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本日のデザート  作者: トムトム
義人&倫子でスイーツもぐもぐ
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初恋ショコラ

In other Word…の義人&倫子。

本作ではカップリングにはなっておりません。完全ねつ造ルートです。

竹野内碧様企画『バカップル企画』のシークレットラヴァーズの二人と同じ設定です(今回はシークレットラヴァーズ本編前の時間枠になります)

高校入学する直前にはとこのよっちゃんに告白されて、その一年後に彼に返事をしてから恋人になった私達。彼に付き合う時に私が出した条件はただ一つだけだった。

―放課後デートはいいけど、休みの日は二人きりではデートはしない―

私には過去からまだ完全に抜けきれなくて、本当に親しい人にしか知られたくない。そんな私をずっと見ていた彼は、私の出した条件に文句をいうことなく、付き合ってくれる。

私達が付き合っている事を知っているのは、私の方は生徒会仲間がメインで、よっちゃんの方も本当に仲のいい友人にしか話していないと言う。二人合わせても十人いるかどうかだろう。

いつもなら、私の学校のほうが終わるのがおそいから話大河彼を待たせるのだけども、今日は珍しく私の方が早く学校が終わるになので。駅前のチェーンのドーナツ屋さんの中で待っている事になっている。

私の前には、ホットコーヒーとミニドーナツが一つ。このミニドーナツ、よっちゃんの好きなクリームドーナツなので、よっちゃんが来たら食べるだろうと思って残してあるのだ。


文化祭が終わってすぐの月曜日は実力テストの日。定期テストよりも難しくて未だになれる事が出来ない。二年生からは文系と理系にクラスが分かれているのに、数学と理科は理系と同じ問題というのは納得がいかない。どうしてなのかと担任に質問したら、センター試験だって共通だろ?と一言。

逆に理系は、社会が共通だから辛いと言っている。結果的にはお互い様のようだ。

私は、今日の実力テストの問題を見直す。点数がついて自分の手元に戻るのは、まだ先だろうけど明日からはテストの解説が授業のメインになるだろう。テストの問題用紙を明日の日課の順に並べる。

最初から数学・化学・英語・古文……。待っている間に問題の見直しが必要になる。

ドーナツの皿を脇に寄せて私は問題を解き始めた。


「悪い。遅くなった」

私と見つけたよっちゃんがやってくる。

「お帰り。食べるでしょ?」

「どうだった?実力テストは」

「聞かないでよ。出題が理系大学から出される数学なんて全問解答は流石に無理だって」

「そりゃ……そうだな。帰るか?」

私が残したドーナツを食べながらよっちゃんは私を促す。

「うん。化学を教えて?私、まだ習っていない所が出題されたから」

「いいぞ。答えは埋めたのか?」

「とりあえずって所かな。でも、明日はもう通常授業で解説があるから手は抜けないわ」

「お前らしいな。ほらっ、貸せよ」

私の鞄を持って、よっちゃんは店外に移動する。私も慌ててトレーを片づけた。

いつもなら、すぐに来る電車に乗るのだけど、今日は君塚が始発になる電車に乗り込む。発車時刻まで、よっちゃんに勉強で分からない所を聞く為だ。

途中で誰かに見られても問題はない。私達がはとこで純粋に仲がいいことは互いの学校でも認識されているから。

途中で、実力テスト明けで遊んでいたらしい、選択授業で一緒のクラスメートに会ったけど、本当に仲良しだねって言われて終わりだった。

私達の血のつながりが皆を鈍らせているのだとしたら怖い話だ。これはあり得ない話だけど、今年も同じクラスの今井君達だったら、皆は何と言うだろう?


