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誰にも言えない二つの秘密  作者: 海橋小楢
誰にもいえない二つの秘密:高校編
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ホラー映画はお好きですか(終)--凛子の場合

映画の上映前から、優斗の様子はおかしかった。ぼーっとしてるし、告知の段階から既に目をつぶってるし、暗くてわかりにくいけど心なしか顔色も悪かった。本人は大丈夫だって言うし、熱もなさそうだったから(四択の正解はおでこで熱を測らせようとしていたけど、そこは全力で回避した)いったん映画を見ることにはなったけど、映画観賞中もちらちらと様子をうかがった。まあその結果、手に持ってたポップコーンを落としてびっくりさせちゃったわけだけど……。

 だから、映画が終わった後で、ホラー映画が苦手なだけだって言われたときは、すごくほっとした。よかった、病気とかじゃなかったんだ。チケットをもらってしまった上に、私との約束のせいで体調が悪いのに外出させたとかだったら申し訳なさすぎる。映画は誰かほかの人と行く予定だったわけじゃないとわかったのも朗報だ。言われてみれば、貰い物のチケットが自分の好みに合うとは限らないもんね。チケット片手に悩ましげだったのも納得だ。

「俺のことを思うなら、お前は周囲にいる敵を倒してきてくれ……。」

突っ伏したまま、フードコートを指さす優斗。一瞬何を言いたいのかわからなくてフリーズしてしまう。でも、今回は大丈夫だった。次の瞬間に救いの手が差し伸べられたから。


赤:了解です、少佐。終了次第すぐに戻りますので、しばしお待ちを。

青:あっ、それ、さっきの映画の少佐じゃん! 似てなーい。

黄:ごめん、何が言いたいのかよくわかんないや。

緑:らじゃー。あっ、優斗も何か食べる? 買ってくるよ。


あー、こういう時はほんと便利。自力だったら、「何か食べてこい」って言ってるのも、映画の引用だってことも、まったくわからなかった。生まれもった特殊能力に感謝だ。緑は無難だけど、せっかくだから映画ネタはこっちも生かしたい。今回は赤だな。

「了解です、少佐。終了次第すぐに戻りますので、しばしお待ちを。」

優斗が顔を上げる。よし、ここはついでだ、兵士らしく敬礼のおまけをつけてやろう。あれ、なんか表情が硬くなった、なんでだろ? ちょっと悩んで、原因に思い至った。あー、今かぶってる帽子、どこからどう見ても植物性だからなぁ。敬礼で視線を頭に持ってきちゃったから、麦わら帽子にのみ込まれた女の子を思い出しちゃったのかも。えーっと、食べ物はだいじょうぶなのかな、確認しとかないと。

「クレープを退治しようと思うのですが、少佐も討伐に参加されますか? ご希望なら、おめごよ……じゃなかった、おめよごし、にならないように、その、向こうの方で……あの……。うーっ、無理だ、いい言葉が出てこない!!」

かっこつけて女兵士の真似をしたかったのに、兵隊チックな語彙力が全くなかったので大失敗。そんな私の様子を、あいつは笑ってみていた。くぅ、恥ずかしいけど、とりあえず笑える元気が出たなら良しとしよう。


 クレープ屋では、二つのクレープを購入。幼馴染の特権として、相手の好きな食べ物は大体わかる。あいつはさっぱりしたものが好きだから、甘い系よりもさっぱり系のほうがいいかな。多少しんどくても食べられそうだし。クリームチーズと生ハムっていうのがあるから、これにしておこう。私の分は、このフルーツクレープ。生のイチゴと缶詰のミカンがぎっしり詰まった写真が遠くからみえて、気になってたんだよね。

「お嬢さん、申し訳ない。ちょっとイチゴの残りが少なくてね。それでもいいかい?」

店主のおじさんが、申し訳なさそうにこちらの様子をうかがってくる。うーん、ちょっと残念だけど、まあ仕方ないし。そう伝えると、おじさんの表情がほころんだ。

「ありがとう。代わりに他の果物を増やしておくね。あ、ついでに彼氏さんの分の生ハムも増量しておこうか。」

うへへ、彼氏さんだって! おじさんのセリフに思わずほおが緩む。手渡されたクレープを持って席に戻る間、思わずスキップしていた。


「じゃーん……じゃなかった、少佐、貴方には、クリームチーズと生ハムのクレープをお任せしたいのです!」

あの女兵士、少佐にひそかに思いを寄せている描写があったんだよね。口調の真似で、ちょっとでもそのことを意識してくれるといいんだけど。

「お、サンキュー。」

顔をほころばせてクレープを受け取った優斗の表情が、私の持ってるクレープを見て固まる。

「それ、何味だ?」

「え? フルーツクレープだけど……。もしかしてこっちのほうがいい? 交換しようか?」

「そういうわけじゃないんだが……、具材って何が入ってるんだ?」

「イチゴと、ミカンのはずだけど。」

私が答えても、優斗は納得できないらしい。なんでそんなに慌ててるんだろう? よくわからないけど、一回中身を見てみろとうるさいので、おとなしく指示に従う。

「あ……キウイが入ってる……。」

実は私、ちょっとしたキウイアレルギーなんだよね。加熱したら平気だし、生の奴は大体写真見ただけで入ってるのがわかるから、わざわざ「キウイ入ってますか?」って聞く習慣が全くなかったし、完全にノーマークだった。おじさんが言ってた「他の果物を増やす」って、ミカンの増量の話じゃなかったのか。

「ありがとう。でも、なんでわかったの?」

「えっと、その、匂いで……? ちょうど……その……キウイが食べたかったからさ……?」

目を泳がせながら答える優斗。不思議ではあるけど、助かったし深くは追及するまい。

「そっか。じゃあ、キウイいる? 私食べれないし……」

それならと、手つかずのスプーンで、キウイを周辺の生クリームごと掬い取る優斗。キウイの成分が付いていそうなところを丁寧にとった後、食べやすいようにクレープを丁寧にくるくると巻きなおしてくれた。私の分け前が減った分、優斗のクレープを少しくれるというので、私は遠慮がちに一口分だけ切り取らせてもらった。

 ホラーが苦手でも、そんなの全然関係ない。こういう気づかいをサラッとできる優斗のことが好きなんだよなぁと、改めて感じた一日だった。


ホラー映画編の執筆にあたり、服やソファの原材料にちょっとだけ詳しくなりました……。また一つかしこくなってしまったな、ふふふ。非常に手間なので、おそらく原材料表示が本編に再登場することはないでしょう。

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