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第2話 初戦闘

「ゴブ!ゴブブ!」


「ゴブブゴブ!」


「ゴブゴブ!」


 俺とリラは、今ゴブリンたちと対峙していた。

 そして俺は、水龍皇の槍を両手で持ちいつでも動けるように構えていた。リラも、俺の後ろで魔術を発動するための補助装置である杖をしっかりと持ちいつでも回復できるようにしていた。

 そこに、これから戦闘が始まるという場には似つかわしくない陽気な声が聞こえてきた。


「レイトくーん。準備はそろそろいいのー?戦闘始められるのー?」


 その声の発生源の正体は俺の頭上に浮かんでいる妖精みたいな見た目の少女だった。

 その少女はこっちが戦闘の準備が出来てるかを確認してきた。


「ああ、俺は大丈夫だよ。リラもいいか?」


 俺は、少女に準備が出来ていると返事をした。

 そして、リラも戦闘への準備は出来てると思ったけど俺は念のため確認するのにリラに聴いた。


「はい。私も大丈夫ですよ」


 俺とリラの返事を聴き、戦闘の準備が整っているのを確認出来た少女はこう言った。


「戦闘チュートリアル開始なのー!」


 その言葉を聴きながら俺はこんなことになっている経緯を思い出していた。





 ◇◆◇◆◇◆◇◆





「さてと、周りは木々ばかりでどの方向に進めばいいか分かんないな……」


 気合いを入れて冒険を開始しようとした俺だが、早速問題にぶち当たった。

 この世界のことを知らないのを忘れていたのだ。

 だが、そんな時に俺の女神様が俺に道を示してくれた。


「レイトさんも私もこの世界のことは何も知らないのですからしょうがないですよ。それに冒険とは未知を求めるものではないですか。ならこの状況は心躍りませんか?」


 そのリラの言葉を聴いて俺は、自分の中にある冒険心が疼いたのを感じた。


「確かにそうだったな。俺たちはこの世界では無知な新参者なのを忘れてた。なら、自分たちで道を切りひかないとな!」


(考えるだけでワクワクしてきた!俺って案外こういうのに憧れてたんだなー)


「ふふっ。レイトさん楽しそうですね。顔が笑っていますよ」


「えっ?俺笑ってる?」


 リラにそう言われて顔を触ってみると本当に笑っていた。

 自分でも気づかないうちに内心が顔に出ていたようだ。

 ちょっとだけ恥ずかしい。


「ま、まあ楽しみだよ」


 恥ずかしくて少し早口になってしまった。


「それじゃあ、早く行きましょうか。私たちの冒険に!」


 リラが気にしないでくれたのをありがたく思いながら、俺は気持ちを切り替えて返事をした。


「ああ、行こう俺たちの冒険に!」


 その言葉とともに改めて異世界の冒険を始めようとしたとき不意に音が鳴った。



 ピコンっ!



 その音とともに俺の手にスマホが出現した。


「うおっ!なんだ急に!?」


 急なことで俺は軽くパニックになった。

 その横でリラが冷静にスマホの画面を見てあることに気付いた。


「レイトさん、落ち着いてください。画面に何か表示されていますよ」


 俺は、リラのその言葉を聴き一旦自分を落ち着かせて画面を確認した。

 スマホの画面にはこう書かれていた。



~戦闘チュートリアルのお知らせ~

『急にすまんの。神じゃ。君を送り出したのはいいんじゃが、平和な日本にいた君に戦闘に対する心得が無いのを忘れていてのう。このままじゃ君は、すぐに死んでしまうと思って戦闘に対する心得を知ってもらうためにチュートリアルを設けることにしたんじゃ。そのサポートを行うための者も向かわせた。後はその者が教えてくれるはずじゃ。それと、お詫びに君に槍術のスキルを付けてあげたからの。では、頑張ってくれのう。』



