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初めての搭攻略

 四話目にして初めて挨拶をさせていただきます名前の通りにバカの天才です、よろしくお願いします。 

 慣れない執筆作業で誤字、脱字、構成の下手さなどが色々あるとと思いますが、ご指導の方よろしくお願いします。


 こっちの世界に来ていや、生まれて初めて闘いを経験してからかれこれ四日、俺とタマは毎日街に出ていた。

 二ヶ月待ってください

 そう宣言したからには早く師匠を見つけて接近戦を身に付けなければならない。

 家族のために、そして母さんのために


「と思ってたのに、今日も全滅かぁ…」


 四日前から様々な道場などを回っているのだが、どこの師範も俺の家が普通の家だと知ったとたん俺を追い出してくる。


「しょうがないですよ、道場は家柄を重視して生徒を取りますから」


 道場は国から補助金が出ているらしいのだが、貴族とかの子供を育て

た方が宣伝効果が大きい。だから普通の家の子供を取るところはほとんどない。


「…どうしよう」

 

 おーいそこの兄ちゃん


「あらた君、道場はまだあります。諦めずに頑張りましょう!」


「そうだな!」

 おーいそこの兄ちゃん


「ここからだとどこが一番近い?」


「そうですね…一番近いのはスーパーウルトラハイパーエキスパート道場ですね」


「あぁやめとこう…」

 おーいそこの兄ちゃん


「んーどこに行こうか」


「いい加減無視すんなやごら!」


 いきなり現れた同い年位の若者。スポーティーに切られた青色の髪をかきあげにっと笑いかけてくる。


「えっと…だれ?」


「あぁすまん、まだ名乗ってなかったな。俺はアサルト、トレジャーハンターをしている。よろしくな!」

 

 細身でもしっかりとした体つき、身長は俺と同じぐらいで八重歯が特徴的だ。


「んで、アサルトは俺に何の用?」


「かわいい女連れで道場回ってる男って噂になってるのお前のことだろ?」


 そんな噂がたっているのか!

 タマを連れてくるんじゃなかったと後悔する俺だった。


「んでよ、師匠を探してるっていうなら俺がなってやってもいいぜ。お宝探しには戦いの技術も必要だからそれなりに仕込まれてんだ」


 肌が露出している部分から見える意外とある筋肉がそれがあながち嘘でないことを物語っている。

 でも何か心配だな~。

 まぁいい、時間は限られている。師匠を選んでいる暇はない。


「分かった、じゃあよろしく頼む」


「おうよ!でもその前に条件がある」


 何となく分かってたけど、こんな俺に無償で接近戦を教えてくれる人なんていないよね。

 ニヤリとしているその顔が無理難題を吹っ掛けて来そうで怖い。


「お金ならないんだ」


「そんなものはいらない。その代わり、修行も兼ねて俺と搭に潜ってくれ!」


「……分かった」


「ほんとか?よっしゃ!じゃあ早速明日朝十時にここ集合な!」


 俺にオッケーされたのがそんなに嬉しかったのか、テンションマックスで街を帰っていく。

 正直お金とか高価な物とかを請求されなかったのはとても嬉しい。

 だが、


「なぁタマ」


「…なんです?」


「搭って、なんだ?」



「分かってましたよ!話を聞いてて、あれ?あらた君搭のこと知ってるのかな?って思ってたけどやっぱり知らなかったんですね!」


「しょうがないじゃん!俺この世界初心者なんだから!」


 タマがやれやれという風に頭を抱えている。

 だって俺まだこっちに来て一週間も経ってないんだよ!これはしょうがないよね!?

 だって搭とか初めて聞いたしー、この街の外に出たことないしー。


 と思っていた俺がふと明後日の方向を向くと、てっぺんが雲を貫いている巨大な搭が見えた。

 宇宙まで届いているんじゃないかと思うほど巨大な搭を見つめていると搭はこちらを見下ろしているようにも思えてくる。


「タマ、もしかしてあれが…?」


「あーはいそうです。あれは八個あるうちの一つです」


「あんなのが八個もあんの!?」


「はい、あれは影の搭です。搭は火の搭、水の搭という風に治癒魔法以外の魔法属性の名が付いた搭が七つ、名のない搭が一つの計八つです」


 あんなバカ高い搭があるってだけでも超ビックリなのにあれが八個も。  

 やっぱりとんでもねぇな異世界。


「ところで搭の中ってなにがあんの?」


「モンスターがうようよいます」


 行きたくねぇー! 

