ジョナサン神さん仏さん ――凛子の場合
誤算だった。適当に話を合わせつつ周りに押し付けようと思っていた転校生と、まさかこんなに会話が弾んでしまうとは。だって思わないじゃん、「三割強で人が死に、三割弱で記憶ロス。三割恋人行方不明で、三割ヒロインサイコパス」とか作者紹介に書かれるレベルの超偏食作家の話が、まさかブロンド陽キャラ転校生から出てくるなんてさ。しかも人前でそんな堂々と語りだすとか…。周りの引き方みてしょんぼりし始めたのを見たら、同士としてはついフォローしちゃうじゃん…? 嬉しそうに良さを熱弁されたら乗っちゃうじゃん…?
その結果として隠していた趣味が大公開されてしまったわけではあるんだけど、流れで会話に優斗を引きずり込むことに成功。しかも勢いで手まで握っちゃったからな…! あのときの私はどうかしてたと思うけど、その上でよくやったと褒めてやりたい。その上なぜか優斗がやたらと坂東作品に興味津々だったから、今度持ってる既刊を二人に貸す約束までこぎつけた。これは恋する乙女としてももちろんだけど、マイナー作家の一ファンとしても非常に嬉しい。意図せぬ形で布教活動に成功しそうです冥理先生…!
そんなこんなで、第一印象がアレだったにもかかわらず、ジョナサン株は転校初日の昼休み以来私の中で高止まりだ。初っ端のアレは日本に来てテンション上がってただけで、良いやつなのは割と初期からわかってたわけだし、思いがけず趣味も合うし。さらにさらに、ジョナサンと喋っているともれなく優斗が介入してくるという特典付きというね。なんかこう、私がジョナサンにばっかり構ってるのに嫉妬してるみたいな構図がすごく嬉しいっていうか…。いやわかってるよ、都合のいい妄想だってことくらい。どうせ先生に頼まれたから義務感でやってるだけだろうよ。でも妄想でもいいの、それだけで私はもう一人ニヤニヤが止まらないの…! 人生楽しんだもん勝ちでしょ? 違う?
今日の昼休みはジョナサンを捕まえて図書室に入り浸り、未翻訳作品の中から読みやすそうなのを探してみるつもりだったんだ。ほら、どういうわけだかうちの学校、坂東作品全巻揃ってるから。でも、当てが外れたみたい。昼休みに入ってみれば、ジョナサンも優斗もいなかった。おかしいな、どこ行ったんだろ。
赤:とりあえず図書室行って本を見繕っとこうかな。
青:すぐ帰ってくるだろうし、ここで待ってよう。
黄:運動場かな? 探しに行こうっと。
緑:ねえ、だれかジョナサンどこに行ったか知らない?
四択も今回はあんまり当てにならない。全部割と普通の回答だし。この中には確実にアタリとハズレがあるわけだけど、経験上こういう「私がどうするか迷ってる+無難な選択肢しかない」パターンは大したことないんだよね。適当でいいや。
「とりあえず図書室行って本を見繕っとこうかな。」
他3つは空振りになる可能性あるもんね。ジョナサン向けのだけじゃなくて、ついでに優斗への布教用も見繕っておこう。うーん、なんか楽しくなってきた。二人とも、どんな作品が好きなのかな!