 そのメッセージを読んだ俺は、冷や水を浴びせられた気分だった。


(……そうだったここは現実なんだ。異世界に来れたことや魅力的な力を手に入れたりと非現実的な出来事ばかりだったせいで俺はどこか夢を見てる気分になってた。それに、急に力を手に入れてなんでもできると思ってもしまっていた。ははっ……、本当の俺は何の力もない人間なのにな)


 そして、自己嫌悪におちいっていた俺は急に肩を掴まれて強引にリラの方に振り向かされるのに抵抗出来なかった。


「レイトさんが何を考えて思っているかも大体予想はつきます!だからこそ言わせてもらいます!あなたは、何のために私を呼び出したのですか!私はあなたの力になるためにいるんです!1人で出来ないならもっと人を私を頼ってください!」


 そうリラは見たことないような怒ってるのか泣いてるのか分からないような顔で俺に自分の意思を伝えてきた。

 俺は、リラにそんな顔をさせてしまったのを後悔した。

 それでも、俺のことをそんなに考えてくれてることに嬉しさもあった。


(そうだよ。俺にはリラがいるじゃないか!それにこの力は貰った力かもしれないけど、今は俺の力だ。もっと自信をもて俺!もうリラにも心配もかけないようにしないとなリラのあんな顔はもう見たくないからな!)


「ああ、そうだよな。俺には、リラがいたんだよな。ごめん、ちょっと死んでしまうかもと現実を突きつけられたら冷静じゃなくなってた。もうリラにはそんな顔はさせないように頑張るから、俺に力を貸してください!」


 俺はそう言ってリラに頭を下げた。

 そうしたら、急にリラに抱きしめられた。


「リ、リラ?」


 俺は突然のことで少し動揺してしまった。


「はい!2人で頑張りましょうね!」


 リラは俺に満面の笑みでそう言った。


「2人で頑張ろうな」


 そう言って俺も抱きしめ返した。





「イチャイチャしてるとこ悪いと思うけど、ちょっといいのー?」


 そこに声をかけてくる存在が現れた。


「っ!誰だ!?」


 俺とリラは声がした方に振り向いた。


「やっほー!あたしは、サポート妖精のシルって言うのー。驚かせてごめんなのー。でも、あのままだったらいつまでイチャイチャしてるか分からなかったから声かけさせて貰ったのー」


 その存在―――シルはそう言った。

 彼女は自分のことを妖精と言ったとおり、体は30㎝程で背中に透明な羽根も生えていた。容姿は、翡翠色の髪をツインテールにした天真爛漫な美少女という感じだ。


「というかお前見てたのかよ!?」


 シルの発言に聴き逃せないところがあり、俺は声を荒げてしまった。


「声かけるタイミング逃しちゃってずっと見てたのー」


 そうシルは楽しそうに笑いながら言ってきた。


「ま、マジか……。はあ、もう過ぎたことを気にしても意味ないか」


 俺は、とてつもなく恥ずかしかったが気にしてもしょうがないと追求は諦めることにした。


「仲がいいのは良いことなのー。これからは一蓮托生だからずっと仲良くしてほしいのー」


「ちょっといいか?サポート妖精って聞いたときも思ったんだが、今の発言も聞いて確信したシルは神様がチュートリアルのために向かわせた存在?」


「その認識であってるのー。あたしはレイトくんの戦闘チュートリアルを手伝うために来たのー」


 どうやら予想通りシルは神様が戦闘チュートリアルのために向かわせた存在だったらしい。


「なら、早速始めるのか?」


「まずは説明からなのー。それから戦ってもらうのー」


 確かにいきなり戦えじゃ無理だな。

 これは、何のためのチュートリアルだってなるし。


「分かった。じゃあ説明してもらえるか?」


「その前にあそこにいる彼女をどうにかするのー」


 そうシルに言われて、抱き合ってるときにシルに声をかけられてからリラが一言も発言してないことに今更ながら気付いた。

 そして、シルが指を指してる方に目を向けるとリラがうずくまってた。その様子を見て、どこか具合が悪くなったのか心配になって俺は急いでリラのもとに向かった。


「ううっ。ひ、人に見られてしまいました。恥ずかしいです……」


 そんな感じのことをリラはずっと言っていた。


(具合が悪くなった訳じゃないと分かって安心したのはいいけどどうしよう?まあ、悩んでてもしょうがないしとりあえず声をかけてみるか)


