Pure Pop
「今日はたっぷりと泳いだか?」
「うん。今日は泳いだよ」
幼馴染達によっちゃんと付き合っている事を打ち明けてから久しぶりに皆でプールに行った。
皆一応競泳経験があるから、大抵は周回プールで泳いで飽きると皆で遊んで……をくり返す。
屋外のプールで2時間150円なら、偶に来るには丁度いい。
更にこのプールは、小さな子供用プールと競技用の25メートルプールしかないから、本当に暑い時間を過ぎるとそれほどの混雑ではなくなる。だから、プールに行く時は午後2時過ぎに行く事にしている。
ちなみに、このプール。皆で来るのは今年は初めてだけど、よっちゃんとはもう3回来ていたりする。
「ところで、夕ご飯どうする?」
「作るのは面倒だよな」
「今夜は皆が食べたいものを調達する?たまにはさ」
「マックで買うか」
「牛丼屋でお弁当でもいいかも」
皆が言いたい事を言っていたけれども、家にあるものでいい人は家で料理をして、買いたい人は買ってから帰る事になった。
結果的に、私とよっちゃんが冷蔵庫を物色する事になった。ありがちな結果だ。
冷蔵庫の中には……夏野菜と豆腐とうどんがある事は覚えている。ゴマだれのサラダうどんにして食べればいいかなとぼんやりと考える。
「ちいは、何か買うか?」
「うん、明日の朝はファミレスのモーニングプレートのようにしたいからホットケーキミックスとか牛乳とか買う位だから、先に家に帰りたいかも」
「おっ、それはいいな。だったらヨーグルトが欲しいな」
「それとフルーツの缶詰め」
「分かった。そこは任せて貰おうかな。卵は今朝買ったからいらないけど、ソーセージとか必要だね」
「じゃあ、俺はこいつと一緒に先に帰ってからスーパーに行く事にするから」
「ああ」
「後でね」
そうして、私達はプールの前で別れた。
「俺にも同じものを作ってくれるか?」
「いいわよ。ゴマだれのサラダうどんだけども……いい?」
「ああ。豆腐使うのか?」
「うん。疲れた時にはタンパク質。豆腐でも十分じゃない?」
「ふうん。さっきも行ったけど、一度家に帰ろう。それで冷蔵庫チェックしようぜ」
「そうだね、そうすることにしようかな」
「家に帰る前にコンビニに寄らないか?」
「コンビニ?いいけど」
私達は、ジョギングで立ち寄るコンビニに寄る事にした。
コンビニでは、Starry StarsのCMポップがこれでもかと張り巡らされていた。
少なくても2日前に来た時はこんなではなかったと思うのだけども。
それにこの夏は、初恋ショコラbitterも新商品で売っているのになあと思っていたら、『当店でCM撮影がありました』と1枚のポスターに書かれていた。
どうも、メンバーの誰かの撮影があったようだ。
「今日はPure Popでも買うか?」
「いいけど……最低でも5個よね?」
「分かったよ。あったらな」
そう言って、私達はコンビニに入る事にした。今日の私達が目当てにしているのはPure Popというジュレ。
「ところで、ジュレって何だよ?」
よく分かっていないよっちゃんが、私に聞いてくる。
「えっとね、柔らかいゼリーって言えばわかるかな?私もゼリーは苦手だけど、ジュレは食べれるの」
「そう言えば……そうだったな」
のんびりと会話をしながら私達は売り場に向かって歩く。
「それで、お目当てはあるのか?」
「うん、売っているみたいだけど、すぐには食べないんでしょう?」
「夜、飯の後に食べるつもりだけど。それがどうかしたのか?」
よっちゃんは、皆が揃って食べるつもりで買って帰ろうと言っている事が分かったから、私はデザート売場からレジにまっすぐに進む。
レジに着いた私は、カウンターで接客をする店員さんに向かってにっこりと微笑んでからこう言った。
「すみません、凍ったPure Popを6個下さい」
「へえ、こういう買い方もできるのか」
「うん。家に帰ってから、ゆっくりと解凍ができるでしょう」
「ふうん。そうすると……クーラーボックスがあると遠出するにも便利だな」