「ちい……ちい?」

「ごめん、ちょっと考え事」

「休むか?待っている間はずっとやっていたんだろう?」

「うん」

私は開いていたノートを閉じて鞄に仕舞う。

「ほらっ、これでも食えよ」

そう言ってくれるのはチロルチョコ。小さなころから大好きなもののひとつ。

「よっちゃんは?」

「俺は、さっきドーナツ貰ったしな。それに明日からだろ?文化祭の精算処理」

「うん。暫くは遅くなりそうだけど。どこで待っている予定?」

「そうだな。マックだろうな。とりあえず」

「分かった。去年よりは同時進行でやっている分、去年よりは早く終わると思うの」

今日は、事務の人に請求書払いの支払いと売り上げが発生したクラスの入金を手間だろうけど、クラスごとの入金をお願いした。

「まあ、あれから倒れていないけど、無理すんなよ?」

「うん。分かっているよ。心配してくれてありがとう」

「その位しか……今の俺は出来ないからな」

そう言って、よっちゃんの大きな手が私の頭を撫でる。

「えへへ……」

「ん?もっとか?この位はお安いものさ」

私がもっとと言う前に、よっちゃんが私の頭を撫でる。私が一番落ち着く特効薬だという事を知っているのも、よっちゃんだけだと思っている。


「これ以上は、家に着いてからな」

「ぶう」

もっと構って欲しい私は、その不満を露わにする。

「むくれているのもかわいいけど、そろそろ発車時刻な」

発車時刻と言われて私は諦めた。下手に噂になりたくない私の為によっちゃんが言ってくれたのだから我慢する。

最寄駅に着くまでは、互いの学校であった事を話をした。

「……でね、まなの苺を太一が食べて大喧嘩になったの」

「うーん、それはそういう事なのか?」

「どうなのだろう?私はそれでもいいと思って入るんだけどね」

「お前の部活は皆、仲がいいよな」

「うん。それだけに誰かとデキてるなんて言われる事もね」

「いいのか?お前はそれで」

よっちゃんは眉間に皺を寄せる。私はよっちゃんだけなのにな。

「よっちゃんとのこの関係が隠せるなら利用するわ。私も……もういい子なだけじゃないの」

「そうだな。ごめん、ちょっと勘違いした。お前は俺しか見ていないのは、誰よりも分かっていたはずなのにな」

「仕方ないよ。ずっと一緒じゃないんだもの。それは誰よりも私達が知っているはずなのにね」

鞄の上に置いた手によっちゃんの手が重なる。

「ごめん、俺……もっと強くなる」

そう言ってからよっちゃんは最寄駅に着くまで手を重ねたままでいた。


家に帰る前に、いつもの様にコンビニに立ち寄る。今井君経由で佐藤さんに英語のノートが渡されるのだ。

元三組はクラスの半分がきっちりと文系と理系に分かれてしまった。私が今いる四組には、元四組と三組の大体半分と他のクラスからの人というクラス編成。人によっては英語か数学で同じクラスだったりするから知らない人はほとんどいない状態なのが現状だ。

それなりに親しくなったと思うけど、変な噂のせいで元五組から八組の人とは余り話をしていない。去年同じクラスだった博子ちゃんも加瀬君も三組だ。

部活のメンバーに関しては皆四組にいる。その為、クラスが変わっても人間関係は変わっていない。

一人だけ理系のまなが昼休みに私達のクラスにお弁当と持ってやってくる位だ。理系の方は、砂糖さんとまなが同じ八組で、まなと理絵が生物で一緒だと聞いている。

「コピー終わったか?」

「もう少し。何かいいものでもあったの?」

「ああ。先に買っておいたから一緒に食べようぜ」

「うん。もうちょっと待っていてね」

「いいよ。終わったら呼べよ」

「うん」

私の横でよっちゃんは楽しそうに私を眺めていた。


「今日は家で飯を食うから、その前にこれを食べようぜ」

よっちゃんが私の前に出したのは、さっき立ち寄ったコンビニで買ったものだ。ビニール袋の中を開けると、袋の中には……なかなか買えない初恋ショコラが一つ入っていた。

「よっちゃん……これって……」

「ああ。一つしかなかったけどな。食べるだろう?」

「うん、ちょっと待っていて」

私は冷凍庫からブルーベリーとラズベリーを少し取り出す。それから冷蔵庫から生クリームを取り出して、小さなボールに少しだけ入れる。

「よっちゃん、これを泡立てて」

「ああ。堅くするのか?」

「そんなに硬くしなくていいよ。ちょっと庭に行ってくるね」

「分かった。やっておくよ」

私は庭の一角から苺と民との若葉を摘んでくる。戻った私はデザートプレートを取り出して、初恋ショコラを半分に取り分ける。周りにベリーを盛り合わせて、チョコレートソースで縁取りをしてから、生クリームを添える場所を作る。

