物忘れはほどほどにしないと大変だと思いました。
連載していた長編ファンタジー(完結済み)の番外編です。よろしければそちらもご覧ください。
土砂降りの雨の中を荷車を押して二人の男が早足で進む、そのうちの一人は俺だけど。
王都の森が復活したと噂で聞き、確認がてら久しぶりに兄に会おと考えて王都の街道を進んでいた俺の前に、片輪が破損した荷車をもち立ち往生している男を発見したのがきっかけだ。
普通の男ならほっとくのがその人は足を引きずっていた、荷車がないと荷物を運べないだろう。
俺は男に声をかけ、男の村まで一緒に運んでやることにしたんだ。
「アレン、悪かったな」
「困ったときはお互い様さ、それに俺の兄は王都で兵をしていてね、困っている平民は助けろって厳命されているんだ」
男――ロヴィーニさんの家についた時は二人共びしょ濡れだった、タオルで水気を拭いたあとはすぐに着替えたいが生憎と荷物もびしょ濡れだった。
「服が乾くまで俺の服で良ければ着ていてくれ、今温かい飲み物でも用意する」
手渡された衣服は丁寧に折りたたまれた清潔感のあるシャツとズボン……女の気配がする!
ロヴィーニは見た目は二十代の人種だ。髪は茶色だしパッと見、ツノがあるとか耳が長いとかの特徴的なところはない。しかしどことなく人族とは違う雰囲気がある、見分けがつかない魔族?そんな種族がいるのか?
「どうしたんだ?考えこんで。いっておくがきちんと洗ってあるぞ?」
「見ればわかるって、いやその……(どうする!?それほど親しくもない間柄でいきなり女がいるだろ?
とかお前種族何? とか失礼だよな!?)き、きれいに洗ってあるなと」
「ああ、近所の奥さんがついでにやってくれるんだ。この足じゃ長時間はしゃがめないからな」
あ、ついでですか。
その後ホットミルクをもらって飲んだ。体があたたまる、そういえばランツ兄さんもホットミルクは寒い日には最高だっていってたな。王城の門番をしていると酒など飲めないらしい。
「(お客さんだぁ、ふふふ~)」
「!?」
な、なにか聞こえたような?
しかしこの家は玄関から部屋は一室しかない、テーブルは今俺達がいるし、棚だって小さい、隠れるような場所なんてないんだぞ!?
「い、い、今、なにか聞こえなかったか?」
「……何も?」
その間は何ですかー!?
「(くすくす、目が泳いでるよ?)」
そうそう泳いでる……ってまた聞こえたー!?
「(ヤダあの人おもしろーいw)」
「だ、だ、、だひぇだ!」
「だひぇってなんだ」
……噛んだ。緊張したり同様したりするとすぐに噛むんだ!
……そのせいで変態扱いされてしばらく王都にいられなくなった。あ、思い出したらまた気分が……兄さんと懇意にしている子がいるって聞いたから友だちになろうとしただけなんだけどなぁ。今度はちゃんと友達になれるといいなぁ。
「(あれれ?自分の世界に入っちゃった?)」
「(そのまま忘れてくれるとありがたいが)」
「覚えてるからね!?一分も経ってないよ!?」
「「ちっ」」
「声!もう隠れてないから!はっきり聞こえてるから!ヒソヒソですらないっ」
ほんとどこから聞こえてくるんだよ!?
半分パニックになりつつある俺の袖がくいくいと引かれ、視線を向けるとあら不思議。
その人は手のひらサイズでふわふわの金色の髪の毛と金色の瞳をした美しい……
「妖精さんんんん!?」
「あれぇ?予想ついてなかったのかな?」
つくか!
なんだかポヤポヤとした笑顔で和みそうだが妖精といえばあれだ、妖精だ。
えーとそうじゃなくて、最近オヴェストで見つかった女王様とか何とかあれ?これは関係ないな?
「妻のトーカだ。見ての通り妖精なので他には黙っていてくれると嬉しい。精神年齢もまだまだ子でもなのでな。妖精種特有の物忘れも激しいし……一年ほど冒険者の仕事で家をあけていたら結婚したことも忘れ去られていて結構ショックだった」
「奥さん!?って、えー?」
忘れられてたの?まじで?妖精種のもの忘れパネェな。
「じゃあ、一年のあいだにあった重要な事とかも忘れちゃってるかもしれないんですねぇ」
「言わないでくれ、ものすごく不安になる」
「あはは、最近話題はあれですよね、オヴェストの女王様がエストに訪問した理由。確か妖精亜種の子が直談判したってやつ、なんでも親に忘れ去られちゃって、その対策が古代ではきちんとしていたからそれを今の妖精種に伝えてくれって。自分のような子をこれ以上増やさないで欲しいって涙無くしては語れない話ですよねぇ」
「ああ、ここでもその話題は来ているな、亜種は妖精種ほどぽやっていないからトラウマものだろう。実にかわいそうな話だ」
該当する子が誰かはわからないけど王都にいるらしいからもしかしたら見たことある子かもなぁ。
そんなことをいっていたらトーカさんが首を傾げた。
「こども?こどもー、こども。あっ」
「「え?」」
「子供泉に忘れてきちゃった☆トールちゃん元気にしてるかしら?」
「あ、王都で老師の養子になってる孤児の子とおんなじ名前……」
「………………とーるっぅぅぅぅ!!!」
足引きずっていたはずのロヴィーニさんがものすごい勢いで雨の中王都に向かって走っていった。
俺はただ呆然とその後姿を見ることしか出来なかったのである。
「あらあら?ロヴィったらあわてんぼうさんねぇ」
そういう問題では無いと思います!
本編感想欄にてせめて両親をというコメントをいただき、思いついたネタです。
不憫な彼を主役にできて作者的には大満足。しかし今度はトールくんのお父さんが不憫枠に……。
お父さん根性で王都に突撃します、勢い余っておうちにも突撃します。
昼間はトールくんお留守です。そうです、罠の餌食になりました(合掌)
帰ってきたトールくんがピクピクしている(しびれ薬効果)お父さんとごたーいめーん。誰?の一言にお父さん号泣、ドン引きされるというひどい出会いを果たしますよ。
後を追ってきたアレンとお母さんにあって記憶の親と一致、また一騒動起こしてお爺ちゃん家に同居することになります。
平和っていいですね!
※お父さんの種族はウィザードです。まんま見た目は人間ですね。