No.1 魔導士の村タル・リコ
帝国・・・かつて世界文明の中枢と謳われ
数多くの小国を従えた大国。
時は流れ その伝説を知る者 僅か・・。
とある城の塔の上。一人の兵士が別の男に追い込まれていた。
滝を背にしギリギリまで後ずさりをする兵士。
それに対しニヤリとほくそ笑む男。
「どうやら、ここまでのようだな!」
追い込んだ男が叫ぶ。
しかし、追い込まれた方の兵士は反応しない。
「・・・・・・」
「死ね!!」
男は兵士に掌を向けると眩いばかりの光の塊を放った。
追い込まれた兵士は男の魔力により吹き飛ばされる。
「うわーーーーー!!」
兵士は滝の中へ真っ逆さまに落ちていった。
男は微笑み捨て台詞をはく。
「私に牙を向けたことをあの世で後悔するがいい」
どれくらいの時間がたったのか・・
兵士は心地の良い感覚の中、目を覚ました。
「・・・ん?・・ここは・・どこだ?」
陽の香りがするあたたかなベットの中で目を覚まし、辺りを見渡す。
誰かの部屋のようだ。
微かに良い香りもする。
と、そこへ・・
カチャッと扉が開き、一人の女性が入ってきた。
「!あら、気が付いたのね」
女性はベットに近寄りながらつぶやいた。
「・・・君は、誰?・・ここは・・・?」
「私の名前はルーフィア」
NAME ルーフィア・アノン
本作のヒロイン。魔導士の村"タル・リコ"で
祖母と2人ひっそりと暮らしている少女。
純粋無垢な少女で明るく勇気がある。
「ここは魔導士の村"タル・リコ"よ」
「僕は・・いったい・・ うっ・・ 頭が痛い!・・」
「もう少し休んだ方がいいわね。後で食事を持ってくるから」
そう言うとルーフィアは部屋を後にした。
「かわいい子だな・・!!うっ・・また、頭が・・」
一人残された兵士は頭の傷みと共に再び眠りについた。
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『しっかりしろ!!カシム!!』
『う・・占い・・魔導士・が・・ ま、ましんを・・・』
それだけを言い残すとカシムと呼ばれた男は息を引き取った。
『カシムーーーーーーー!!!』
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「はっ!!・・・・・夢?・・」
自らの叫び声と共に兵士は目を覚ました。
「えっ!?記憶喪失ーーー?!」
食事を運んできたルーフィアが驚きのあまり声を上げる。
「ああ・・・クレイ。自分のその名前以外は
何も思い出せないんだ・・・」
「・・・ちょっと待ってて!おばあちゃんなら
記憶を取り戻す方法を知ってるかもしれないわ!」
ルーフィアは慌てて部屋を出ようと扉まで駆けていく。
それをクレイは呼び止めた。
「待って!・・・
何故そんなに良くしてくれるんだ?」
「・・・困った時はお互い様でしょ?
それとも裏があるとでも?」
「・・いや・・
それから・・・」
「なに?・・」
「・・・ありがとう・・・」
ルーフィアはニッコリと微笑むと部屋を後にした。
「記憶は徐々に戻ってくるであろう」
だいぶ体も軽くなったクレイは
ルーフィアの祖母、マトーヤの元を訪れていた。
「本当!?おばあちゃん!
よかったね。クレイ!」
すぐ側にいたルーフィアがクレイの手を取って喜ぶ。
「ああ」
マトーヤはさらに続けた。
「もし、確実に戻したいのなら"ナイトメア"に会う事じゃ」
「ナイトメア・・?」
「そう、その昔、闇魔導士が召喚したと言われる悪夢の化身じゃ」
悪夢という言葉にルーフィアがマトーヤに問いかける。
「夢?夢と記憶と何の関係があるの?」
「おおありじゃ!クレイとやら、おぬしはすでに過去の記憶・・
それも、ごく最近の出来事を夢で見ているはずじゃ」
「・・そういえば・・妙な夢を・・・」
「すごーい!おばあちゃん!!
さすが占魔導士ね」
ルーフィアの占魔導士という言葉にクレイは
夢でも同じ言葉を聞いた気がした。