 まぁどうせそんなことだと思ってたよ、修行も兼ねてとか言ってたからそんな感じって分かってたよ。


「モンスターって倒すと得があるの?」


「モンスターの素材を売ってお金にしたり、経験値を稼いでレベルアップとかできますよ!」


「レベルアップ?」


「まぁぶっちゃけそっちの世界のRPGゲームみたいなものです。例えば力をつけたいときには向こうの世界だと筋トレとかをしますがこちらの世界はモンスターを倒します。筋トレでも力はつきますが効率はモンスターを倒す方がいいですね」


 ベタだなぁ俺の異世界もの。

 しかし俺はモンスターと戦った経験は当然ながらない。しかも情報も全く持ち合わせていない。

 この前のアルファさんとの戦いは相手が人間だから殺される恐怖感はなかった。

 しかし相手がモンスターなら話は別だろう。モンスターは全力で俺を殺しにくる。俺はモンスターを全力で殺さなくてはならない。

 できるのか?俺にそんなこと。


「大丈夫ですよ、あらた君」


 タマが俺の考えを読んだかの様に優しく笑いかけてくれる。

 俺はこの笑顔に何度救われたんだろう。

 両親を失っている俺は何かに甘えたいのだと思う。でもそんなことは誰にも言えない。

 タマはそんな俺を優しく包み込んでくれる。あの笑顔で微笑みながら。

 そんな笑顔を俺は守っていかなければならない。たとえ相手がモンスターだろうと、人間だろうと、それ以外だろうと。


「帰って明日の準備するか」


「そうですね」




「あたしもいくっす」


「ダメだ」


「なんでっすか!」


「当たり前だろ!モンスターがいる危険な所に女の子を連れていけるか!」

 家に帰り、今日のことを話しているとシロがこんなことを言ってだだをこねだした。

 モンスターは獣だ。そんな獣の巣にこんなにかわいい女の子を連れていく訳にはいかない。


「あたしもボスと戦ってみたいっす!」


「…タマさん」


「ボスってなんですか?ですよね?」


「ザッツライト!」


 自分でも思うが俺がだんだんダメ人間キャラになっていっている気がする。

 気のせいか?いや気のせいじゃない。

 俺がダメ人間になったら、家事はできるが他は全然できない能天気なシロ、何もしない超不思議ちゃんのメロ。

 このダメ人間三人集をタマが面倒見ないといけなくなる。

 それはタマの負担が大きくなる!

 これじゃだめだ!俺が変わらないと!


「えっもボスというのはですね」


「まてタマ!それ以上言わなくてもいい!」


「え、は、はぁ」


「搭には何階層もありその階層ごとに階層のボスがいる。だろ?」


「あ、はぁまぁそうですね」


 ベタベタだぜ異世界物。

 フッと少しキザなポーズと取っているとその夜から三人にドン引きされて口を聞いてくれなくなった。


「お待たせー!何か暗い顔してんな、気持ち悪。えっと名前なんだっけ?」


「そーいや名乗ってなかったな。俺は鈴木あらただ。暗い顔なのは昨日の夜からちょっと悲しいことがあってな、気にしないでくれ」 


 集合時間の十分前に来た俺を二十分待たしたアサルトが何の悪びれもなくいきなり俺をディスリだす。

 大型のバックを担いでやって来たアサルトは真っ黒の軽そうな服の上に真っ黒なマントという全身真っ黒コーデだった。


 対して俺はシロに買ってもらった動きやすい布の服。それに小さなウエストポーチという対照的な格好だった。

 俺は搭初心者なのだから本当はもっと準備していくべきなのだろうが、タマがたくさん準備しなきゃ行けないほど上に行かないで下さい!って言うからウエストポーチに非常用の回復薬だけ入れたこの軽装になった。


 だがしかし!俺はできる子だ!

 タマに内緒で四次元空間に物を収納できるスーパーアイテムを持ってきたのである!

