回想A 誰にも言えない
『いやーー 外食なんて一週間ぶりだったねええ』
「たった一週間じゃん… でもずいぶんと豪勢なとこだったな」
『内定祝いの記念日だ! お互いの!』
「高かったんじゃねえの? ちょっとは出すぜ?」
『今まで作ってもらった食費に比べればクソ!』
「それ肯定していいのか分からない」
『たまには高いの食べて勉強するのも良いのさ!』
「俺は勉強したけど お前はうまいうまいいってただけじゃん」
『アハ体験』
「なんか違いますよ」
『テーブルマナーは完璧だったでしょ?』
「それは納得」
『超!勉強したから!』
「食事製作の方も 超 勉 強 したらいかがでしょう?」
『マイペースでやっていきます』
「牛歩過ぎる…」
『しっかし…内定先一緒だとはねー』
「いや、お前狙ってたろ…」
『なぜ就職してからの昼飯を狙ってたのわかった?』
「あーうん もういいです…」
『よく内定を取った 褒めてつかわす』
「ははー 有難きお言葉」
『なんじゃい、その棒読みな ありがとう は』
「滅相もない」
『んー… じゃあ特別に褒美を取らせよう』
「…それはありがたい して何を?」
『目をつぶりたまえ』
「む… なんだよ びっくりプレゼント方式か…ゲンコツじゃないだろうな…」グッ
『いいからいいから』
「なんだかこわいな…」
『そのまま気をつけ!』
「手を出さずにもらえるプレゼントってなん…ムグッ…」
『…』
「…」
『…』
「…」
『…』
バッ
『プレゼントは譲渡した! 感謝せよ!』
「…流石にびっくりした」
『記念日作っちゃったねー』
「それ引っ張るの止めて…」
『どうだ うれしかろう』
「や、やわらかかった…」
『うわ…変態だ…』
「不意打ちの接吻は充分変態だと思いますが?」
『はははは 照れるなよー』
「これで照れないやつがいたら、ほぼマネキンだろーが」
『ほら! テント張ってないで、さっさと帰るぞー』
「張ってない! セクハラだ!」
『今日帰ってナニするの?』
「セクハラな上に名誉毀損だ…」
『今日は泊まるからナニもさせないぜ』
「あーやだやだ生殺し」
『うわ…本当にするつもりだったんだ…』
「勢いで言った台詞ってやっぱり怖いものですね」
「あ」
『なに? もう1回してほしいの?』
「何でだよ」
『あっそう、じゃあして欲しくないんだ』
「わあしはたかいですのれー」
『この野郎…憶えてんなー』
「まあそれはいいとして… 俺からもプレゼントがあるんだけど」
『これから風呂に入ろうとするタイミングでプレゼント発言か…これは通報しないとな』
「なんもしねーよ」
ガサッ
『なにそれ』
「空けてみ」
ガサガサ
『…ドライヤー!』
「家にないから、毎回わざわざもって来るよりここにあったほうが…良いだろ?」
『ここにおいたらプレゼントじゃないじゃん』
「ここで毎回使うのはお前」
『すごい微妙な境界線だけどありがとう』
「いえいえ」
『じゃあ私からも…目をつぶろうか』
「もうだまされんぞ」
『そーれ』
ギュウウウウ
「あわわさおわおをあわ」
『ハグで興奮して…この変態めが』
「あなたのプレゼントってすごい危険物多いですよね」
『ちょっと毒があったほうがうまいって言うじゃん』
「腐りかけの間違いじゃないの?」
『まだ腐るような年頃じゃない!』
「まったくだな…」
『…ドライヤー ありがと…』
「あいあい」