事に打ちこむしかない。幸いなことに今日は物の上にカーソルが浮かんで見えるモードだ。落とし物を拾ったり、なくなりそうな備品を見つけたりするのはお手の物である。落ちていた画鋲を拾い、剥がれかけたポスターを貼り直し、消毒用エタノールの予備を出し、ロッカー裏に落ちていた筆箱を持ち主に返し…と、そんなことをしている間に昼休みはあっと言う間に終わった。
「ありがとうございます! 昨日帰ってから筆箱が無い気づいたです。見つかって嬉しいです。」
落とし主はいたく喜びながら、図書館で見繕ったらしき『人は食べるもの』とかいう本を渡してきた。隣で凛子は「これは初心者向けじゃないと思うんだよなぁ」と渋い顔だ。
「もっとこう…比較的とっつきやすいやつからの方がよくない?」
「トッツキヤツイはわからないです、が、これが一番bandorousです!」
「…バンドロースって、何?」
「多分だけど、坂東作品らしいってことじゃないか?」
「なるほど、それはそうかも。」
頷きながら、貸していたと思しき筆記用具を受け取る凛子。筆箱がないから借りる、それはわかるんだが、そういうのは俺に言えよ。非難の意を込めてジョナサンを睨むと、奴はウインクを返してきた。ウインク姿が似合うのもなんだか腹立たしい。
「国語のテキストブックもないですから、これはユートが貸しますか?」
謎のドヤ顔を決めてきたが、そこはそれ、俺の能力を甘くみてもらっては困る。
「その必要はない。お前の教科書はこれだ。」
他の生徒の机に紛れ込んでいたので、さっき回収しておいたものだ。大方、人の机に置いて忘れていったんだろう。
「ユートは物を探すが上手ですね! ありがとうございます!」
「慣れない日本は大変だよな。でも、お前はもう少し周りのことに気を使った方がいいぞ。」
気のいい奴なのはわかるが、なんせ目立つからな。周りとうまくやっていけるのか少し心配だ。応援するとか言いながら人の好きな相手と二人で図書館デートというのは、俺だって本心を知っていなければヤキモキせずにはいられなかっただろう。凛子に気に入られているようだし、ここは俺がフォローしてやらないといけないな。
坂東冥理作品を読んでみたい方はこちら。気が向いたら追加します。
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