 どうやって手に入れたかというと、この前街で困っているご老人を助けたらお礼としてくれた。

 対価として釣り合ってない気がしないでもないがありがたく使わせていただく。

 今俺達は結構生活に困っている。今は意外としっかりしていたシロの貯金で生活しているが、そろそろそれも尽きようとしている。

 だから今日俺がモンスターを狩ってお金を稼いで、皆をビックリさせてやるんだ。


「それで今日はどうして搭に入るんだ?」


「おいおいあらた、トレジャーハンターが搭に行くと言ったらあれしかないだろ」


「あれ?」


「そう、七本の宝剣、一本の秘剣だ!」


 まぁそれを聞いただけで大体の予想はつく。各搭に一本ずつ剣があるとかそういうことだろう。

 でもそーだもしたら、そんなのとっくに誰かが入手しているんじゃないだろうか。


「あの静かに台座に佇む誰も抜けない剣を抜くのが俺の夢なんだ!」


 なるほどそういうことか。

 誰にも抜けない故に宝剣だの秘剣だの言われているのだろう。


「んで、どうやって抜くか作戦はあるのか?」


「二人で頑張る!」


 あぁこいつもダメなタイプの人間だ。


「ちなみに今までに国がそれを入手しようとかならなかったの?」


「あー、この前何百人がかりで抜こうとしても無理だったって新聞に書いてた気がする」


 あぁこいつ頭大丈夫かな。

 何百人で頑張っても無理だったのに、二人で頑張る!って。本気で言ってるんなら俺の創造を越えるヤバさだぞ。


「えっと、本気で剣を抜く気?」


「え?何言ってんの?当たり前じゃん」


 帰りてぇー! 

 やっぱり師匠は選ぶべきだったな。失敗したぜ。アサルトには悪いけどちょっと剣のとこまでいってちょっと頑張って、早めに帰って、違う師匠を探すか。


「着いたぞー!」


 アサルトにばれたら猛烈に怒られて縁を切られそうなことを一人で考えているといつの間にか搭に着いていた。

 遠くから見ても馬鹿げた大きさだったが、近くで見るとよりいっそうその大きさの桁違い度が増す。 

 太さは一週するのに歩いて二十分はかかるほどで、高さは測定不能。

 どっしりと構えた門が俺達を吸い込みそうに佇んでいる。


「ちょっと待ってろよ、いま明かりを出すから」


「明かりって今昼前だぞ?」


「何とぼけてんだよ。影の搭の中は真っ暗で明かりがないと何も見えないだろ」


 そうなのか!

 真っ暗で何も見えない中で、モンスターに襲われるとか危険度高すぎだろ!


 「…あれ?確かここにランプ入れたんだけどな。あれ?」


 帰りてぇー!

 何なの?搭の中真っ暗って自分で言っておいて明かりを忘れたの?バカなの?やっぱりバカなんだよね。ってかその大きなバックなに入れてんだよ!愛と勇気か?役にたつもの入れろ!



「ちっ!しょうがない、あれを使うしかないか…」


 何だよそんな裏技的なものあんよかよ。だったら最初から出せばいいのに。ケチだなぁ。


「秘技!俺の、半径十センチを照らす光魔法!」


「いい加減にしろよ!帰るぞ俺は!」


 だかしかし、俺はできる子に生まれ変わった!いつもなら突っ込んで終わりだが、今日は違う!

 そう、俺が光魔法を使えばいい。

 素晴らしい、素晴らしいぞ俺!


「秘技、俺の未来を照らす光魔法!」


「ぬぉ!昼の外なのに明るいぞ!」


 茶番に乗ってくれたアサルトはさておき、ただ光を出すだけなら大きな光だろうと俺の魔力なら簡単だ。

 搭の中はこれで進むことになるだろう。


「ってかお前、光魔法も使えたんだな」


「俺が他の魔法を使えるのを知ってるみたいな言い方だな」


「知ってるもなにも、俺お前の戦い見てたから」 


 なんということでしょう!アサルトもあの戦いを見てたではありませんか!

 何だか親が運動会を見に来るような恥ずかしさがある。

 まぁいい、ここで俺はできるやつだぜアピールをしておくことにしよう。 

 自慢ってしたくなるよね。

 俺はあの戦いから毎日魔法の修行をしている。その成果もあってか、それぞれの属性の魔力を塊にして具現化できるようになった。

 お手玉ぐらいの魔力の塊を全属性分作り、どや顔で、


「まぁ俺は、全属性に適正ありますから」


 とか言うと


「す、すげぇなおい!いいなぁ~!」


 アサルトっていいやつだな。今は特に人の優しさが見に染みるよ。


「まぁお遊びもここら辺にして、そろそろ中に入ろうぜ!」


 搭と同じく巨大で重々しい搭の扉は俺が押すと井街にもすんなりと開いた。

 まるで俺達に、挑戦者に攻略できるものならしてみろと言っているようであった。

 

 搭の中はアサルトが言った通りに真っ暗で、入る前から暗闇に飲まれそうだ。

 暗闇に向かって歩いていくといきなり扉が呉とをたてて勢いよく閉じた。

 お化け屋敷か!