「そうなるね。海とかキャンプとかね」
私達は凍ったPure Popを受け取ってから自転車で自宅に戻る。
「海は行けるけど……キャンプは車の免許を取るまで待ってくれな」
「うん。早くて来年だね。凄く楽しみかも」
「そうだな」
そうして、私達は自宅に戻った。いつも置いている軒下に自転車を置く。
荷物を持っている私に代わってよっちゃんが自宅の鍵を開けてくれた。
「「ただいま」」
帰ってくるのは私達が最初なのは当然。あの三人は結局マックで食べて行く事に決めたらしい。
「ねえ、その頃には……皆に言える様になりたいなあ」
「ちい……お前……本気か?」
私が何気なく言った一言によっちゃんが驚いている。
「もちろん。私ね……少しだけね。欲張りになったみたいなの」
「そうか。珍しいな。普段欲しがらないお前が」
「うん、皆に認めて貰いたいの。よっちゃんの隣にいる私の事を」
私が冷蔵庫にコンビニで買ったPure Popをしまうと、よっちゃんに抱き締められた。
「よっちゃん……皆が」
「大丈夫。あいつらマックだろ。暫く帰って来ねえよ。少しだけ……な。それと……こんな時は名前で呼んで」
「義人」
「ん?来年はさ。2人だけでこの家で過ごしたいな」
「そうなると思うけど?私の進路は特に何かをしなくてはいけないってことはないし、よっちゃんも……そうでしょう。でも、あの3人はそうではないと思うから」
「確かに俺の進路は後3年先の話だものな」
よっちゃんは私が言いたい事が分かったようだ。
「皆で暮らしているのも今年位って事か?」
「うん、そのはずだと思うよ」
「それなら、今の生活を楽しむか。二人きりの時間はちょっと我慢しろと?」
「うん。そう言う事でお願いします」
は額を合わせて笑いあった。
結局、3人が帰って来たのは、私達がサラダうどんを食べ終わった6時を過ぎたころだった。
「二人きりは堪能できた?」
「変な事を気にしなくてもいいんだよ。バーカ」
皆にからかわれながら、私はプールの帰りに買ったPure Popを取り出した。
「これ、買えたの?」
「うん。だからここにあるの」
「マックの帰りに寄ったけどなかったのよ」
「ふうん、とりあえず食べようよ」
私達は食べたいPure Popを手に取った。よっちゃんはブルーハワイを食べる様だ。
私はレモンベースのものと手に持っている。
「これって、弾けるキャンディー入れなきゃダメか?」
「だめな人は、シロップのちょい足しでもいいみたいよ」
「でも、弾けるキャンディーの甘さはいいな」
「ジュレはそんなに甘くないね」
ジュレの方は、甘さはかなり控えめになっていて、フルーツと一緒に食べると甘く感じる。
「今回のポップって普通だよな?」
「でもさ、恋のイメージだよね」
「そうか?相手がキラキラしていて……眩しいって言うか」
私は上手く説明できなくて、言葉が続かなくなってしまった。
「ああ、はいはい」
「ずっとそう言っていろよ。ったく」
別に惚気ている訳じゃないのに、結果的に惚気に取られてしまった私たちでした。
「ちい……起きろよ」
「よっちゃん?」
「静科に……んっ……。おはよ」
皆が起きて来る時間よりかなり早い時間に私はよっちゃんに起こされた。普段はしてくれない、おは用のキスと一緒に。
「残りの1個。食べたくない?」
よっちゃんに誘われた言葉に釣られて私達はダイニングに向かった。
「はい、どうぞ」
残りの1個はアセロラだった。
「お前は食べないの?」
「うーん、よっちゃんが食べさせてくれるの」
そう言って、私はひな鳥のごとく口を開ける。
「なんだよそれ。ジュレの前に俺はこっちを頂こうかな」
スプーンを手にしていたはずのよっちゃんの顔が近付いてくる。
「……馬鹿……」
そんなよっちゃんに悪態をつきながらも彼を受け入れてしまう自分がいるのでした。
でもさ、よっちゃんって昔からこんなに独占欲強かったかしら?
よっちゃんの思いは今一つ伝わっておりません。残念(笑)