甘い香りの思い出
あなたは覚えていますか?
初めて行ったあの喫茶店。
二人でアレコレと迷いながら、メニューのケーキを選びましたね。
ふとあなたに振り向いたとき、綺麗な笑顔がそこにはありました。
ただ見惚れていたわたしは、幸せを一つ貰ったんです。
ジャスミンの香りであなたを思い出します。
二人して違うケーキを選び。
だけど、テーブルに置かれているティーカップの中には、同じジャスミン茶が淹れられていましたね。
わたしは覚えていますよ。
二人で行ったあの遊園地。
幼いころを思い出してはしゃぐあなたが、本当に可愛らしかった。
ふとあなたが振り向いたとき、眩しい笑顔がそこにはありました。
目を逸らせずにいたわたしは、幸せをまた貰ったんです。
ジャスミンの香りであなたを思い出します。
近くの自動販売機に寄ったときに。
「奢ろうか?」と言うと笑ってごまかして、ジャスミン茶を二本買ってくれましたね。
あなたとの思い出の中に、必ずジャスミン茶がありました。
あなたは知っていたんですね。そして、わたしは知らなかった。
わたしがジャスミン茶を好きだったこと。あなたは嫌いだったこと。
ジャスミンの香りであなたを思い出します。
違う人と飲むコーヒーを見ては、いつも思います。
今、温かい家族と一緒に居るあなたは、もうジャスミン茶を飲んではくれないのでしょうか?
今でもわたしは一人になると、ジャスミン茶を飲むときがあります。
どうやらその甘い香りと同じように、あなたとの思い出も消えそうにありません。