と心の中で突っ込みがながら俺は辺り一面を照らす光をイメージする。

 俺の出した光に照らされ搭の中の構造が露になる。

 

 驚くことにそこは草原だった。

 若草色の芝がどこまでも続いている。花は一輪も咲いていないし、木も一本もたっていない。

 それはそれでなかなか味のあるものだった。

 が、所々にモンスターと思われる異物が見られ、全てが台無しに感じる。


「なぁあらた、こんなに明るく照らし続けて魔力が持つのか?」


「ん?こんぐらいなら何日でもいけるぜ?」


「……そうか」

 お前はモンスターより化け物なんだな、というアサルトの独り言はあらたには聞こえなかった。



「あっそうだ。おいあらた、今日はこれを使え」


 渡されたのはアサルトが大きなバックからごそごそ取り出した使い古された細身の剣だ。 

 シンプルな銀の装飾が施されただけの味気ない剣だが少し重く、所々に見える痛みなどからアサルトの努力が見られる。


「言っとくが俺はスパルタだからな」


 さっきまでの茶番に乗ってくれていたアサルトとは違い真剣な顔つきで向こうを見ている。


「まぁそうだな…あそこにいるシャドウボアーの群れ、三体を倒してこい。ちなみに緊急の時以外魔法を使うのは禁止だ」


 黒いイノシシの方を指さしてアサルトが言う。この言い方だとやるのは俺一人みたいだ。


「やってやるぜ!見てろよ世界!」


「違うって!今のはもっとこう、ガッといけよ!ガッと!」


「ガッとってなんだよ!詳しく言わねぇと分かるわけないだろ!」


 俺はアサルトの意味不明なアドバイスを受けながらも苦戦を強いられていた。

 この前の戦いとは違い相手は三体いるため一体に集中して攻撃できない。そうなると、どうしても攻撃が単調になったり回避優先になり攻撃ができなかったりして、まだ一体も倒せていない。


「違う右!次は左だよ!ったくトロいんだよ!」


「やってるよ!難しいんだよ!」


 だんだんイノシシ達の対処のコツが分かってきた。

 こいつらは全身しかできないから、ここに立っておいて…今だ!

 俺が三体の中心に位置取りギリギリまで引き付けて回避すると、三体はおでこごっつんこして気絶しあ。

 そこを俺がグサッと一射し。

 何で俺はこんなやつらに苦戦してたんだ…

 


「アホかあらた!剣術の訓練だろうが!」


 そうでした、忘れてました!


「次もあのイノシシの群れだ」


「えっ、ちょっと休ませてよ」


「俺はスパルタだって言っただろ?」


 キャラの激変に驚愕を受ける。


「まぁいいから行けよ。多分面白いことになってるぜ?」


 アサルトが何かありそうな言い方をしたが、俺は気にせずイノシシの群れに突っ込んでいく。

 三匹でもキツかったのに次の群れは四匹だ。

 さっきよりも厳しい戦いになるのを覚悟していたのだが、


「あれ?こいつら意外と弱い?」


 意外にも四匹のイノシシをすんなり倒せてしまった。

 ついに俺も覚醒の時がきたか!

 

「あぁやっぱりか」


「やっぱりって?」


「…あらたは多分、レベルが一だったからさっきの三匹のイノシシ討伐でレベルが一気に上がったんだよ」


 …レベル一?

 まぁモンスターとか初めて倒したから当たり前なのか?

 にしてもレベル一って何か分かんないけどショックだな。


 ってかレベル一で搭って挑むものなのか?


「なぁ、搭って攻略目安レベルはどのぐらいなんだ?」


「まぁ十階までならどの搭も三十レベルってとこかな」


「お前!俺がやられたらどうする気だったんだよ!」


「大丈夫だって。ギリギリで助けにいくつもりだったから」


 それは大丈夫じゃない!

