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一歩目

 今俺は超絶美少女と町の大通りを歩いている。相手は元飼い猫のタマ。

 いやぁ~新しい世界でどうなるかちょっと不安だったけど杞憂だったなぁー。



「ところであらた君、何の目的があったかは知りませんが、こっちの世界に来る方法は一つしかしらないのですが?」


 な、何かタマの視線が冷たいような気がする。いや、気がするのじゃなくて冷たすぎて背筋が凍りそうです。


「えっと、まぁうん…自殺した」


 バッとタマが俺に飛び付いてくる。その目には涙が浮かんでいた。

 やべぇ女の子泣かせちゃた。


「なんで、何でそんなことしたんですか!」


 堪えようとしてもこぼれ落ちている涙を気にする様子もなく、俺に必死で訴えてくる。


「それは、……こっちの世界に向こうで死んだはずの母さんがいるかもしれないんだ。だから俺は母さんを探すためにこっちに来た」


「母さんを探すっていうのは自分を殺していい理由にはなりません!あらた君はお母さんが亡くなったとき悲しかったですよね?それを他の人に味わわせるんですか!」


 半分悲しんで、半分怒ってというような感じでタマが叫んでいる。


「俺が死んでも誰も悲しまないよ。友達もいなかったし、親族は俺のことどーとも思ってなかったし、父さんと母さんはいなくなったし」


「私は悲しいです!」


 ぼろぼろと涙がこぼれて、顔がくしゃくしゃになってタマが強く強く俺を抱き締める。


「ご、ごめん。もう絶対しないから。」


「…本当ですか?約束ですよ?」


「分かった、約束する」


 俺は悪い男だ。女の子を泣かせてしまったうえに、守れるか分からない約束までしてしまった。

 俺は母さんを助けるためなら自分の命は捨ててもいいと思っている。だからこれから自分自身を傷つけることがきっとある。

 だから俺はタマとの約束は…守れない。


 涙をぬぐいながら、笑顔ではい!と返事をするタマを見ながら俺は更なる罪悪感を抱え込んでいた。



 そんな事があってしばらくすると、タマがお世話になっている貴族のハーリスさんの屋敷に着いたのだが


「なんか、想像してたのとちがぁーう!」


 着いたのは屋敷というより普通の一軒家。赤色の屋根にレンガの壁。どこからどう見ても普通の一軒家。


「あのさタマ…」


「あらた君、言いたいことは分かりますがお金は使おうが使わまいが人それぞれですよ」


 まぁ確かにタマの言う通りお金を使わず貯金しておくというのも賢いかもしれないな。 

 

 でもさ、貴族なんだろ?しかもチンピラが逃げ出す位すごい。

 じゃあもっといい屋敷に住めよ!威厳を見せつけてくれよ!



「お帰りなさいませ、タマ様」


 タマが開いた扉の先で待っていたのはメイドと執事が一人ずつ。


「タマ様、そちらの御方は?」


「私が向こうの世界で猫だった時の飼い主さんです」


「ほぉ……向こうの世界ですか」


 初老の執事の俺を見る目が急に鋭くなり俺は動けなくなった。

 執事の全身から漂う殺気の様な圧力が俺の体を硬直させる。


「は、ハデスさん。落ち着いてください。この人はいい人ですから」

 

 名前おっかなすぎるだろ!悪魔ですか?いや悪魔より怖いよ!


「これは失礼しました。昔向こうの世界の人間と一悶着あったものですから」


「い、いや、いいんですよ。あは、あはははは」


 怖かった~!マジ死ぬかと思った~!



「昼ご飯の準備終わったっす~!」


 キッチンと思われる部屋から出てきたメイドさんと目があった。

 白色の長い髪に白色の肌。白いメイド服と相まってか雪のような人だと思った。


「あれ、お客さんっすか。ん、あなたどっかで……あぁ!河川敷で毎日食べ物くれた高校生っすか!」


「えっと……もしかしてあの時の子犬!?」


 タマが死んでしまってから二ヶ月位たったあとに帰り道の河川敷で段ボールに入れて捨てられていた子犬がいた。父さんが犬アレルギーだったため飼えなかったが。

 その犬は一ヶ月位したらいなくなっていた。


「そうっすあの時の子犬っす!あなたが色々お世話してくれた子犬っす!あの後保健所に引き取られて殺処分されちゃったっすけどまたこうして会えたのは運命っす!」

 

 ちょっ、抱きついてくんなよ!乳が当たってんだよ!乳が!