デザートスプーンを取り出してから、リビングでテレビを見ているよっちゃんを呼んだ。

「生クリームできた?」

「ああ、今持っていく」

ボールを持って来てくれたよっちゃんからそれを受け取ってから、生クリームを添えて、その上にミントをのせて、なんちゃってデザートプレートに仕上がった。

「よっちゃんは何を飲む?」

「インスタントでいいからコーヒーがいい」

「分かった。でもペーパードリップがあるからちょっと待っていて。ケーキのお皿をダイニングに移して貰ってもいい?」

コンロにかけた焼かんが沸騰する前に、ペーパードリップの準備とよっちゃんのマグカップの用意をする。ゆっくりとコーヒーを淹れてよっちゃんはブラックに、私はカフェオレにした。

「お待たせ。食べようか?」

私達のお家カフェの始まりだ。


「もう少し安ければいいのにね」

「どうして?」

「毎日食べられるでしょう?」

私の呟きによっちゃんはなぜ?と聞く。女子高生のお小遣いでは、コンビニスイーツはかなりお高いのだ。

「まあな。本来のターゲットは会社員のお姉さんだろ?だったら、この値段は安いんじゃないのか?」

うーん……そう言われると否定が出来なくなる。私はむくれてカフェオレの入っているマグカップの縁を指でなぞる。

「それにケーキはたまに食べるから旨いんだぜ」

「そっか。また売っていたら……今度はキャラメルソースにしようか」

「それもいいな。ちい、これってさ、駅前の喫茶店のガト―ショコラの真似をしたのか?」

「うん。よっちゃんはビターチョコレートが苦手でしょう?私だってその位忘れていないよ」

よっちゃんはビターチョコが食べられない。よっちゃんが一人で初恋ショコラを食べきるのは絶対に難しいと思う。

「ありがとな。なあ……お前は……どっちなんだ?」

「えっ?何が?」

「だからさ……。ケーキとぼくのキス……どっちがすき?」

私を見つめているその顔がどんどん赤く染まっていく。

そんなよっちゃんに釣られて私も赤くなってしまう。

「そんなこと……急に聞かないでよ」

私も、そんな事を急に聞かれても……なんて答えたらいいのか困ってしまう。

「ごめん。でも……本当はどうなんだよ」

本音……かあ。うーん、そうだねぇ……。

「ごめん。アイドルとのキスは……考えた事はなかったよ。だからケーキかな」

ようやく私が答えると、よっちゃんはホッとしているようだ。

「じゃあ、俺とだったら?」

今度はよっちゃんが相手だったらどうなのかと聞かれた。今度の質問の方がもっと答えるのが難しい。だって……よっちゃんとは、まだキスをした事がないのだから。

「私……よっちゃんとはキスした事ないよ」

「だよな。だったら、お前はどっちが欲しい?ケーキと俺のキス……」

「どっちも欲しい。私は欲張りだから、ケーキもよっちゃんのキスも」

私は即答で答えると、よっちゃんは笑いだした。

「ちい……早すぎ。でも俺もどっちも欲しいから……こうする」

ケーキを一口食べたよっちゃんに顎をクイッと持ち上げられる。

その先に何があるかは、私は十分すぎるほど分かったからそっと目を閉じた。


「……で、どうだった?」

「ケーキを食べた後のよっちゃんのキスが一番好きよ」

「そうか、またそのうちな?」

「……馬鹿」

私達は真っ赤になりながら残りのケーキを食べるのでした。


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