 やっぱこいつダメなタイプの奴だわ。


 しかし何だかんだいいながらアサルトの言う通りに戦闘をこなしていくと、俺はもうイノシシをワンパンできるまでに成長していた。 

 それはただレベルが上がったからだけでなく、アサルトが言っている擬音語だらけの指示を体で感じていると、自分の技が磨かれていっているのが分かる。


「よしっ、今日はこんなもんだな」


 搭は上に行くほどモンスターが強くなるのだが、訓練が終わる頃には俺は六階のモンスターを赤子扱いできるほどまでに成長していた。


「それじゃあ次は俺の用事に付き合って貰うぞ。宝剣があるのは十階だからサクッと行くぞ」


 久しぶりに真剣顔を解除してニヤっと笑ったアサルト。

 やっぱりこいつはこの顔の方が似合うわ。


「まぁこれも訓練のつもりで十階までエスコートしてくれよ」


「何で野郎をエスコートしなきゃいけないんだよ!」


 とは言え、俺もかなり強くなったのか七、八、九階のモンスターもあもり苦戦することなく十階に上がる階段の前につく。


「なかなか雰囲気あるなぁ」


「…じゃあ行くぞ?」


 歩く音しか聞こえない静寂の中、階段を上る。

 しばらくたつと、開けた場所にでた。今までの階とは違い、床は黒い大理石のような石が敷き詰められていた。

 部屋の中心には台座に刺さっている一本の細身の剣。

 燃え上がるように赤い刃に全てを飲み込む黒の持ち手がその剣がただの剣ではないことを改めて認識させる。

 いつの間にか台座まで移動していたアサルトが柄に手をかける。


「じゃあまず俺から抜いてみるぞ」


 アサルトが一気に力を込めて引っ張る。が、剣はびくともせず静かに佇んでいる。


「かぁ~!やっぱだめか~!」


 悔しそうにうめくアサルトを横目に俺はゆっくりと台座に近付きそして、柄を握る。

 と、その瞬間剣が光だす。


「な、んだこれ!魔力が吸いとられていく!」




「んぁ~!やっとこの姿に戻れたー!!」


 剣の光が消えたと思ったら俺が握っていたのは小さな女の子の腕だった。


「やっと私にふさわしい力をもった奴が現れたみたいね。っていつまでも触ってんじゃないわよ、変態!」

 

 俺はこの状況を飲み込めずにいた。

 宝剣の柄を握ると剣がいきなり光だしたと思ったら女の子が現れた。

 いや、どういうことだよ!

 でもまぁとりあえず


「……君誰?」




「要約すると、君があの剣ってことでいいんだね?」


「そう言ってるじゃない。わざわざ確認する必要ないでしょ」


 うわー、面倒臭いキャラ来ちゃったよ。


「君は何で剣になってたの?」


「封印されたのよ!あのくそ女神に!思い出しただけで腹立つわ!」


「何で今封印が解けたの?」


「何でってあんたまさか自分のことが分かってないの!?ほんとバカね、まぁいいわ。まだ言うべきじゃない気もするし」


 確かに真っ赤な髪はあの刃を、真っ黒なドレスはあの柄を思わせる。


「ねぇそこの冴えないの、あんた名前何て言うの?」


 いきなり冴えないの呼ばわりされたよ…


「え、えっと、鈴木あらたです」


「そう、じゃああらた、一応私の封印を解いたのはあんただけど、勘違いしないでよね。私はあんたに感謝なんてしないんだから、仕方なくあなたに付き合ってあげるだけよ」


 こいつツンデレキャラかよ、面倒臭さが一気に倍増したな。

 しかも俺についてくるのもう決定してんのかよ。


「あっと、こいつ俺に付いてくるみたいだけどアサルトはいいのか?」


「私そんなやつのとこいかないわよ。そのアサルトってやつとあらたでは強い弱いとか才能努力とかじゃなくて根本的なところから違うの。アサルトじゃ私は使えないわ」


 アサルトが答える前に剣が言う。

 宝剣だからってめちゃくちゃ偉そうだな。まぁツンデレはそういうものなのだろうが。


「あらた、俺決めたよ」


 なんか嫌な予感がするなー。


「トレジャーハンターとしてお宝を前に引き下がれねぇ。だからお前の家に住むわ」


 ほらみろ!俺の嫌な予感センサーは今のところ百発百中なんだよ!


