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自然な形

作者: 枝豆

童話じゃないです!


スイマセン。

自然破壊が進んでいるとある田舎。


森が減っていくこの町に、ちょっと変わっている不思議な家族がいました。


一見、仲の良い普通の家族に見えますが、他の人たちと一つだけ変わっているとこがあります。


「母さん、今日は風が強いって。洗濯物は止したほうがいいよ、だってさ。」


「太陽も照らないみたい。風が強くて、雨雲が流れてくるだろう、だってさ。」


「えぇ、分かったわ。ありがとうね。」



この家族は、自然を感じ、会話ができる家族でした。


父さんと母さんは、海や川などの「水」が関係するもの。


姉さんと兄さんは、太陽、雲や風など、「天候」に関係するもの。


そして私は、木や森、花や土など「大地」に関するもの。



私達が自分達と違うことを知った人たちは、私達をまるで化け物でも見るような目で見て、私


達の周りから離れていきました。


だから、私には一人も人間の友達がいません。


私は、人間が好きなのに。


私の友達は、優しい感情を持った木々たち。


その中でも、一番の仲良しは家の前に生えている、大きな大きなガジュマルの木。


「おはよう、ガジュ。」


『おはよう、ムツ。今日は早く起きれたんだの。』


「馬鹿にしないでよね。毎日毎日、朝寝坊するわけじゃないもの。」


こういう話をしながら、ガジュの太い幹に足を掛け、私だけの特等席へと登っていきます。


辿り着いたのは、天辺にほど近い空が見える太い枝。


私はここが大好きなんです。ガジュとも話ができるし、空も見える。


ゆっくりと、時間が流れる。


この時間は、きっと止まらないと思っていました。無くならないと思っていました。


でも、このガジュとの時間は奪われました。


好きな、人間達によって。



ある日、私が朝寝坊してしまった日。


いつものように、ガジュに会いに行きました。


ガジュに登り、ガジュと話がしたかったからです。


でも、いつもそこにいるはずのガジュはいなくて、残っていたのは大きな切り株だけ。


ガジュは、人間が家を建てるために切り倒されました。


嬉しそうにはしゃぐ、一組の家族が歩いています。私と同い年くらいの男の子もいます。


その光景を見ていた私に、父さんも母さんも、兄さんも姉さんも、目を合わせてくれませんで  

した。


ふと、母さんの顔を見ると泣いた跡が残っていました。


ガジュの切り株に座り、遠くなった空を見上げていました。


どのくらいそうしていたでしょう。


真っ青だった空が、赤に染まっていました。


いつの間にか、私の隣には一人の男の子が立っていました。


毛嫌いされてる私達の住んでいるこの場所に近づく人間は、今まで一人もいませんでした。


男の子の顔をじっと見ると、さっき笑顔で歩いていた家族の中に居た男の子でした。


その男の子の顔を見ると、何故だか分かりませんが涙が出てきました。


すると男の子は、慌てて言いました。


「父ちゃんが言ってたぞ!そのガジュマルの木は、死んでないって。だから、そんな顔するな よ!」


それを聞いたとき、私は驚いて聞き返しました。


「ガジュは死んでないの。」


『あぁ、死んでないぞ。まさか、ムツがここまでワシのために悲しんでくれるとは思わなかっ たがな。』


「ガジュ。よかった、生きてたんだね。」


『まぁ、またお前を乗せれるのは何十年後になるけどの。』


「お前もしかして、木とか森とかと喋れるっていうムツって言う人か?」


私は、すぐには答えられませんでした。ここで「うん」っと言ってしまえば、今までの人たち


みたいに私を怖がるだろう。でも、嘘をつくのも気が引ける。


私が何も言わない事を、「うん」と同じ意味だと思ったらしい、その男の子は、いきなり私の


手を掴み、ブンブンと上下に振り始めました。そして、興奮したような顔で言いました。


「俺、一度会ってみたかったんだよ。俺と、友達になってくれ。」


私は、驚きました。


「友達になってくれ」


なんて今まで言われた事なんて無かったからです。


その男の子は、まだ私が何も言ってないのに


「そうか、なってくれるか!俺の名前は、中町 志津久って言うんだ。よろしくな。」


志津久君は、笑っています。私も、つられて笑ってしまいました。


私と志津久君はその日から、友達になりました。


その日を境に志津久君のおかげで、人間の友達も増えていきました。


その様子を、たくさんの自然たちが温かい目で見守っていたそうです。




読んでいただきありがとうございます。


久しぶりの投稿です。


感想をいただけると、調子に乗ります!

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[一言] 執筆お疲れ様です。読後の感想と少々疑問に思ってしまった部分がございましたので以下に記載させて頂きました。。あくまで個人的な意見ですので、一意見として受け止めて頂ければと思います。 また、お時…
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