 横から感じたことがある極寒の視線がまた感じた。何を隠そうタマの視線である。


「メイドさん?くっつきすぎじゃない?」


「なんすか、あんたに関係ないっすよ」


 メイドのくせに尽くすべき相手の家の人にあんたとか言っちゃったよ。

 メイド失格じゃないのか?

 二人の間に飛び交う火花。


「ダメだこりゃ……」



「あらた君は随分人気者みたいだね?」


左側にくっついているのはタマ、右側にくっついているのはシロ(名前がないみたいだったから俺が名付けた)という意味不明な状況で俺と向き合い話している人がこの家の主のハーリスさんだ。

 ちなみに若いイケメン。



「あのーですねこういう状況なんで、図々しいのは分かっているのですが、三人暮らしできる家をくれませんか?」


 この人の家でお世話になっても良かったのだが、ちょっと狭いし、俺が自由に人探ししてたらたぶん迷惑がかかる。



「君に家を与えることでどんな利益が私にあるんだ?」


 急に雰囲気が変わったハーリスからこんな言葉が飛び出した。その声はとても威厳がありとても一軒家に住んでいるとはおもえなかった。

 数々の修羅場をくぐってきた、そんな声だった。


「えぇと、それは…例えばタマとシロの生活費が浮くとか?」


「私からしたら二人分の生活費なんて言ってしまえばはした金だ。削ろうが削るまいがほとんど差はないね」


「えっと…」


「まぁいいよ、君も若いしここで会えたのも何かの縁だ。そんだな……私を驚かせたら家をあげようか」


 薄くにやついてこちらを見ているイケメンな若者。


 うざい


 何とかこのにやけ面をギャフンと言わせてやりたいのだが、いい案が思い付かない。

 こんなとき芸の一つでも覚えてたらなぁ……まてよ、ここは異世界、俺は異世界転生者。

 ならば!


「俺、相当魔法の才能あるぜ!」


 異世界転生なら定番の俺TUEEE展開にかけるしかない!

 神様お願いします、どうかお救いを!



「ほぉ…では見せてもらおうか」


 そう言ってハーリスが取り出したのは水晶の様なもの。インチキ占い師が使ってそうなあれだ。


「これに手をかざすと自分の魔法の適正属性と魔力がどのぐらいかがわかる」


 魔法には火、水、風、土、雷、光、闇、そして治癒魔法の計八種類の属性があり、基本一人一属性、エリートと呼ばれる類の者は三属性に適正があるらしい。

 引用元、タマ。


 俺は覚悟を決めて水晶に手をかざす。

 すると水晶が俺が手をかざした瞬間に八色に光だす。


「なっ!八種類全ての魔法に適正があるだと!」


 来たぁぁぁぁあ!!

 ご都合主義すぎる展開、ありがとうございます神様!


 「しまも魔力も常人をはるかに上回っている!」


 俺にこんな力があったなんて!

 ラッキー!!

 運が良すぎて怖くなっちゃうな!


「…さすがの私も相当驚いたよ。約束通り家を渡そう」


「悪いな、ありがとう」


 なんかずるい気がしてきたけどまぁいいか。


「すごいです、さすがあらた君!」


「まじぱねぇっす!さすがっす!」


「ちょっと、言葉重ねないでくれますか?」


「それはこっちのセリフっすよ」


 やめて!僕のために争わないで!



「ハーリス様、もしかして彼はあの方達の子供では?」 


「ふふふ、これから面白くなりそうだね」


 静かな部屋に二人の声が静かに響いていた。


 町外れにある俺達の新しい家、元々はハーリスの別荘らしい。

 本館があの一軒家だったため不安だったのだが、


「なにこれ、でかすぎだろ!」


 外見は西洋風の城。庭は中心に噴水が置かれ、うまく言えないがめちゃくちゃ広い。

 しかし


「でかいよ、でかいけど……汚すぎだろ!」


 延び放題の雑草の上に散乱している落ち葉。建物本体にはつるが絡まっている。

 掃除しなきゃな…


「手作業でやっても終わんねー!」


 あれからかれこれ二時間ほど三人で掃除しているが、一向に終わる気配がない。


「これじゃ永遠に終わらないよ。……魔法を使うか!おーいタマ!魔法ってどうやって使うの?」


「魔法得意です的なこと言っておいて使い方知らないんですか?まぁいいです、魔法を使うときに大切なのはイメージ力と、魔力です。この世界では自分の魔力を越えたものじゃなかったら適正属性の魔法はイメージするだけで使えます」 