「リラ大丈夫か?」


「レ、レイトさん!?あ、あのですね。さっきのはなんというか……」


「俺も恥ずかしかったからさ、気にしなくても大丈夫だよ」


 俺がそう言うとリラも多少は余裕がもてたのか落ち着き始めたようだ。


「すいませんでした。取り乱してしまって」


「俺も取り乱しちゃったりしたからお互い様ってことで」


 その言葉を聴いたリラも笑いながら「はい、お互い様ですね」と言ってくれた。


 リラも落ち着いて大丈夫そうなので、俺はシルにチュートリアルについて説明してもらった。

 簡単に説明するとシルが召喚するゴブリン3匹と戦ってもらうらしい。あと、危なくならない限りは手出ししないみたいだ。

 俺としては、もっと戦闘技術に対する説明とかあるのかと思ってたんだけどそこら辺はスキルがアシストしてくれるらしい。槍術貰っといてよかったよ。

 それと、戦闘感覚は実戦で覚えてだってさ。


「じゃあ異世界初戦闘頑張りますか!」


 そう言って俺は自分に気合いを入れた。


「はい、私も精一杯頑張ります!」


 リラも気合い十分みたいだな。


「それじゃあ、召喚するのー」


 シルがそう言ったと思ったら魔方陣が現れて、そこから3匹のゴブリンが出てきた。

 それを確認して、俺とリラは戦闘体制に入っていった。





 ◇◆◇◆◇◆◇◆





 シルが開始を宣言したらゴブリンたちは一斉に動き出した。

 ゴブリンは剣を持っているのが2匹と弓を持ってるが1匹だった。

 俺は、弓を持っているゴブリンを警戒しながら剣を持ったゴブリン2匹に向かって駆け出した。


(異世界バトルストーリーのときはゴブリンは雑魚だったが、こんなチュートリアルでも使われるってことは強さに変わりはないということか。なら、冷静に対処すれば俺でもなんとかなるはず)


 そう考えたとこでちょうど1匹目のゴブリンが斬りかかってくるところだった。


「ゴブっ!」


 俺は、斬りかかってきた剣を槍を使いうまく流して体制を崩させてそこに突きを繰り出した。その一撃にゴブリンは反応できずに胸にくらい絶命した。

 初めて命を奪ったことに対しては不思議と罪悪感はなかった。

 しかし、素人の俺がこうも簡単に槍を使えるなんてスキルは凄すぎる。

 

 2匹目のゴブリンは1匹目が俺に簡単に倒されたのを見て、警戒していた。そこで、今度は俺から攻撃を仕掛けることにした。


「はあっ!」


 気合いとともに頭に突きを繰り出した。ゴブリンはそれを回避出来ないと判断し、剣でガードしてきた。その動きを予想していた俺は、足払いをした。頭に意識がいっていたゴブリンはそれをくらって倒れた。その隙を見逃さずに俺はとどめをさした。


 俺が、2匹のゴブリンを倒して少し気を抜いてしまった瞬間に矢が飛んできた。それを、スキルのお陰で反応できて槍で打ち落とした。矢を放ったゴブリンは当たると思った攻撃が迎撃されて動揺していた。俺は、その隙に接近し一気に突きを繰り出した。矢を使ってることから分かるとおり接近戦が苦手なそのゴブリンは突きに反応できず絶命した。


「そこまでなのー!」


 そんなシルの戦闘終了の声が聴こえた。


 俺の異世界初戦闘は案外呆気なく終わった。

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