「あんたら呑気なのは良いけど、敵が来てるわよ」


 入り口の方を見るといつの間にか鎧を来た侍のような奴が立っていた。

 今までの雑魚キャラとは違うのは俺が見てもすぐにわかった。


「あれは階層主だな。十階だけ出てないって言われてたけど、剣を抜いちゃったせいで出てきたんだな」


 黒い侍はこちらの準備が整うのを待ってくれるほど気前がいい敵みたいだ。


「あらた、せっかくだから宝剣を使ってみろよ」


「しょうがないわね。今剣の形に戻るから待ちなさい」


 えぇ~、俺戦うなんて一言も言ってないんだけど。

 明らかにあいつヤバそうだし、俺の手に負えるわけないじゃん。


《あんたはへっぽこだけど、私は最強なの。あんな奴に負けるわけないでしょ!》


「うわぁ、お前、俺の心の中に直接喋れるのかよ!」


《あとそのお前ってやめてくれる?》


「じゃあ何ていう名前なんだよ」


《名前は…今は言わない。何でも好きに呼んでくれていいわよ》


「そうか、じゃあ……リジルでどうだ?」


《何でも良いって言ってるでしょ。さぁ行くわよ》

 

 俺がリジルを構えると影の侍もその手に持つ剣を構える。

 俺の汗が黒い床に落ちた瞬間俺も侍も同時に走り出した。

 そのまま大きく振りかぶり斜めに切りつける。相手も同じことをしてきてつばぜり合いになる。


「ぐっ、何だこの重さ」


《あんたは力が足りてないのよへっぽこ!》


 剣を滑らせて拮抗を破り、さっきアサルトに教えてもらった回転切り。

 これも侍は難なく避ける。

 両者一度距離をとり、相手をにらみ合い出方をうかがっている。


《はぁー、こんなへっぽこが私の所有者なんてついてないわ。しょうがないからありがたく受け取りなさい》


 突如俺の体がとても軽くなる。


「…これは?」

 

《あんたのステータスをアップさせたのよ。感謝しなさいよね》


「あぁ、ありがとう!」


 さっきまでとは桁違いのスピードで、侍に突っ込む。

 攻めに攻め立てる俺の攻撃を侍は受け止めているが、さっきまでの余裕は無さそうだ。

 左から右から上から、様々なところから繰り出す俺の攻撃は少しずつかするようになった。

 しかし決め手がないため、勝負になかなか決着がつかない。


 そしてもう何度目か分からないつばぜり合いになったとき、


《あらた、魔力を流し込みなさい》


「えっ、なんで?」


《いいから早く!》


 言わせるがまま俺はリジルに魔力を注ぎ込んだ。


《勝負あったわね影野郎!》


 と突然リジルの刃が少しずつ大きくなりだした。

 そんな能力あるなら最初から使えよ!

 

 ピシッと侍の刀にヒビが入っていく。


「おぉぉぉぉぉお!」


 俺の攻撃が侍の刀を粉々にし、侍の胴体を切り裂く。


 勝った


「勝った、よっしゃぁ!!」


 俺が再び侍の方を向くと侍はもうすでに灰に変わっていた。


「よーし、今日の訓練は合格だな!」


 後ろで見ていたアサルトがこちらに近付きながら言った。


「それにしても疲れたよ。ボスキャラはあんなに強いんだな」


「あぁ、俺の見立てだとあいつは60階ぐらいのボスの強さだな」


 搭初心者にそんなやつと戦わせるな!

 マジで死ぬとこだったぞ!


「もう日も暮れたし帰るか」


「早くあらたの家に連れていきなさい」

 気付かぬうちに人型に戻っていたリジルが俺の前で腕を組みながら早く帰るようにせかす。


「…帰るか」


 搭を出るとすっかり夜になってしまっていた。

 タマ達が心配しているかもしれない、早く帰ろう。

 少し急ぎ足で家に帰って来た。


「ただいまー、今日から一緒に住むやつが二人いるんだけど…」


 おかしい、いつもなら誰かがお帰りなさいとか言って迎えてくれるはずなのに。

 と思っているとドタバタと大きな足音をたてて誰かが近付いてくる。

 扉が勢いよく開かれるとそこにはタマがいた。


「どうしたんだタマ、そんなにあわてて」


 息を切らせながらタマが俺のそばまで来た。


「大変なんですあらた君!シロが、シロが帰って来ないんです!」

 皆思っているであろう、メロはほったらかしかよ!と言うことについてはもう少しでメロの話をする予定ですのでもう少し待ってください

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