 なるほど、ならこの雑草たちを風魔法で刈り取って宙に浮かせて火の魔法で落ち葉もろとも燃やすか。 

 目を閉じてイメージする。



 俺の新しい家の広い庭は今燃えていた。原因は俺の魔法。


「あらた君、何で庭を焼け野原にしちゃったんですか!」


「あらた君、これはさすがにワイルドすぎっす」


 すいません、マジすいません。

 とにかく火を消さなきゃな。水の魔法で消化するか。思ったより火が大きいから多めに水をだすか。


 俺の新しい家は水でびしょびしょになっていた。原因は俺の魔法。


「あらた君、なんで家を水浸しにしちゃったんですか!」


「あらた君、これはさすがにワイルドすぎっす」


 すいません、マジすいません、ホントすいません。

 ヤバイ、木とか使われてたら腐っちゃうから風の魔法で乾かすか。


 近隣には草や葉っぱの燃えカスが散乱していた。原因は俺の魔法。


「あらた君、なんで近隣に燃えカスを撒き散らすのですか!何なんですか!成績はいいけどバカなんですか!」


「あらた君、これはさすがにワイルドすぎっす」


 すいません、マジすいません、ホントにすいません、生まれてきてすいません。ミジンコさんの方が何倍も使えますよね。


「あ、俺近隣の人に謝りに行ってくるから」


「「私達が行ってくるから、あらた君は家の掃除でもしてて下さい!」」


 二人の俺に対する態度がだんだんひどくなってくる。まぁ俺が悪いのだけれども。

 でも俺だってあんまり冷たくされたら泣くよ?


「はぁ、二回目の死を迎えたいよ」


 そんなことを言いながらタマがしてくれた部屋割りの紙を見ながら俺の部屋に向かう。

 二階の一番左の部屋、そこが俺の新しい家の新しい部屋だ。

 俺の部屋の木のドアの前に立ち止まり、一息ついてから扉を開ける。新しいものは何かと緊張するものだ。


「……」


「……だれ?」


 扉を閉める。

 これは夢だ、新しい部屋に入ると緑色の髪のロリッ子が俺の部屋のベッドに座っているなんて。あるわけないだろ、あはは。

 もう一度扉を開ける。


「……」


「……だれ?」


「お前が誰じゃぁぁ!」



「んで、人の部屋上がり込んで何してたの」


「…何もしてない」


 何も悪びれる様子もなく淡々と少女は答える。

 その顔に表情はほとんどなく、何を考えているのか全く分からない。


「じゃあ何でいるんだよ!」


「…神のお告げだから」


 相変わらず真剣な顔で答える女の子。

 あぁ、こいつはダメだ。話が通じない感じの人だ。


 俺はダメもとで質問を続ける。


「…君の名前は?」


「…名前は…ない。」


「名前無いのは不便だから、えっと……じゃあ今日から君の名前はメロでどうだ?緑色だし」


「…メロ…私メロ?…分かった」


「えっとじゃあメロ、神様は何て言ってるの?」


「…ここにいろって」


 おーい神様~!お前の使いのお方に何をするかちゃんと告げろよ。最近じゃ小学生だって何時まで誰とどこで遊ぶか位は親に報告するんだぞ!


「それでこれからどうするの?」


「…分かんない」


 非常に迷惑だ。と言いたいところなのだが、神様!こんな美少女を与えてくださりありがとうございます!

 でも俺に美少女与える前に、お告げを与えて欲しかったな!


「じゃあさ、うちに住む?」


「…うん、住む」


「じゃあよろしくな、メロ?」


「…ここは、鬼の家?」


「鬼?何の話だ?」


 その時


「あらた君、誰ですこの女?」


「あらた君、もう部屋に女連れ込んだっすか?」


「えっちっ違う!これは違うんだ!」


「どう違うかじっくり説明してもらしましょうか?」


 誰か助けて!


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