たまの休日 午後
「あー食った食った」
『この店の海鮮丼なかなかいける』
「中トロ脂のりすぎで赤身の方がよかったかも…」
『もう歳だな…』
「黙れ同い年め」
『まぁそれはさて置き…さーて、じゃあやるかー』
「え…なななにを」
『掃除だよ掃除 めっちゃ汚いじゃん』
「そうでも…ないだろ…」
『まず床に物が置いてあるのが問題なんだよ それが汚れる原因だ』
「むぅ…その基準でいけば確かに汚いな」
『水周りは綺麗なのになぁ』
「毎日料理するからな」
『感謝しております』
「くるしゅうない 遠慮するでないぞ」
『ところでさっき 何を「やる」と勘違いしたんだ?』
「そういうの引っ張らないでください!」
『じゃあまずこの本棚から』
ガサガサ
「おい」ガッ
『む! 何をする!セクハラか?!』
「ねーよ 床の話しておいてなんでまず本棚からなんだよ」
『掃除は上から順にやって行くものだろ』
「む 確かに…」
『ところでこの本棚 妙に本が前に出てる気がしますが後ろに何かあるんでしょうか?』
「その本に触れると死ぬぞ」
『どこの黒の教科書だ』
「ネタが分かりづらいわ…とにかく、そこは触れるの禁止」
『じゃあそのいかがわしい黒の教科書はちゃんと後で整理しときなさい』
「…なんもいえねえ」
フキフキ
「ふぅ…」
『ま、こんなもんだね』
「あいあい ありがとうよ」
『いえいえ、いつものお礼です』ペコリ
「…じゃあ次はお前の部屋だな」
『整理整頓は完璧なので進入は禁止します』
「本当かよ…」
『汚すのはこの部屋だけと決めているのだ』
「その心意気何とかなりませんか?」
『だから、ちゃんとこうして掃除を手伝っておるだろう』
「殆どやってくれたし、何も言えないわ」
『ゴミ箱と本棚の処理は性的な関係でお任せするけども』
「ああああ…それを言うな…」
『ナンパ物は捨てたほうがいいと思うよ』
「お前やっぱ見た事あるんだろ!」
『カマカケに引っかかるなんて愚かな人間だな』
「愚かな人間で申し訳ない…」
『夕飯、作るよ?』
「え??? ええええ?!?!?!?!?!」
『…なに驚いてんだ』
「いやそんな台詞を今まで…いや…まてよ」
ガチャ
『あ…』
「冷蔵庫の中…何もなかったな…」
『あ、あれー残念… じゃあ外食にでも行こうぜ!』
「これは確実に知ってたな」
『やる気の片鱗が見えたって事で勘弁しろよ』
「冷蔵庫が空だと知ってて言うのは…やる気がない証拠だと思います」
『後になればどうとでも言えるわい』
「それさっきのお前のことだよな?」
『なに食う? こちら側の要求としてはとんこつラーメンがいいんだけど』
「その店に足並みそろえて向かっている時点で分かっているんだけど」
『え?嫌?』
「いや、ラーメンはとんこつでしょう」
『んだんだ』
「しかし…たまにはお洒落な店に行こうとか思わないのかね…」
『そう言うのは恋人と記念日っぽい日に行くのがいいんだよ』
「今まで行ったことは?」
『あんたとフランス料理 お互いの就職祝い』
「それだけじゃん…恋人のこの字もないな」
『じゃあ今日記念日にしちゃうかー!』
「ラーメン行こうか」
『照れちゃって』
「照れない奴がいたらそいつは頭おかしい奴だろうな」
『可愛いやつめ』
「…お前も充分可愛いよ」
『…』
「おいなんか突っ込めよ 変な空気になったろうが」
『バーカ!』
ボコ
「痛っ」
『年頃の女性の心を弄んだ罰だ ローキックで済んで感謝しろ!』
「別に弄ぶつもりで言った訳じゃないけどな」ボソ
『え?何か言った?』
「ラーメン早く食いたいなーって言った…」
『文字数合ってないぞ!』
『ただいまーっと』
「はいはい俺の部屋俺の部屋 ただいま」
『さってとー』
ババババ
「脱ぐなーーーー」
『じゃあひとっぷろ浴びてくるわ』
「思い切りの良さは長所になるんだろうか…」
『人前では脱がないんだからいいじゃない』
「当たり前すぎて日常会話で省略するレベルの告白だな」
「ふー 最近寒くなってきたからシャワーだとさびしいなー」
『おーおかえりー』
「あら、まだ居た」
『今日泊まるわ 疲れたし』
「自分の部屋まで十数歩なのになに言ってんのこの人…」
『綺麗な部屋で眠りたいんだー!!』
「お前の部屋も綺麗なんだろうが」
『そりゃあ綺麗だけど もうここで寝るって決めた』
ガバッ
「やれやれだぜ…」
『夜のスタンド攻撃はご遠慮願います』
「予想もつかないお願いでビビります」
『一応言っとかないとね!』
「逆に意識して辛いわ」
『この変態はこうだから困る』
「正常ですよね?」