魔術基礎学No.01
最強の呪文とはなんだろうか。
敵を焼き尽くす炎の呪文だろうか。
広い大地を凍てつかせる氷の呪文だろうか。
それとも圧倒的なスピードを持つ雷の呪文だろうか。
俺は違うと思った。だから、この呪文に決めたのだ。
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北方式魔術学院内部
「えー、15歳になった君たちは魔術を覚える権利を得たわけだ。」
教壇に立つ教師の言葉を珍しく誰も寝ずにに聞いている。
「魔術とは、呪文を扱う技術や呪文を扱う心構えの事であるからして···」
「なあ、シル。このどうでもいい話いつまで続くんだろうな。早く本題に入ればいいのに。」
隣から話しかけてきたのは赤い髪が特徴的な親友のアレスだ。
「そう言うなよ。これまでのクソつまらん授業にくらべりゃいくらかマシだろ。」
「まあそうだけどさあ。」
眠気を噛み砕きながら教師の話を俺らは聞き流していた。
「えー、それではこのこの呪文を使えるようにするにはどうすればいいかというと···」
「おっ、きたきた。やっとこの話になったな。」
周りの奴等もアレス同様教師の話に集中し始めた。
「呪文を使うには、魔石と呼ばれる物を体に取り込み、自分の使いたい系統の呪文を強く念じることで使えるようになる。ただし、使える系統は1つだけで、また呪文の強さや扱いなどは体に取り込む魔石の量が多いほど良くなる。しかし、魔石を体の限界を超えて取り入れると、体が壊れるため注意が必要である。」
皆教師の話を聞きながらどの系統の呪文にするか考えているのだろう。アレスの方を見ると、珍しく真剣に考えている。
「えー、それでは今日の授業はここまで。次の授業までに自分がどの系統の呪文を使うようにするか考えておくように。それじゃあ委員長さん号令をお願いします。」
「はい。」
そう言って返事をしたのはうちのクラスの委員長のアリスだ。明るい性格の男女問わず好かれるタイプの奴だ。
「姿勢、礼。」
授業が終わると同時にクラス中がどっとうるさくなった。
とうせアレスすがどの系統にするとか聞いてくるんだろなとおもっていると、
「なあなあシル。お前どうするよ。俺は炎の系統にしようかと考えてんだけどさあ。」
やっぱり聞いてきやがった。でも俺にはそんな悩み無かった。
「俺はもう決めてる。この学校に入るときからこれしか考えてなかったからな。」
そう、俺はこの呪文を使えるようになるためにこの学校に入ったのだから。
「俺は“治癒呪文”にするよ。」