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第14話 マリヤと不穏な日

町の中でヴィランが暴れているというニュースに不安を覚えるマリヤにブラッドは――


 マリヤはニュースを見ていた。

 ニュースの中では町が謎のヴィランによって破壊され、人々が逃げまどう姿が見られていた。

 それを見たマリヤは気分が悪そうに顔色青ざめさせた。

 ブラッドがそれを見て、不機嫌そうにテレビを消す。

「ぶ、ブラッド様」

「気分が悪くなるものを自分からみる必要はない」

 ブラッドはそういうと、食堂から出ようとした。

「ブラッド、様?」

「見ていて気分の悪くなるヴィランだ、締めてくる。貴様は基地から出るな」

 ブラッドの台詞にマリヤは頷くと、ブラッドは邪悪に笑ってその場を後にした。



 基地から離れた場所にある町で、派手な色の髪の毛のヴィランが町を壊して回っていた。

「あっははは! これたのしー! なんだよ、なんで誰もこんなことしなかったの、馬鹿じゃね?!」

「貴様みたいな馬鹿じゃないからしないのだ」

 ヴィランはどこからか聞こえた声――ブラッドの声に反応して辺りを見回した直後、背後からブラッドの蹴りが背中にくらわせられた。

 ヴィランはその蹴りで一気に上空から地面にたたきつけられる。

 地面に大穴があいたが、ヴィランはコンクリートの破片などで汚れる程度で、無傷に見えた。

「って……!! 誰だよ、空気読めよ!!」

「空気を読むのは貴様のほうだ、私の領域内で好き勝手暴れおって愚か者が……宇宙人か? なら仕方ない――とでもいうかと思ったか!!」

 ブラッドは瞬間移動し、ヴィランの顔面を杖で張り飛ばす。

 その後、仰け反ったヴィランの腹に膝蹴りを当て、そのままつかんで投げ飛ばした。

「肉体戦闘は好きではないと言うのに……」

 ブラッドは土煙で汚れた服から、汚れをはらった。

 ヴィランは投げ飛ばされ、壊れたビルの隙間に埋もれるような形になっていた。

「ムカつく、テメェマジムカつく!」

「もう少し語録力をつけたらどうだ」

 ブラッドがあおると、ヴィランはビルの瓦礫を弾き飛ばし、ブラッドに当てるような動作をした。

 けれども、ブラッドには当たらず、ブラッドの接近を許すこととなった。

「もう少し知的な行動をしてみろ、これならヒーローの方がまだましだ」

 ブラッドはそのまま杖でヴィランを殴り飛ばした。

「……私も人の事が言えぬな」

 ブラッドは深くため息をつくと杖でぽんぽんと自分の手を叩いた。

「で、もうお終いか?」

「――んなわけ、ねっつーの!!」

 ヴィランは人の姿から大きく変貌し、複数の目を持った、巨躯の化け物へと変貌した。

 その変貌にブラッドはヒュウと口笛を吹いた。

「やはりそうでなくてはな、だが、こうなった場合は私が相手をするのは止めだ」

『何だ、逃げるのかぁ?!』

「とんでもない、化け物退治の専門家がいるのでな――なぁ、レア?」

「そう言うことだ」

 化け物が振り返ると、白衣姿のレアがそこにたっていた。

 レアはメスを持っていた。

「こんにちは、化け物、そして――」


「さようなら、だ」


 レアがブラッドにしか見えない、無数の線で化け物をメスで切り刻む。

 その事実に化け物は気づかなかった。

「何をして――え?」

 化け物の腕がずるりとおち、緑色の血しぶきがあがる。

 ずるりずるりと、からだが分解されていき、地面が緑の血で汚れる。

 身体が分割され、青い心臓のような核が姿を現す。

「なるほど、それがお前の心臓か」

 レアが淡々と口にする。

『な、何なんだよ、お前等何なんだよ!!』

「何、通りすがりのただの医者だ」

「私も、通りすがりのただのヴィランだ」

 レアとブラッドがそう言うと、レアはためらうことなく核にメスを当てた。

 すると核に多数の亀裂が背理、同じ緑の液体を巻き散らかして、粉々になった。

 化け物のすさまじい断末魔と共に。

「あっけなかったな」

「全くだ」

 レアとブラッドは顔を見合わせて頷く。

「――が、悪用されたらまずいから消去しておくか」

 ブラッドがそう言って指をならすと、化け物の血液や肉体の破片は全てその場から消えて失せた。

「よし、ではやっかいなマスコミがくる前に帰るぞ」

「そうだな」

 ブラッドは未だ通信が機能していない町の煙に紛れるかのように、その場から消えて失せた。

「さて、私は患者たちを見なくては」

 レアはそう言ってけが人が多数出た地域へと足を向けた。



「ブラッド様たち……遅いな……」

 マリヤは深くため息をついて基地内をうろうろしていた。

「誰が遅いだって?」

「あびゃあ?!」

 後ろから聞こえてきたブラッドの声にマリヤは思わず尻餅をついた。

 顔をあげると、そこにはブラッドが立っている。

 ブラッドは呆れ顔で、マリヤを見下ろしていた。

「ドクター・マリヤ。貴様いつもそれだな」

「だ、だってぇ……」

 半泣きのマリヤを見ると、ブラッドはぐっとこらえる表情を一瞬してから、いつもの不機嫌そうな顔を張り付けた。

「ええい、いいから立たんか」

 マリヤの腕をつかんで立ち上がらせる。

 立ち上がったマリヤの顔をブラッドはひっぱった。

「ぶりゃっどしゃま、いひゃいれす」

「間抜け面してるからだ」

 ブラッドはそういうと、マリヤの頬から手を放した。

 マリヤの頬はわずかに赤くなっていた。

「あ、あの、ブラッド様。町のヴィランは――」

「もう締めて来た、二度と来ないだろう」

「よかったぁ……」

 安堵するマリヤを見て、ブラッドは何とも言えない気持ちになったが、それを隠してマリヤの頭を撫でる。

「町はまだ騒動だがな、レアが救助活動してるし、なんとかなるだろう」

「レア先生……本当にすごい」

 ブラッドはその言葉に少しだけ不機嫌になったが、ぐっと隠していつもの表情を張り付ける。

「ともかく、貴様の心配することはこれで一つ減ったということだ、いつも通りにしていろ」

「はい、ブラッド様」

 ようやく落ち着いたのか、マリヤは研究室に戻って研究を再開しはじめた。

 ブラッドはそれにやや不満そうだったが、あえてなにも言わずこっそりのぞくことにした――






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